父として、勇者として・2

ひとしきり笑った勇者は、もう1特技・千里眼を行使して、自分の子供たちを眺める。


無邪気で楽しげに岩山を跳ぶカーリン。それを、あわてて追うように跳ぶフィク。どちらも、まったく疲れてはいないようだ。


(2人とも、本当に立派になったなぁ・・・勇者認定の試練なんて、やらなくても勇者だと思えるほど強くなった。でも・・・)


勇者としての強さとは、決して戦闘のためのチカラだけではない。いついかなる時でも闇に立ち向かう勇ましさや、弱き者を助けるやさしさを併せ持ってこそ、真の勇者である。


しかし、強大なチカラある者は、往々にしてこれに気付きにくい。


オトロスは、そのことを知っていた。だから2人には、勇者として厳しく戦闘技術を仕込みつつ、父として優しく愛情を込めて育ててきた。


だが、それは勇者として、心構えを示すためであったのか。それとも親として、当たり前のことを子供に示すためであったのか。

自分は、子供たちを愛することができていたのか・・・。


「ちゃんと、伝わっているのかな・・・。」


オトロスの口から不意に漏れ出た言葉は、子供たちと、きちんと接することができていたかを、今更のように気にする1人の父親としてのものだった。

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