透明人間
夜は寒いぐらい冷たい風が吹くのに昼は太陽の陽射しが強くまだ暑い。夜と昼での気温差で体調を崩す人も他のクラスでは居て欠席者がこの時期は多い。
そんな昼下がり、俺は昼食を食べてお腹が一杯になり、急激な眠気に襲われていた。頑張って寝ないように机に肘をつきながらカクンッと落ちそうな頭を支えている。だが、満腹なうえにちょっと暑いくらいの陽射し、そして授業をする先生の子守唄、この三つの条件で睡魔に勝てるほど俺は強くない。始まって10分ぐらいには降参していた。
ここは何処だろうと目を覚ます。見渡すといつも通りの教室だ。だが誰もいない。俺は時計を見ると時刻はもう放課後だった。外からは運動部の声が聞こえており、遠くからは吹奏楽部がトランペットを吹いている。
やってしまったと後悔するも終わったことは仕方ないと開き直り帰る準備をする。
ふと、窓の鏡を見ると陸上部がトラックを走っていたり、高跳びの練習をしている人たちが見える。頑張るなぁと感心してると違和感に気づいた。
窓は透けているから外の景色が見えるのは当たり前だ。たが窓も鏡と一緒で少しは反射するこの場合は俺がいる教室が写るはずだ。確かに教室の机やカーテンが反射されている。けれど俺が写らない。すぐ近くに居る俺の顔が見えないし反射していない。俺は不思議に思い自分の携帯を開きカメラのアプリを押して内カメラにするけれど写るのは俺の後ろの景色だけが写っている。俺は一言呟いた
「俺、透明人間になっちゃった」
透明人間だと分かった俺は真っ先に更衣室に向かった。思春期男子には当たり前だ、少年漫画でも絶対に向かう王道ルートを俺は走っている。
更衣室の中で女子が来るのを待った。少しすると扉がガチャっと開き女子たちがたくさん入ってきた。俺は内心ウヒョー!と喜びな、こいつ、エロい下着着けてやがる。こいつは地味だなぁと感想を言いながら凝視する。
眼福でした。
この体になって分かったことがある。更衣室で女子を触ろうとしても無理だった。体ごとすり抜けてしまう。幽霊気分だった。そして戻り方が分からない。どうやったら解けるのか、元に戻れるのか分からない。そして俺を誰も認識してくれない。
見えない、理解されない、認識しない。俺は以上な悲しみに襲われ怖かった。どうすることも出来なく喜んだことを後悔していた。
ふと、目を閉じて眠る前を思い出す。次に目を開けると目の前はいつもの教室が広がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます