03.新人の考察

 バシンッ!


 ぎゃあ!


 バシッ!


 ぎゃっ!



 ミカルと一緒にずっと女に鞭を打ってるけどよ、疲れた……。


 後ろにゃナアト尋問官が、俺らが持ってるより凶悪な鞭をしならしてるし……。


 女も打つとこがないくらいミミズ腫れまみれになったし、もういいだろ。



 パシーンッ!!



 一際強烈な音と、



「いぎゃああああっっ!!」



 悲鳴が同時に響いた。



 恐る恐る後ろを見ると、ナアト尋問官が2メートルくらいある一本の鞭をピシパシ鳴らしていた。



「さぼるな。打て。次に勝手にやめたら……。」



 マジかよ!

 焦って、必死で先が六つに分かれているバラ鞭を振るう。

 手に豆ができるぞぜってぇ。


 って!ミカル!何やめてんだよ!!



「ナアト様。彼女は子供を貴族に売ったのですよね?養子として迎い入れたのであれば、罪にはならないと思うのですが……。」


「……限りなくグレーだが。ただ買った先の貴族がきちんと育てていなければ罪になる。売った側も、買った側も、な。彼女の場合、売った以外の子供がいないとも限らない。」



 なんで普通に喋ってんだよ!


 パシーンッ!!



「いっ!!!?」


「ちゃんと見ていてやるから、励めよ。」



 俺ばっかかよ!!



「なぜここまで彼女を責めるので?」


「いや、本来はここまでする必要はない。が、イヴァンに頼まれてな……。断り切れずに受けた。」


「ではこの後、彼女は解放するのですか?」


「いや、ここで殺す。死体もここで処分だ。」


「なぜです?彼女はれっきとした我が国の民ですよ?」


「……。」






 ん?どした?なんで会話が途切れたんだ……?



 ピシーンッ!!



「いだあっ!」



 俺かよ!



「あ……。ナアト様、間違えてしまいました。」



 お前かよ!!



「少々コツがいるからな。貸してみろ。」



 ヒュンッ!

 パシーン!!



「いぎゃああああっっ!!」



 狙い通りか知らないけど、木馬にまたがった女の背中に斜めに、赤く線が出来ている。

 つーか抉れてない?



「鞭は使いこなせば人を殺すことも容易にできる。……そろそろか?」



 キィーと扉を開けて入ってきたのは、メルケム尋問官だった。

 いつもムスッとしてて、話しにくいやつ。



「おい。悲鳴が足んねえぞ。もっと喚かせろ。」


「どうして悲鳴が必要なんです?」


「こっちで娼館しょうかんの主人と、そいつから賄賂を受け取った役人を尋問してんだよ。殺すわけにもいかねぇから、脅しが欲しいんだ。」


「……塩でも塗りますか。クイエ!下から10キロの塩袋を持ってこい!」



 クイエってのは俺のこと、って人遣い荒すぎるだろ!

 背が低いってからかったことまだ怒ってんのかな……。





 ミカルが下手くそな鞭さばきを披露するなか、保管庫から持ってきた塩袋をドサっと床に置いた。



「女を床に降ろすぞ。」



 天井に固定された、滑車にかけたままになっていた縄を三人で掴む。


 足の重りは外されていて、左の脛が裂けて血が出ている。

 ……ナアト尋問官が初めに打った跡か?


 降ろした女の股を見ると、かろうじて女性器からはみ出した肉のビラはわかったが、無理やり谷の形に整形され、出血しているようにしか見えないくらい真っ赤になっていた。



「足をしっかり持っておけ!釣り上げたばかりの魚より暴れるぞ。」



 ナアト尋問官は黒い革手袋を嵌め、塩を両手で盛るだけ盛ると、女の股に乱暴にかけた。



「ひぃいいいっ!ひあっあああああっっ!!」



 うっせえっ!

 細く高い声が響いて耳がおかしくなりそうだ!

 つーか、すっげえ力で暴れるだけど、何これ、どうすんの。

 ナアト尋問官は、更に塩をつかんで




 そのまま股に押し当てた。


 そしてそのまま股を擦るように、上下に手の平を動かした。



 いぎゃああああアアアっっ!!



 女の悲鳴が、しばらくは階下まで響き続けた。


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