3人のカムイ

空木真

3人のカムイ


昔々、

まだアイヌの里に守るカムイがいなかった時のお話。


その頃の夜はまだ暗く、

闇夜は人を害する獣や妖怪の世界でした。


人々はそういう者達から身を守る為、

集まって里を作りましたが、

そこにさえも悪意は入り込んで来ていたのです。


人々は里を守る為に戦い続け、

食べる事も夜眠る事も出来ず、

次第に疲れ果てていきました。



その様子をごらんになっていたカムイ達も、

人々の様子に心を痛めていたのです。


「このままでは、彼らが余りに不憫ふびんだ。」


「獣からは身を守れるが、

闇夜にまぎれる妖怪には、太刀打たちうちできないだろう。」


カムイ達は相談した結果、

人々を守るカムイを選ぶ事にしました。


呼びかけると、

名乗りを上げたのは3人のカムイ


クマのカムイ、オコジョのカムイ、シマフクロウのカムイです。


誰が人々を守るカムイにするかを決める為、

3人のカムイは7日間、

自分のやり方で人々を守り、

8日目に人間の声を聞いて決める事にしました。



クマのカムイは毛皮を持つ大きなけものに姿を変え、

人間の世界にりました。


そして、

身にまとっていた衣装を肉や毛皮として、

人間に食べ物と衣服、家を与えたのです。



オコジョのカムイは小さく足の速いけものに姿を変え、

人間の世界にりました。


そして、

毎日野山をめぐり、

その勇気で危機ききおちいった人々を

何度も救ったのです。



シマフクロウのカムイは目が光り首の回る鳥に姿を変え、

人間の世界にりました。


ところが、

シマフクロウのカムイはそのまま里の入口の柱にまり、

動かなくなってしまったのです。


夜になっても、朝になっても。

晴れていても、吹雪ふぶきになっても。


柱にまったまま身動き一つする事無く、

ジッと目を光らせていただけだったのです。



やがて8日目の朝が来て、

人間達の声を聞く日がやってきました。


人間の声を聞く為に、

ヤナギのカムイが人間の世界にり、

里の側でヤナギの木に姿を変えます。


そこで、

すっかり元気になった人々の声に、

耳をかたむけました。


1人の男が言います。


「クマのカムイは、ありがたい。

いつも我らに肉と毛皮を与えて下さる。


おかげで食べ物や服に困らなくなった。

お腹いっぱいで暖かい服をきているから、

やまいにかからなくなったんだ。」


1人の青年が言いました。


「オコジョのカムイは、ありがたい。

いつも危険な事から助けて下さる。


おかげでケガをしなくなった。

ケガをしなければ元気に動けるから、

多くの食べ物を探すことができる。」


この話を聞いていたヤナギのカムイは、

人々を守るカムイになるのは、

クマのカムイかオコジョのカムイだと考えたのです。


ヤナギのカムイが帰ろうとした時でした。


赤子を抱いた1人の女性が、こう言いました。


「シマフクロウのカムイは、ありがたい。

いつも里に悪意を持つ者が来ないよう、

守って下さる。


夜もずっと起きていて下さるから、

我らは安心して夜に眠れる。


夜にぐっすり眠るから、

疲れが取れていつも元気でいられる。」


これを聞いたヤナギのカムイは、

すぐにカムイの世界へと戻ったのです。


そして、

待っていた3人のカムイにこう言いました。


「里の人々は皆、

あなた方にとても感謝しておりました。


ですから、こうしてはどうでしょう。


クマのカムイは、

これからも肉と毛皮を与え、

人々をゆたかに暮らしていける様に

力を貸す。


オコジョのカムイは、

様々な場所を見て回り、

その勇気で人々を助ける。


そしてシマフクロウのカムイは、

これからも里の入口にいて、

里に悪意ある者が入らないように見張みはり、

人々を安心して眠れるようにする。


3人のそれぞれの力で協力し、

これからも人々を守り続けるというのは。」


3人のカムイはヤナギのカムイのいう事に、


「それは素晴らしい考えだ!」


と笑って賛成さんせいしたのです。


それからは、

3人のカムイ達は協力して人々を守って

下さるようになりました。


クマのカムイは、

食べ物と衣服を与えてくれるようになり。


オコジョのカムイは、

野をけて人々を危機から救い。


シマフクロウのカムイは、

里の入口で昼も夜も悪意ある者から

里に暮らす人々を守るようになったのです。


こうして里は平和になり、

人々は楽しく元気に暮らせるように

なったのでした。

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3人のカムイ 空木真 @utugimakoto

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