第19話
緑のエーサク〔ご当地ヒーロー編〕
第2話〔ヒーローと岡山弁〕
氷河は、何枚か束になったプリントをみんなに配った。
そこには〔ご当地ヒーローTTT!〕と書かれてあった。
それを見た風見は、
「ご当地ヒーロー、ティーズ?」
すると草村が、
「違う、違う、ご当地ヒーロー、ティーティーティーって読むんだ。」
「だけど、よくある特撮物は、OOOでオーズ、5 5 5 でファイズって読むじゃん。」
納得のいかない風見は反論した。
すると草村は、不敵な笑みを浮かべ、
「ふふふ、風見もまだまだだな。少しは成長したと思ったが、私のレベルまでは到底届いてないな。そんな事では私を追い越せないぞ。」
「誰もお前に追い付こうなんて思ってないよ、そもそもお前を追い越す奴なんてこの世にいるのか?」
風見がタメ息混じりに言った。すると草村が、
「よく読んでみろ、最初に〔ご当地ヒーロー〕って書いてあるだろ、つまりこの〔ティーティーティー〕は、この主人公の舞台の方言から来てるんだ。」
すると清美が首を傾けながら、
「ティーティーティーが方言?わたしも勉強で方言はいくつか知ってるけど、こんな方言は聞いたことないわ。」
「まあ、正確には〔てーてーてー〕だけどな。」
それに〔ティーズ〕だと変な芸人のギャグみたいじゃないか?」
すると憂樹が立ち上り、人さし指を立て、胸をはり、
「ティーズ!! 」
「アハハ、憂樹似てる~」
友生が大声で笑った。
「え?どこがおもしろいの?」
真面目な顔で清美が友生を見た。
「え~?水川さんオー○リー知らないの?」
友生が不思議そうに訪ねた。続いて憂樹が、
「ほら、何年か前にM1グランプリで、敗者復活から勝ち上がって、準優勝なのに、優勝したコンビよりテレビに出るようになって有名になった、あのオー○リーだよ。」
それを聞いた風見は、
「お前、むちゃくちゃ詳しいな。」
「だって、お笑い大好きだもん。ね~友生。」
憂樹は友生と顔を見合せて笑った。それを見ていた草村は、
「な、こんな感じになるのが嫌だから「ティーズ」とは絶対読ませない!」
「ま、まあ、それはわかったけど、TTTとご当地ヒーローの関係はなんだよ?」
風見が草村をなだめるように聞いた。
「ああ、そうだったな、まずはTTTが、どこの方言かというと、岡山県の南に児島という街がある、その辺りの方言だ。」
「岡山県の方言?そういえば、最近「もんげー」っていうのが有名だよな。」
風見の答えに草村は、
「あ~あれか。あれは岡山県でもごくごく一部らしいんだ、ほとんど使われてないらしい。まあ、よくあるメディア操作だな。」
「どうして、そんな事がわかるの?」
清美が不思議そうに聞いた。
「前に私の母親と緑先輩の母親が同級生というのは話したよな。」
「ああ、それに同郷なんだろ?」
風見が思い出したように言った。
「そうなんだ、その母親の実家が、その岡山県の児島なんだ、もちろん緑先輩の母親もな。私の母親が言うには、小さい頃から一度も「もんげー」という方言は聞いたことないんだと。緑先輩の母親も同じ事を言ってたらしい。」
「それとTTTと、どう関係があるの?」
友生が聞いた。
「あ、悪い悪い、話が少しそれた。まず〔てーてーてー〕の意味から教えようか。初めて聞いたのは私が幼稚園の頃かな、母親の実家に行ったとき、祖父と祖母がこんな会話をしていたんだ。
祖父が「ここのでーこん、てーてーてー」と言うと、祖母が「もう、てーとるがー 」って言ってたんだ。
「まったくわからね~。」
風見が笑いながら言った。
「まあ、訳すとだな、「そこにある大根を炊いていてください。」
「もう炊いてますよ。 」って意味になるんだ。
「へ~、面白いわね、ほとんど「てー」だけで会話してる。」
清美が感心しながら言った。
「まあ、そんなこんなで、緑先輩もヒーロー物が好きだし、舞台も自分の母親が生まれ育った街なら喜ぶと思ってな。」
「うん、いいよそれ、ボクは賛成!」
友生が元気よく手を上げた。
「きっと緑先輩も喜ぶわ。」
清美もうなずいた。
「よし、とりあえず舞台は岡山県、名前は〔超蓮人TTT〕だな。」
「で?名前の由来はわかったけど、この〔超蓮人〕てなんだ?」
風見の問いに草村は、
「まあ、そう焦るな、次のページに書いてある。」
全員プリントを1枚めくった。
そこには「あらすじ」が書かれてあった。
「まあ、ざっくりと話すとだな、
地元の青年が岡山県のご当地グルメを守るため、〔超蓮人TTT〕になって、悪の組織〔愚蓮人〕と戦う物語だな。」
「ざっくり過ぎてわかんね~ぞ。」
風見が天井を見上げながら言った。すると清美が、
「ねえ、草村さん、この青年て、もしかしてモデルになる人がいたりする?」
「お!さすが学年2位の秀才、鋭いな。」
草村の学年2位の言葉に反応し、風見を睨み付け「次こそは…」の言葉が出かかった清美だったが、大きく息を吸い「フゥ~」っと深呼吸し、
「草村さんを見ていたら、順番なんかもうどうでもよくなっちゃった。」
その言葉を聞いた草村は「フフッ」と笑い、
「水川さんも、ようやく肩の力が抜けてきたね。これは次のテスト、ひょっとしたらひょっとするかも。」
その会話を聞いていた憂樹が突然、
「いや~!!テストの話、嫌ぁ~!!!」
大声で叫び出した。
「どう、どう、どう、」
友生が馬でもなだめるかのように、憂樹の頭をポンポンポンとなでた。
すると草村が、
「コホン、で?どこまで話したっけ?」
「主人公にモデルが居たってところから。」
すぐに清美が答えた。
「ああ、そうだった。その主人公のモデルになった人物も母親たちの同級生なんだ。この話を母親から聞いた時は、世の中には面白い奴がいるもんだと、感心したぐらいなんだ。」
「草村を感心か、すごいなそいつ。」
風見が笑いながら言った。
草村は「コホン」と咳払いをひとつし、話を始めた。
「むかし、あるところにな…… ちょっと違うか。」
そうつぶやくと、今度は〔まんが日本昔話〕風に、
「むかし、むかし、あるところに、二人の可愛いおんなの子がいたそうじゃ。」
「アハハ、なにそれ?上手い上手い。」
憂樹が手を叩いて喜んだ。
風見は呆れたように、
「はい、はい、お前と緑先輩のお母さんな。」
草村は何事もなかったように話を続けた。
「そして、その二人のおんなの子の友達に、自分の事を「帝王」と呼ぶ男の子がおりました。
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