溶けたこおり。
お姉ちゃんはあの日からずっと、夏祭りの日は泣いていた。
あの事故はどこかの屋台のガスコンロが爆発したことによって起きたんだと最近知った。
私はその時まだ小学生の時でで、危ないこともお姉ちゃんが痛いかもしれないと言うこともわかった。
でも馬鹿だったから、ちゃんとした状況はつかめていなくて、何をしたらいいのかわからなくて、全てを夏樹くん___お姉ちゃんの彼氏に託した。
15歳というのはまだ子供で、死んでしまうには早すぎた。
それは今でも思う。
彼には今後の夢も希望も未来があったのに、私のせいで全てを壊してしまったと思った。
数え切れないくらい後悔したし、泣いてしまう時もあった。
だけど、きっと夏樹くんはみんなに後悔して悲しんでないて欲しくてあんなことをしてしまったわけではないんだと今では思う。
それは自分の後悔を誤魔化すための自分勝手な解釈かもしれない。
だけど、私はそう思っている。
ある日からお姉ちゃんは泣かなくなった。
理由を聞けば苦笑いで、
「彼に感謝したいの、後悔しないなんてことやっぱりないんだけど、彼のおかげで今ある命はこんなに冷たく凍えたままじゃ可哀想でしょ」
と言った。
私はなぜそんな風に思えるようになったのかというと
「夏に溶かしてもらった」
という。
それからというもの毎年お墓詣りでは感謝を口にするようになった。
聞く話ではお姉ちゃんは夏樹くんに会ったとか会ってないとか。
幽霊なんて存在するのかわからないが、お姉ちゃんは本当にあったんだと思う。
きっとそこでたくさん謝って、最後はごめんじゃなくてありがとうって言ってよ
なんて台詞みたいなことを言ったんじゃないかな。
お姉ちゃんが言うに、夏樹くんはちょっと格好つけだったらしいから。
だけど可愛いところもあって、優しくて、たまに男らしくて、そんなところが好きだったと言っていた。
背は高くて、顔も男っぽいのにちょっと気が弱くて、手を繋ぐとかはお姉ちゃんから掴んでいって、驚いた夏樹くんが真っ赤になって顔を覆っていたなんて可愛い話だと思う。
実際、私は今付き合っている人はいるけど、本当に好きだけど、お姉ちゃんまたいな恋愛はできないと思う。
きっと高校が離れたら別れてしまうかもしれない。
そういえば、今は元気だけどお墓の前でたまーに泣いているのは私の心の中だけに秘めておくことにしよう。
今年もまた、暑い夏がやってくる。
そして私はかき氷を一口食べた。
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