父として、勇者として・1

「ふふふ・・・頑張っているじゃないか。」


勇者オトロスはリジマッハ頂上から、すべてを見通す《特技・千里眼》を用いて自分の子供たちを見守っていた。


「こんなに軽々とリジマッハを登ってくるとは、流石は俺の子供たち。この様子では、せっかくの聖獣ベヒモスも簡単に倒されてしまうだろうなぁ」


勇者の背後には、頭には猛々しい一本角、脚には触れただけで斬れそうな爪、そして全身光り輝く剛毛で覆われた・・・聖獣ベヒモスが鎮座していた。


『勇者よ。』

ベヒモスが口を開らき、鋭い牙が覗いた。


「なんだい?」

勇者が応え、生涯一日たりともハミガキを欠かさない白い歯を見せた。


『貴様の子供らは、そんなに強いのか?』

「もちろんさ。俺が育てたのだから、君なんかあっという間に倒されてしまうよ。」

『我はチカラの制限を受けているが、聖獣ベヒモスだ。おいそれと、やられるつもりは無いぞ?』

「ひょっとしたら、本気の君にも勝てるかもしれない。」

『はっはっは、流石にそれは言い過ぎだぞ、勇者よ。』

「そうか、流石に言い過ぎか!」


『ハッハッハ・・・!』

「はっはっは・・・!」


聖獣ベヒモス。

光の神によって生み出され、闇と戦う使命を持つ。そして勇者を見定め、共に戦うのだ。

そんなベヒモスの親友は、文字通りの戦友である勇者オトロスであった。

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