第3話
車が止まると、俺は再び抱き抱えられてどこかへと連れていかれた。
足音からしてコンクリートの閉鎖された空間。ホコリ臭くてケホケホとむせていると、カチャカチャと鍵を開ける音がした。
──ギギィッ
錆びた鉄のような何かが開く音がして俺はその中に投げ入れられる。
「んふぅぅっ…………」
そのままバタンと締められる音がして、俺は完全に閉じ込められたのだろう。
「マコちゃぁ〜ん? 怖い? 怖い? 今日はそこでじっとしててね〜?」
そんな声が聞こえてきた。
両手両足の拘束、口を猿轡で抑えられており目も布によって何も見えなくなっている状態。
今が何時かも、ここがどこなのかも分からない俺はしばらく大人しくじっと横たわっていた。
そうしてどのくらいの時間が経っただろうか。何も聞こえず、暗闇の中でただ孤独感が増していくばかり。
少しでも気を紛らわそうと、足を地面にコツンコツンとぶつけて音を立てる。
「ふぅ〜……ふぅ〜……」
暇だ。暇すぎて死にそうだ。
自分で音を立てる以外に何の刺激もないこの空間で、俺はこのまま何時間過ごさなければならないのだろうか。
初めて誘拐されて、恐怖心よりも孤独感が強い。誰か早く助けに来てくれ。
「んんぅっ……んっ!」
──ガンッ
何時間が経過しただろう。狭い空間で壁を蹴ったり、必死に縄を解こうとしてみるも何も意味は無い。
ずっと無音で何の刺激もない空間の中、ただひたすら何も起きない時間が過ぎていく。
「んっ……ふっ…………」
トイレにも行きたくなってきた。でも狭くて暗い空間から動くことも出来ない。ただひたすら我慢する。
「んんんん!! んんんんっっ!!」
寂しい、怖い、トイレに行きたい、暇。何の刺激もない時間が永遠と続くこの場所で、ついに尿意は限界に達していた。
こんなところで漏らして良いのだろうか。服が濡れる、横になっているから肌も汚れる。でも、もう限界だ。
「んっ…………っ……」
赤ちゃんの時以来、初めて御漏らしをした。
温かい液体が太ももからお尻に流れていき、拘束されている腕にもかかってきた。
──ぴちゃっ
それから逃れようと狭い空間で動くと、ぴちゃりと飛び跳ねて更に服に付着する。
この年で漏らしてしまったという恥ずかしさに、もう何もかものプライドが砕け散った。その場で力無く横たわり。これ以上もがいていても無駄だと知って目を瞑る。
この永遠に近い地獄で、ただひたすら温かい液体が冷えていくのを感じながら眠るしかないのだ。
助けも、あれから何時間経ったか分からないが来る気配がない。寂しくて怖い。せめて、目隠しさえ取ってくれれば何か暇つぶしはできただろう。でも何も暇つぶしができない。
──コツン、コツン
ただひたすら地面を叩いて、その音だけを聞きながら眠りについた。
早く誰か、助けて。
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