第6話 これが音の正体です?

案内の矢印さんと緊急クエストに半ば無理矢理危険地帯へ行かされております。ううう。行きたくなーい。でもクエストだからクリアすれば何か貰えるはずだし、それにお兄ちゃんとお姉ちゃんが用意してくれたクエストだから大丈夫なはずだし、大丈夫だし……ううう。


ポスッ


う?何かにぶつかった?あぁ、また考え事して歩いてましたね私。ふわふわ考え事しながら歩くと電柱とか自動販売機とかその他もろもろにぶつかるから最近は気を付けてたんだけど。あれ?でも痛くない。それより


もふもふ


もふもふ?


……もふもふ!?もふもふしてるっ。何か、もふもふしてるものにぶつかりましたよ。きゃー、何これすごいもふもふだよ。気持ちいい~。


もふもふもふもふもふもふもふもふ


「お主、何しておるのだ?」


う?


もふもふもふもふもふもふもふもふ


「いつまで我を撫でまわしておるのだ?」


「撫でまわしてないよ?もふもふしてるんだよ?」


もふもふもふもふもふもふもふもふ


「ではそのもふもふをやめるのだ。」

「やだ。」

「やめるのだ。」

「……はぁ、しょうがないなー。」


もふもふして気分が上昇したので、一旦ストップしてあげましょう。一旦ですからね。一時的にですからねっ!


う?

そういえば、もふもふが喋ってる?


ちょっと嫌な予感がしますね。

チラ~ッと上を見上げてみるのですよ。

わぁ、大きくて狂暴なお顔が目の前に。


ふぅ。

平常心平常心。

何も見てない。もふもふ可愛い。


ピコピコン

『緊急クエストクリア:音のする方へ行ってみよう♪

クリア報酬:金貨1枚銀貨1枚銅貨1枚銭貨1枚』


緊急クエストがクリアされてしまったーっ。つまりもふもふが音の正体ということですかね。ははは。

……今すぐこの場を離脱したいっ。

でも……案内の矢印さんがここを指してるの。町を指してくれないの。ここを離脱できないの。へループっ!

ピコン

「ヘルプ機能:頑張りなさい」

へループ!?


「そなたは何者だ?」

もふもふがまた喋ったっ。しかも、とてもイケメンな良い声ですよ。もふもふからのギャップですよ。可愛さが増し増しです。

「えっと、柊詩乃ですよ?」

「そうか、我はシルバーウルフである。」

「シルバーウルフさん?」

「いや、シルバーウルフは我の種族名である。」

「じゃあシルバーウルフさんのお名前は?」

「我に名はない。」

「えー、じゃあ私が付けてあげましょう。何がいいかなー。」

「そなた、我に名をくれるのか。」

「うん。じゃー、もふもふで」

「却下」

「えー?なんで?可愛いよ?」

「我は別に可愛さを求めてはいないぞ」

「えー。じゃあ、うーん。……氷河」

「ヒョーガか?」

「うん。ヒョウガだよ。私の国で一番大きくて綺麗で壮大で強い銀色の大きな大きな氷のことだよ。シルバーウルフさんはもふもふだけど、ちょっと冷たいから。」

「冷たい……か。」

「うんヒヤヒヤ~。気持ちいいね。大好き。」

「大好き……か。そんなことを我に言うのはそなたぐらいだ。面白い。」

「ん?」

ヒョウガが私と距離をとったよ。え、もしかして嫌だった?いま私たち距離縮めてなかった?私の自意識過剰な勘違いだった?


「我、魔の森の王、シルバーウルフ、ヒョウガ。柊詩乃と契約を結ぶモノなり。我の魂が朽ち果てるその時まで、我は柊詩乃と共に生き、導き、守護することをここに契る。」

ヒョウガが何かかっこいい!

眩しい!


というか、

「熱っついっ!」





熱かったよ~うえ~ん冷やして~っ。


もふもふひやひやもふもふひやひや


ふぅ、落ち着いたっと。

何だったんでしょうかね。


「我と詩乃の契約は無事に結ばれたのだ。」


勝手に何か結ばれてる。

訪問販売と言う名の押し売りですか。まさか異世界に来てまで押し売りされるとは…。ご老人をターゲットにした悪質な訪問販売など滅びてしまえっ。異世界でもクリーングオフ制度は適応されますか?


ピコン

『ヘルプ機能:クリーングオフ制度

一定の期間内であれば、消費者が業者と締結した契約を一方的解決できるという制度です。残念ながらこちらの世界では認められていません。でも、クリーングオフ制度を知っていたのは偉いよ!詩乃可愛い!!』


クリーングオフ制度はないのですかそうですか。くっ。


「我と契約するのは嫌であったか?」


わぁっ。ヒョウガがしゅんってしてる。耳がぺたんってなってる。可愛い!ヒョウガ可愛い!全然いいよ。契約の1つや2つぐらいなら全然するよ!ヒョウガ可愛い!だからもふらせてっ!!


「ヒョウガとの契約はオールオッケーなのですよ。これからよろしくなのです。」

「うむ。よろしくである。」


異世界1日目、もふもふゲットなのです。






「ちなみにさっきの大きな音はなんだったの?」

「あぁ、久し振りに出てきたらこの辺りを縄張りにしていたゴブリンどもに囲まれてな。鬱陶しいかったので凍らせて潰したのだ。ほら、まだ足元に氷の欠片が落ちているだろ?これがゴブリンの成れの果てであるぞ。」

「見えない聞こえない何もない無心無心無心無心無心………」

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