語源百景 歌舞伎篇 ②「十八番」を「おはこ」と読む理由
歌舞伎から生まれた言葉を紹介する今回のシリーズ。
第一回目は、主に役者から発生した表現を紹介しました。
第二回目となる今回は、それ以外の場所に目を向けてみたいと思います。
今回のサブタイにもなった「
そもそも「
選ばれたのは、歴代の
歴史も古く、初代
七代目
後に七代目
「
①
⑨
⑰
初代のみならず、代々の
「
一説によると、
また「
「
「
これもまた歌舞伎を語源にする言葉で、元々は楽屋でお茶くみをする役者を指していました。彼等には馬鹿馬鹿しい余興を見せる習わしがあり、転じて下らない行為を「茶番」と呼ぶようになったそうです。
さて物語を茶番呼ばわりされないためには、どんでん返しを用意する必要があります。
この「どんでん返し」も、元々は歌舞伎の舞台装置を指す言葉でした。
一般に「どんでん返し」と言えば、物語を大きく
歌舞伎の「どんでん返し」もまた、舞台上を一変させる仕掛けです。具体的には場面転換に使われる手法で、江戸時代から観客を沸かせてきました。
簡単に説明すると、舞台には「L」の形をした背景が置かれています。「L」はわざと倒れるように作られており、底の部分にも背景が描かれています。
時が来ると、「L」を後ろに倒し、底の部分を観客席と向き合わせます。当然、今まで舞台上にあった背景は消え、観客の前には全く別の場面が現れることになります。
「L」が倒れる際、劇場には太鼓の音が鳴り渡ります。嘘のような話ですが、「どんでん返し」の「どんでん」とは、この音のことを指しているそうです。
一方で、「L」が倒れる時の大きな音を意味していると言う説もあり、真相は判然としません。どちらにせよ、「どんでん」が音から来ていることに間違いはないようです。
終わりを意味する「幕切れ」も、歌舞伎を語源にする言葉です。
歌舞伎の公演では、一つの場面が終わるごとに幕を閉じます。
本来、「幕切れ」とはこの瞬間を指す言葉で、「場面の終わり」であることから「最後」と言う意味で使われるようになったそうです。
ちなみに「幕の内弁当」の「幕の内」にも、歌舞伎が語源と言う説があります。
芝居の世界では一つの場面が終わり、幕が閉じている間を「
「幕の内」に食べる「弁当」は、いつしか「幕の内弁当」と呼ばれるようになりました。現在でも歌舞伎座では、
こと歌舞伎と言うと、厳格なイメージがあります。しかし実際のところは、ポップコーン片手に見る映画とそう遠くはないのかも知れません。
二回に渡ってお届けした今回のシリーズ、お楽しみ頂けたでしょうか。
とかく語源には諸説あることが多く、作者も毎度泣かされています。神話、中国、歌舞伎と続いた語源シリーズ、次回は何に苦しめられることやら……。
参考資料:面白いほどよくわかる歌舞伎
宗方翔著 (株)日本文芸社刊
ことばの道草
岩波書店辞典編集部編 (株)岩波書店刊
暮らしのことば 語源辞典
山口佳紀編 講談社刊
文化デジタルライブラリー
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/
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