第21話

緑のエーサク〔ご当地ヒーロー〕編



第4話〔食べ歩き食い倒れヒーロー??〕



草村は「マル秘」と書かれたプリントを取り出し、みんなに配った。


「とりあえず、そのプリントに登場人物と配役を書いてある。

ん?どうした上地?暗い顔をして。」


他のメンバーはプリントが手元に来るなり、すぐさまめくって自分の役を確認していたが、友生だけはタメ息をついてプリントに手をつけなかった。


「ど~せ、また男の子の役なんでしょ。いつもそんだもん…」


ひねくれたように友生が呟くと、


「なに言ってる、ちゃんとよく見ろ、前に「聖霊」がやりたかったとか言ってたから、今回は妖精にしてやったぞ。

しかもヒーローと行動を共にする相棒だ。」


すると友生は驚いたように、


「え?!本当に?やった~!」


その姿を見ていた憂樹は、


「いいな~友生、妖精かぁ~。さて、あたしは何色かな?」


すると草村が、


「は?神成、なに言ってる、色ってなんだ?」


「ほら、だいたいヒーローって5色じゃん。たぶん風見君がレッドだから、あたしはピンクかホワイトかなぁ。」


「はぁ~、それは戦隊物だろ。今回はヒーロー物だから、ヒーローは1人なんだ。とは言ってものちのちヒーローが増えるかもしれないがな。」


「俺が主役でいいのか?」


風見が照れくさそうに草村に聞いた。


「ああ、今回は風見にぜひやって欲しい。というより、お前しか男は居ないだろ。」


「氷河がいるじゃんかよ。 」


「氷河にはやって欲しい役があるからな。それに運命にはさからえないんだ。」


すると突然、憂樹が笑いだし、


「アハハ、草村さんでもミスするんだ。ほら、このプリント何にも書いてな~い。」


そう言うと、友生の顔の前で、プリントをペラペラさせた。


「あれ、あたしのも書いてないよ。」


香もプリントを清美に見せて言った。もちろん、全員のプリントにも「マル秘」の文字しか書いていなかった。


風見は、草村を睨み付け、


「お前、まさか、まだほとんど何も決まってないんじゃないか?」


「何言ってる、ちゃんと〔マル秘〕って書いてるだろ。〔マル秘〕って事は秘密ってことだ。お前がヒーローって事だけは確定してるんだが、あとは現地に行ってみないとイメージが湧かないというか、だいたいストーリーは頭の中にあるから、撮影のたびに言うよ。

まあ、香港方式ってやつだ。」


すると友生が何かを思い出したように、


「あ!それ聞いたことある。映画をパクられないように、台本を作らず監督が撮影の度に台詞を教えるんでしょ。」


「お前の台本は、誰もパクらねえよ。」


風見が草村に、あきれ顔で言った。


「まあ、とりあえず、決まっていることだけは言うから、そのプリントに書いてくれ。

まず、「TTT」は風見な。あと上地は、さっき言った通り、風見と行動を共にする「妖精」だ。

それから、風見に密かな想いを寄せるクラスの「委員長」を水川。いいか密かにだぞ、露骨に想いを見せるなよ。」


清美は草村の言葉を聞いて、風見を見ながら真っ赤になった。


「あと花咲は水川委員長の妹役、小学3年生だ。」


「え~!?あたし小学3年生?」


「まあ、見えないこともないかな。小さくて可愛いし。」


風見がフォローすると、清美がムッとした表情で、


「どうせ、私は大きくて可愛げないですよ。」


「そんな事は言ってないだろ、それにお前は俺の特別な存在なんだからな。」


「そ、そんなこと…」


清美は風見の目を見つめウットリとした。


「だから、露骨は禁止。って言ってるだろ。ほんとは花咲には、幼稚園児になってもらいたかったんだが、さすがにムリがあるからな。」


「なんだ草村らしくないな、お前ならCG使ってバンバンやると思ったけどな。」


「簡単に言うなよ、結構面倒なんだぞ。まあ、戦闘シーンではバンバン使わせてもらうけどな。」


「衣装はどうしよう?妖精の格好って、どんなのかわかんないや。」


友生が困ったように草村に聞いた。


「ん?ああ、普通の私服でいいぞ、妖精と言っても、お前の体を借りて、風見と行動を共にするって設定だから。」


「え?そうなの?」


「それにな、上地。お前は衣装に頼らなくても、十分可愛い女のコだと思うぞ。」


草村は、あえて「女のコ」という単語を使った。

友生は顔を赤らめながら下を向き、


「そ、そうかな?」


草村はさらに畳み掛けるように、


「なあ神成、お前もそう思うよな?」


「もちろん!友生は世界で1番可愛い女のコなんだから。友生より可愛い女のコは見たことがない!ね~、友生~。」


憂樹が友生の腕に絡み付きながら言った。


「憂樹に言われると、そんなに嬉しくないんだけど…」


とは言っていた友生だが、女のコを連発され、顔がニヤける友生だった。


「あたしは?あたしは?何の妖精?ヒーロー?もしかしてヒロイン?」


憂樹が手を上げながら聞いた。


「お前はモブキャラという単語を知らないのか?」


「え~!?モブ~??」


ほっぺたを膨らませながら、ブーブー言ってる憂樹の姿がそこにはあった。


「まあ、正確にはモブじゃなくて、敵キャラかな?セクシークイーンってやつだ。食い気と色気を持つお前なら出来るだろ?」


「セクシー…色気…クイーン…」


憂樹の顔が少し緩んだ。


「ま、まあ、そこまでわかってくれてるんだったら、しかたないわね。やってやろうじゃん。」


憂樹がガッツポーズをしながら言った。


相変わらず、人をその気にさせるのが上手いと思いながら、風見が草村に聞いた。


「配役はいいとして、とりあえず、どんなストーリーなんだ?」


「ん~、まあ、料理の得意な主人公の高校生が、夏休みを利用して、ご当地グルメを食べ歩きに出かけようとしたところ、電子レンジの妖精「蓮人」と出逢い、戦いに巻き込まれ、人類存続の危機を回避しようとする物語かな?」


「なんだか凄いんだか、凄くないんだか、わからないな。」


風見が考えこんでいると、憂樹が、


「ようするに、「食べ歩きヒーロー」って事でしょ?」


すると清美がわらいながら、


「なんだか強くなさそうなヒーローね。」


「え~、そう?じゃあ、「食い倒れヒーロー」!」


「倒れちゃダメでしょ…」


「じゃ、じゃあ、2つ合わせて、「食べ歩き食い倒れヒーロー」ってのは?」


「もうそれ、「ヒーロー」じゃないよ、ただの大食い高校生だよ…」


友生が呆れ返ったように呟いた。


すると、その会話を聞いていた草村が大笑いし、


「アハハ、いいなそれ。サブタイトルに使わせてもらおうか。

〔ご当地ヒーロー、超蓮人TTT・ご当地グルメ食べ歩き食い倒れヒーロー、ここに現れる〕ってな。」


すると風見が机に頭をつけて、


「頼むから、やめてくれ。この通りだ。」


「ほ、ほら草村さん、風見君もこんなに嫌がってるから、普通のにしない?」


友生も風見が、かわいそうになって草村頼んだ。


「ちぇっ、面白いのにな。って、ウソだよ風見、やっぱりヒーローは強いイメージが大切にだからな。まあ、ざっとこんなところだ。」



「わかったような、わからないような、まあ、草村の撮影はいつもこんな感じだからな。

岡山か、どんな所だろ?」


風見が想いにふけっていると、他のメンバーも、


「友生と1週間一緒にいられる…」


「初めての女のコ役だ、上手く出来るかな?」


「風見君と1週間も同じ屋根の下…可愛い下着持ってたっけ?一杯持っていかなくちゃ。」


「この撮影中に氷河君ともっと仲良くなれたらいいのに…」


「先生の映画作りを間近で見れるチャンス、寝てる暇はないぞ、透!」


「ふふふ、楽しい旅行になりそうだ。」



それから1週間後、それぞれの想いを胸に、エーサクのメンバーは、一路草村の母親の故郷である「岡山」をめざしたのである。



そして撮影中にも、あらゆる出来事があったのだが、その話はまた後程ということで。

いよいよ本編突入です!









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緑のエーサク じんべい @invoke

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