♪27 祭
さて、そんな
ネットニュースのトップを飾り、
そして若いホラーファンの間でステラ・クィーンの過去作を一気に読破したり、映画作品を立て続けに視聴し、それを証拠画像と共にSpreadDERで報告する『ステラ・クィーン祭』なるものが流行したのである。
それはどんな順でも――発表順でもABCあるいはアイウエオ順でもランダムでも構わないようで、何なら1つ2つ抜けてしまっても問題はないらしいのだが、どうやら
「――で、アキもその『祭』に参加中、というわけか。珍しいな、お前が流行りに乗っかるなんて」
章灯が何だか感心したような声を上げると、
まだあるな。
章灯はそう思った。それもそうである。ただ単にホラー映画を観まくっているというだけならば謝罪が必要になるわけなどないのだ。
やはり彼が――先程アキのスマホに表示された『伝田でんのすけ』が何らかの鍵を握っているということなのだろうか。
「それで……その……最近ずっと……」
「あぁ、部屋に籠ってる理由はわかった。ずっと映画見てたんだろ?」
「はい。でも……」
ついに来たか。謝罪の核心に触れる時が。
「1人で見ていた訳ではなくて……」
「――ん?」
「あの、一緒に見ていた、というか……。いえ、そういう意味の『一緒』ではないんですけど……。それで……」
「ん? え? ええ?」
話の腰を折ってはならない。それはわかっていた。しかし、章灯は思わず口を滑らせてしまったのだ。
「ちょっと待って」と。
「は、はい……」
「ごめん、ちょっと。え? 一緒にって何だ? ていうか、誰と? 咲さん……とか?」
咲の名前を出したのは完全に願望だった。もしも晶が誰かと共に行動すると考えた時、選択肢なんて自分達(それは
「いえ、その……伝田さん、なんですが……」
「――なっ……!」
やっぱりお前か――――!
思わず腰を浮かせた章灯に晶も釣られて立ち上がる。
「あのっ、章灯さん」
「あいつやっぱりアキのこと狙って……っ!」
「そうじゃなくて!」
「アキもアキだ! どうして……!」
俺がいるのに。
お前には、俺が。
「こっ、これ! 見てください!」
彼女にしてはかなりの素早さで差し出されたのはスマートフォンである。それは既にスリープ状態になっており、画面は真っ暗だ。彼の気を引くべく提示したものの、肝心要の部分を表示していないことに気付き、晶は気まずそうに「ちょっと待っててください」と言ってから章灯の目の前で操作を始めた。
浮気の証拠の定番であるスマートフォンを提示されたことで出鼻をくじかれた章灯は、「見てください」と言われたものの、本当に見ていて良いものなんだろうかと何となく視線を外した。
「はい! 準備出来ました!」
真っ赤な顔で勢い良く文字通り『眼前』に突きつけられ、章灯は思わず背中をのけ反らせた。
「いやアキ……さすがにこれは近すぎるから……」
伝田:【THE PHANTOM TOWN】★★★☆☆
完璧なストーリーをあえてラストでぶち壊すクィーンの豪胆さ。
晶 :【THE PHANTOM TOWN】★★★★☆
同意。さらにマシュー・ギースの演技が高評価。
伝田:【PREMIUM】★☆☆☆☆
まさかのSF展開。これは酷評せざるを得ない。
晶 :【PREMIUM】★★☆☆☆
概ね同意。しかしクィーンの遊び心と捉えれば。
伝田:【OUTSIDE】★★★★★
まごう方なきクィーンの最高傑作。
晶 :【OUTSIDE】★★★★☆
ホラーの手本ともいうべき良作。
ジーナ・フィッツジェラルドの癖のある演技が気になる。
伝田:【THE THEATER】★★★★★
完成されつくしたホラーアイコン『ジュリエッタ』!
晶 :【THE THEATER】★★★★★
同意。ジュリエッタこそホラー界のパイオニア。
「え……? 何これ」
そこに表示されていたのは、いつにも増して素っ気ない文面である。自分とのやりとりでさえ、ややもすると冷たいともとれるような文章を書く晶だが、それ以上のつっけんどんさにほんの少し安堵した。
「一緒の映画を別々に見て、感想を送ってたんです」
「何でまた……」
だったらいっそ一緒に見れば良いだろ、と口を滑らせそうになり、章灯は慌てて口をつぐんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます