第4話これで異世界生活が始まります?
「えっと、じゃあ詩乃にあげる能力とかを決めようかな。何か欲しい能力とかある?」
シンくんが体ごと振り向いて私に問いかけてくる。後ろにくっついてたから、今は前から抱きつく感じになってる!
ぬ。シンくんも長身だった。まさか、シンくんまでちっちゃい私の敵だったなんて。普通に首が痛いよ。む。なでさせろ。
「はいはい。」
おー、しゃがんでくれた。なでなでなでなで。癒されるのです。っと、能力のことを決めないとでしたね。
うーん。難しい。そういう面倒そうなのはお兄ちゃんとお姉ちゃんにパスします。私はなでなでに忙しいのです。
「二人にパスです。いい感じにお願いするのです。」
「了解了解。さて、まずはどんな世界なのか詳しい情報が必要だな。異世界といっても俺たちの世界と同じなのか、違うのか。」
ん?そこからですか?
「そうね。たとえば人間のいない世界なら詩乃も人間をやめる必要があるし、食事という概念のない世界なら詩乃も食べずに生きていけるようにならないといけないわ。」
えっなにその過酷世界。夢も希望もないんですけど。シンくーん異世界ってそんな世界なんですか?異世界転移、今からキャンセルしたいんですけど。
「大丈夫だよ詩乃。人間は存在するし、ちゃんと食事もするよ。詩乃のいた世界と違うのは、細かくいうと一杯あるんだけど、まずは言語、戦争、あとは人間以外の種族もいること、それと、あぁ、魔法が使えるのも違うかな?」
まほう?
魔法?
魔法!!
なんて素晴らしい世界なんでしょうか!夢と希望の塊じゃないですか!今、私は次の世界が一気に楽しみになりましたよ!異世界転移のキャンセルをキャンセルでお願いします。
「それなら、言語を翻訳できるような能力はあるか?あと、最低限身を守れるようにしないといけない。戦闘系の能力が必要だな。」
魔法ですな!
「でも詩乃に戦闘は無理よ。何もないところでも普通にこけるのよ。戦闘、特に魔法だなんて敵と戦う前に自滅しちゃうわ。お姉ちゃんは絶対に反対です!」
えっ………魔法、ダメなの?
やだやだやだやだ!私も魔法使いたい!!ううううううううううう
「(詩乃が唸ってる。なんだこれ可愛すぎるだろ。)なら、防御系や回復系の魔法ならいいんじゃないか?怪我をしても治したりできればいいだろ?」
「それなら、聖魔法がおすすめだよ。」
聖魔法?
「治癒や浄化ができるんだ。闇に堕ちない限り危険はないし、自分の治癒もできるから詩乃にはあってるかもね。あとは結界も張れるよ。防御力もカバーできるんじゃないかな。ただ、聖魔法は基礎属性じゃないから、基礎属性は持っておいた方が良いと思うよ。一番危険じゃないのは光だけど、聖と被る部分があるから水とかはどうかな?」
「そうだな・・・(ウォータージェットとか危険な技術もあるんだが、詩乃は知らないだろうな。馬鹿だから)いいんじゃないか?」
「そうねぇ・・・(人間って水分抜いちゃえば簡単に殺せちゃうのだけど、詩乃にはわからないでしょうね。馬鹿だから)いいと思うわよ」
わーい。魔法だー!やったー!
「(詩乃、がんばれ)えっと、それじゃあ詩乃の能力は言語翻訳、水魔法適性、聖魔法適性だけでいいのかな?いろいろ便利なスキルは特別にプレゼントしておくけど・・・少なすぎないかな?」
「そうねぇ。その世界は詩乃が頑張った分だけ成長できるのかしら。生まれ持ったもので生きていくなら、今のままだと少し厳しいわね」
「大丈夫だよ。頑張ればスキルが増えていくし、体力や魔力も増えるからね。ただ、属性は増えないんだ。属性は精霊王に与えられし不変なる加護だからね。」
つまり、このままだと私は一生、火とか出せないの………?
ファイヤーっとかできないの?
しょぼーん
(((可愛いっ!)))
「詩乃は特別にあとから足してあげるよ。僕にまかせて。精霊王に話をつけておくから。」
シンくーんっ!好きだー!結婚しよーっ!そして私を養ってーっ!!
「詩乃。貴女、自立はどこへいったの?」
「しかも結婚理由が………残念だぞ。詩乃。」
なんとでも言うのです。寄生万歳!シンくん愛してる~っ!!
「はいはい。じゃあそろそろ異世界へと転移させるよー。」
綺麗にスルーされました。まぁ、いいでしょう。異世界に行けるならば!楽しみです!!
「転移。世界リノア、トリスティア王国、メグリードの森。」
シンくんの手から光が溢れ出すと、私の体もキラキラと輝きだした。
「わぁ!」
魔法です!キラキラです!
「そろそろか。」
「そうねぇ。」
お兄ちゃんとお姉ちゃんと改めて向かい合います。あれ、もしかして、よく考えたらここでさよならなんだった…………。
「……………ひっく……あれ?…………あぁ……やだなぁ…………。嫌だよぉ……。お兄ちゃんと…お姉ちゃんと……まだ一緒に…いたいよぉ………ひっく……」
異世界にいきたい。魔法も使いたい。でも、でもでも、ひとりぼっちはやだぁ。皆と一緒がいいのっ……………
「まったくしょうがないなぁ、詩乃は。」
「そうねぇ。ふふふ。可愛い私たちの妹は甘えん坊さんね。ふふふ。」
私を優しく抱き締めてくれる二人。この優しさを感じられるのも、これで最後になるんだなぁ……。
「お兄ちゃんっ、お姉ちゃんっ……」
「一緒には行けないけど、詩乃が俺たちの妹であることは変わらない。」
「ずっと好きよ。詩乃。」
「…………うん。……私もっ、私もずっと好きっ。」
私の兄姉は最強無敵な最高の兄姉なのですっ。
「詩乃。」
「シンくん。」
「ごめんね。僕が君の人生を奪ってしまった。ごめんね。」
「ううん。シンくん。私ね。異世界は本当に楽しみなんだよ。すごい確率であたったんだし、私、運がいいなーって今でも思ってるよ。ただちょっと寂しかっただけだから。大丈夫。ひとり暮らしがちょっと早まって、世界がちょっと違うだけだよ。柊詩乃!異世界で頑張ります。えへへ。」
「ありがとう。」
泣いて気持ちが落ち着いたかな。よしっ、行きますか!
「それじゃあ詩乃。元気でな。困ったらお兄ちゃん、お姉ちゃん助けてって言うんだぞ。」
「はーい。」
「大丈夫かしら。本当に心配だわ。何かあったらすぐに助けてって言うのよ。お願いよ?」
「はーい。」
「準備はできたかな。じゃあさっきの場所へ詩乃を転移させるよ。最後に。詩乃が向こうの世界でも幸せに生きられますように。創造者シンの加護を与えておくね。これからの異世界生活。詩乃はひとりじゃない。僕たちが詩乃を見守るよ。だから詩乃。
異世界を楽しんでおいで。」
「……っはい!」
「じゃあね、詩乃。」
「頑張れよ。詩乃。」
「いってらっしゃい。詩乃。」
「いってきます。」
お兄ちゃん、お姉ちゃん、シンくんの姿を目に焼き付けて、私は目をつぶった。
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