ゲート~最強で最弱な君と僕~


 先輩に誘われるまま僕たちは歩いた。

 綺麗な中庭からどれだけ歩いただろうか、森の中を先輩の背中を見ながら歩いた。少しすると森を抜け、辺り一面に何もない。芝生だけで後は何も、障害物が無い、広い場所に出た。


「ここなら気にせず出来るね」

 先輩は僕たちの方を振り返った。


「ここも学園の敷地内ですか?」

 僕は辺りを見渡すが建物も何もない。後ろに森の壁、前には緑色の地面が広がるだけ。


「そうだよ。ここは滅多に人も来ないし、戦うにはちょうどいい。」

 ―負けても恥をかかないよ、先輩はニヤリと笑い、サラを見る。


「それは、先輩の面子が保たれるからですか?」

 サラも挑発する。

 先輩は肩をすくめる。


「それじゃあ、やろうか。非公式のランキングバトルを」


 先輩とサラは戦闘体勢に入った。二人とも静かに距離を保ち睨み合う。

 僕は二人から距離をとり観戦する。

 何で見にきたんだろ…頭の中で疑問に思った。僕の来る意味って…?


「それではいきます!」

 サラは腰に付けていた剣を抜き先輩に向ける。


「お手柔らかに」

 澄まし顔で望む先輩。

 先輩の武器は無いようで手には何も持っていない。


「スゥー、ハッ!」

 サラは剣で丸を描き、目を瞑った。丸を書いた空中には火の玉が出来上がり、サラの周りを囲うようにたくさん集まる。

 サラの掛け声と共に火の玉たちは先輩に向かって行った。


「炎使いか、相性が悪いね」

 先輩は少し驚いたように目を開くが、向かって来る火の玉には物怖じせず、飛んでくる瞬間に手を広げ横に振った。

 するとどこからともなく突風が吹き荒れ、火の玉が一瞬で消え去った。


「風で火を消した」

 

「火の対策は色々考えてるからね。こんな遊びじゃ僕は倒せない、っよ!」

 先輩は腕を上げ、サラに向かって勢いよく振り下ろした。


「サラ!危ない!」

 僕は思わず声を出した。


「ッッッ!!」

 サラは横にステップを踏み避ける。

 サラの元居た場所は縦にえぐり削られていた。


風でここまで地面が削れるなんて、あんなのが身体に当たったらひとたまりもない。僕は心配してサラを見る。


「サラ…?」

 微かに笑っているように見えた。


「これで驚かれちゃ、僕を倒すのは無理だよ」

 

「私は、貴方に勝ってこの学園で一位になる!」

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る