「私の見ているセカイは彼と少しだけずれている」
いつもと変わらないある日、僕はついに決心して自分で
お店で花を選んだ。
「温かい心」、「感謝」。
そのつもりで、少し高い、それでもとびきりきれいに見
えそうなのを選んだんだ。
彼女が夢を話してくれたのと引き換えに、僕も僕の抱え
ている秘密を話すことを決心して・・・。
だから、今日は友人にも服装を見てもらっていない。
ありのままの僕を彼女はどう思うのだろうか。
―――――
いつもと変わらなかったある日のこと。
彼からその花を差し出されたとき、私の抱えている問題
を見透かされているようで拒絶してしまった。
「もしかしたら失恋をした。」
お互いにそう思ったかもしれない。
Bluerose、不可能を意味する花。
私の夢を話したその次に会うときに受け取れなかった花。
彼が自分で選んだというその花の色を見て、私の夢が否
定された気がして悲しくなった。
「でも、よく考えて。彼がそんなことをするのか。」
頭の中で何かが囁く。
そう、落ち着いたら彼がいつも寄る花屋に行って、本当
はどんな意味なのか確かめないと・・・。
―――――
僕は何故拒絶されたのか最初はわからなかった。
服装に問題があったのか、態度か、いつもと違うことか、
それとも、僕の差し出した花なのか。
あるいは、僕そのものなのか。
だから、僕は自分の選んだ花が本当に正しいものなのか
花屋に行って確かめるしかなかった。
―――――
翌日、花屋に行くと彼がいた。
しかし、構わず店員さんに聞く。
「この花の意味を教えてください。」
店員さんは少し考えて
「グリーンローズ。私が言ってもいいのかわかりません
が、強いて言えば『永遠の愛』です。」
顔が赤くなる。体が火照る。
しかし、反対に彼が青ざめるのに私は気づいてしまった。
―――――
僕は自分が大変なことをしてしまったことに気がついて
しまった。
ピンク色だと思って選んだ花がまさかの緑色だっただな
んて。
僕はそのつもりもなく彼女にプロポーズしてしまったこ
とになるし、それに、まず、間違いなく僕の抱えている
問題も彼女にばれてしまった。
僕は古い言い方で言うと赤緑色弱なんだ。
信号機は真ん中以外は左も右も灰色に光ってるように見
えるし、夕焼けのすばらしさは恐らく一生わからない。
それらと引き換えに夜目がちょっとだけきく。
それが僕の視覚が抱えている問題――或いは特徴なんだ。
どうせわかってしまうことなら、せめて自分から説明を
したかったんだけれども。
でも、僕は覚悟を決めて。
―――――
店を出てからしばらくは気まずい沈黙の時が過ぎた。
お互いにいつかは話さなければならないことが、こんな
形で現れるなんて。
ときどき、こう思う。
見たものを見たとおりに受け取ることができたらと。
でも、一人ではわからなかった色が、二人の重なり合うシカク
の中でならわかる。
私の錯覚した“青い”バラの色が。
青いバラの新しい花言葉は「奇跡」「神の祝福」そして
「夢かなう」。
私たち二人が普通の人とセンスが違うことはもしかした
ら「神の祝福」なのかもしれない。
ただ、少しだけ残念なことは、彼があの時渡してくれた
花を「夢かなう」とポジティブにそう見ることができた
ら、もう少しだけ良かったのに。
この失恋は2人で次のステップへと進むための痛み。
2人隣り合うシカクの確認。
恋の終わり、そして愛の始まり。
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