第66話「スラニ湿原で、資金稼ぎ(4)」
スライム族の魔物の狩場として有名なスラニ湿原にて、俺とテオはひたすらスライムを狩りまくっていた。
ここではなかなか出現しないレア魔物・ミディスライムを倒したところで、いったん宿へ帰ることに。
湿原へ来たのは資金稼ぎ目的であり、ミディスライムから入手した戦利品は高額で売却できるため、今日の稼ぎとしては十分だと思ったのだ。
帰る前に、湿原入り口の『トヴェッテ王国政府 スラニ湿原出張所』に寄り、出張所内のトヴェッテ冒険者ギルド窓口で、入手した素材を売却する。
合計売却額はなんと、約1万3千
やはりミディスライムから入手した『ミディスライムの
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その夜も、宿泊中の宿屋の1階に併設された大衆レストランにて夕食をとった。
ここでの夕食は本日で3日連続。
他の酒場やレストランに行ってもよいのだが、味も値段も文句のつけようが無く、しかも泊まっている部屋から外に出ずに行けるため、ついつい足を運んでしまう。
注文を取りに来た女性店員に「今日は港から、大きくて美味しい
俺は、海老のオーブン焼きを注文。
店員によれば、縦に半割した海老に、クリームをたっぷり使ったホワイトソースと粉チーズをかけ、香ばしい焦げ目が付くまでオーブンで焼いた料理とのこと。
テオが頼んだのは、海老のガーリックハーブオイル蒸し。
こちらは海老の旨みをより味わえるよう、ニンニクの風味を効かせつつ、ハーブオイルでシンプルに蒸しあげた料理なのだそうだ。
この日もメインメニュー以外は共通で、付け合わせはシャキッとしたレタス、太目ホックリな塩味のフライドポテト、甘めに煮込んだニンジングラッセ。後はおなじみのスライスした硬めパンに、なめらかそうなトマトスープ、白ワイン。
焦げたチーズの香ばしい匂いと共に運ばれてきたオーブン焼きは、特大サイズな海老の殻をそのまま活かした、豪華なグラタンのような見た目であった。
一口食べると、プリッとした身がギュッと詰まった海老と、とろっと濃厚なホワイトソースが絡み合って、とにかく美味しくて……日本にいた時は『グラタン=マカロニ&鶏』だとばかり思っていた俺にとって、初めて食べる衝撃の味だった!
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海老をしっかり味わい、大満足した後。
テオはデザートのフルーツ入りヨーグルトを追加で頼み、幸せそうに口に運ぶ。
同じく追加で頼んだ強めのブランデーをちびちび飲みつつ、ふと俺が言う。
「……そういえばさ。【
昼間にスラニ湿原で戦ったミディスライム。
とどめの一撃となったのは、テオの【
【
それ以降、1度もテオが【
テオはヨーグルトを食べる手を止めて答える。
「あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてない」
即答する俺。
テオは少し考えてから、思い出したように笑って言う。
「ん~……あ、そっか。ここしばらくは、なるべく1人で練習してたからなぁ……」
「最近はどんな練習してるんだ?」
「えっと……」
テオによれば、戦闘中に火・水・風・土の属性魔術を
回復魔術は元々専門外ということもあって、いまいち成果は出ていない。
防御に使える魔術では、属性魔力を壁のように具現化する
「……攻撃に使える魔術だと、
「おー、やるじゃん!」
【
中でもベースとなる属性に、素材として『弱点となる属性』を合わせる組み合わせは、最も強い威力を生み出すことができるのだ。
基本の4属性なら、以下の組み合わせが該当する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ベース:火魔術 素材:水魔術
ベース:水魔術 素材:土魔術
ベース:風魔術 素材:火魔術
ベース:土魔術 素材:風魔術
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そのぶん威力調整が、他の組み合わせ以上にすごく難しいのだが……昼間のテオは難なくこなしているようだったと思う。
「さっきも『土ベースに、風素材』なんて弱点属性との難しい組み合わせで、しかも威力が1番高くなる調整のベスト配合で成功させてたしな。ホントすげーよ!」
「へ? ……だ、だろっっ!! アッハハハハ……」
急に挙動不審になるテオ。
俺の胸が、
「……おいテオ……なんか隠してるな?」
「そ、そんな事ないしっ! あ! このヨーグルトおいし~な~~♪ タクトも頼めばいいじゃんっ!」
「いらない。正直に言え」
「うぅぅ……」
何とかテオはごまかそうとする。
だがごまかそうとすればするほど、不自然さが増しているように見えた。
ジト目で追求し続ける俺に降参し、テオはようやく白状する。
「分かったよ……実はさ。
「なっ?!」
思わず絶句する俺。
【
ただしそのぶん、失敗時のリスクもぐんと高くなるのだ。
さらに『
ということはこちらもそのぶん、暴発時の被害も大幅に跳ね上がることになる。
もしテオが失敗していたとしたら。
そしてあの場で
自分達はもちろん、他の冒険者達も巻き込んで
……考えているうちに、俺の冷や汗は止まらなくなってきた。
「お前な! もし失敗したらとか考えなかったのか――」
「だってアイツらムカついたんだよ!! タクトだってそうだろ?!」
「そ、それは……」
それ以上、俺は何も言えなくなってしまった。
あの見知らぬ冒険者達の意地悪なヤジは確かに聞くにたえず、テオが止めていなければおそらく俺が怒鳴り込みに行ってしまっていたことだろう。
俺は大きく溜息をつき、そして言う。
「はぁ……まぁ、今回は
テオは明るく「OK!」と笑った。
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