第18話

緑のエーサク〔ご当地ヒーロー編〕



第1話〔新たなる挑戦!〕




「さて、みんな集まったな。」


春休みに入った初日、緑のエーサクのメンバーは部室に集合していた。


「緑先輩も卒業して、ちょっと寂しくなったけど、新たな気持ちで頑張ろうじゃないか。」


「て、ちょっと待て草村!」


草村の話を遮ったのは風見だった。


「ん?なんだ風見。」


「ちょっと寂しくなったって、かなり人数が減ってないか?」


「そうか?これで全員だぞ。」


「そういえば、光君も冬李君もいないね。」


友生が辺りをぐるりと見回しながら言った。


「あれ?スーも居ないよ?」


つられるように憂樹もぐるりと首を回した。


「あ~、光と冬李か、あいつらはもともと掛け持ちだったからな。それに3年にもなると、進路の事でいろいろと忙しいだろうから。

まあ、手が足りないときは呼ぶけどな。」


「スーは?」


憂樹がちょっと寂しそうに言った。


「あれ?憂樹知らないの?スーは2年が終わるとアメリカに帰ったじゃない。お別れパーティーも一緒にやったじゃない。」


友生が憂樹を不思議そうに見つめながら言った。


「え?あれってお別れパーティーだったの?誕生日パーティーだと思ってた。」


「どうりで貴方だけテンションが高いと思ってたわ。」


清美は呆れ返ったように憂樹を見た。


「そうだぞ、スーは家の都合で帰ったんだ。けっしてカタカナのセリフがめんどくさいとかそういゃかゆう事じゃないからな。」


草村は真剣な眼差しで憂樹を見た。


「と、いうわけだ、頼んだぞ新部長。」


草村は友生を見つめながら言った。


「気が重いなぁ、ホントにボクが部長でいいのかな?」


大きくタメ息をつく友生に憂樹が、


「大丈夫、大丈夫。なんたって緑姉じきじきの指名なんだから、それに、このわたしが副部長なんだから、大船に乗った気でいなさい。」


「わたしはそっちの方が心配なんだけど…」


清美が呆れ返ったように言った。


すると草村が、


「本当は水川さんにしてもらったかったんだけど、生徒会に力を入れてもらいたいからな、生徒会に太いパイプがあると、いろいろと便利だろ。それに、真の部長は風見だし。」


「え?!俺? そんな話聞いてないぞ。」


「ああ、今、初めて言ったからな。まあ、上地さんの補佐みたいなもんだ。」


すると風見が、


「まあ、うちの影の部長は草村だろうけどな。」


「お~、こんなに部長が居るんなら安心だね友生。」


憂樹は友生の肩を叩きながら言った。


「ハァ~、ボクの部長って要るのかな?」


すると草村が、


「何を言ってる上地、お前ほど男女に愛されてる者はこの学校にはいないぞ、とくに女子の人気はハンパないからな。新入部員、部費の増額のために、その笑顔を存分に使ってくれ。」


「わたしも友生の事、愛してる!」


憂樹は友生に抱きついた。


「いや、だからボクは女なんだってば。」


困ったように憂樹をなだめる友生に風見が、


「まあ、困った事があったら俺も助けてやるから、頑張れ新部長。」


友生の頭をポンと叩いて言った。


「わたしも手伝える事があったら協力するわ。」


清美に続いて香も、


「あたしも、あたしも。」


元気よく手をあげて答えた。


「みんな…、ありがとう、ちゃんと出来るかわからないけど、やってみるよ。」


友生は笑顔で微笑んだ。



「と、まあ、新部長イジリはこれくらいにして本題に入ろうか。」


草村が、いつになく真剣な表情になり、机に両肘を立て、指を絡めた手の甲にアゴを押し当て話し始めた。さながら「エ○ゲリオン」の碇ゲ○ドウのようだ。


「さて、今日集まってもらったのはほかでもない。今年の文化祭に上映する映画の事だ。去年はかなり盛り上がったから、今年はそれ以上の物、なおかつ緑先輩の卒業祝いもかねて作るつもりだから、みんなも頑張って欲しい。」


「緑姉の卒業祝いかぁ。それじゃ気合いをいれないとだね。」


憂樹は椅子から立ち上りガッツポーズをした。


「ところで、どんな映画にするんだ?アクション系?恋愛系?もしくはホラーとか?」


風見が草村に聞いた。


「ああ、そのへんの事はもう決めてある。ズバリ「ヒーロー物」だ。

おい、氷河、例の物をみんなに配ってくれ。」


「はい!先生!」


草村の足元からいきなり氷河が立ち上り現れた。


「キャ!」


いきなり現れた氷河にビックリした清美は風見の腕を掴んだ。


風見は、いきなり現れた氷河と、清美に腕を掴んだ掴まれた事にビックリしながらも、


「お、お前、そんなところにいたのか?なにやってんだ。ちゃんと席につけ。」


呆れ顔の風見に対して氷河は、


「わたしは榮倉先生の影、いつもお側にいるのが当然!主君にお仕えするのが忍者の務め。」


「何言ってんだこいつは、気にする事はないぞ、こいつはただのパシりだ。

どうでもいいから、さっさとみんなにプリントを配れ!」


草村は持っていたプリントを丸め、氷河の頭をポコンと 叩いた。


氷河は、何枚か束になったプリントをみんなに渡した。

その1番上のプリントには、大きな文字で〔ご当地ヒーロー、超蓮人TTT!(ちょうれんじんティーティーティー)〕

と書かれてあった。








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