銀色景色


 真っ黒に染めあがっていた空が白み始めてきた帰り道。あやの兄、憂をおんぶししている春輝はるきと彩はのんびり歩いていた。

 憂との一件も彩が割って入ってくれたおかげで一応は解決したはずだ。

「俺も体が痛いのに何でコイツをおぶってるんだ」

 春輝はブツブツ文句をたらす。

「運んでくれてありがとうございます」

 彩は横に並んで軽く頭を下げた。


 つい先ほどまで春輝と憂は小さな公園で殴りあいの喧嘩をしていた。彩が間に入らなければまだ終わってはいなかっただろう。

 殴り殴られ春輝も憂も体は傷だらけだ。


「お兄ちゃんのことありがとうございます」

「いや、こっちこそお兄ちゃんを殴って悪かったよ」

「これでお兄ちゃんが変わってくれれば…」

「変わらなかったら俺がもう一回頭を殴ってやる」

 春輝は腕を前に出してガッツポーズをとる。

 彩は春輝を見ると明るく笑った。

「俺、やっぱり好きだよ。彩ちゃんのこと」

 春輝は笑った顔から真剣な顔で彩を見る。

 少しの間、辺りは沈黙に包まれる。彩は一歩前に出て後ろを振り返った。

「ごめんなさい」

 彩は振り返るとさっきよりも満面の笑みで春輝に返事する。

 ちょうど朝日が上ってきて彩の後ろが明るく輝きだす。銀色だった景色が気づけば雪も止んでいて空が青く染めあがっている。

「言うと思ったよ」

 春輝も返事が分かっていたのかクスっと笑って言う。

「絶対振り向かせてやる」

 彩よりもさらに一歩前を歩いて後ろの彩を笑った。彩もその後を笑って追いかける。

「絶対無理ですよ~」

 

 銀色に染まっていた景色が朝日とともに消えいつもの景色に戻っていく。

 少しだけ積もっていた雪が太陽の光に照らされゆっくりと溶け始めている。

 暖かな光を受けながら二人は笑って帰り道を歩いた。


 彼女が返事した瞬間、春輝の目には光に照らされ銀だった景色が金に変わるのを感じた。

 彼女が隣で笑っていてくれるだけで俺の毎日が輝く。俺はやっぱり彼女が好きだと分かった。

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