第65話「スラニ湿原で、資金稼ぎ(3)」
その後も俺とテオは、スラニ湿原にてスライム族の魔物をひたすら狩った。
タイニィスライムやスモールスライムを見つけてはすぐ、テオが魔術で瞬殺。見つけては瞬殺。見つけては…………流れ作業のように何度も何度も同じことを繰り返し続け、そろそろ飽き飽きしてきた昼下がり。
またもや数m先に、魔物出現の兆候であるキラキラ粒子が現れた。
気だるい溜息をつきつつも戦闘態勢に入る。
だが数秒後。
「「……!!」」
俺達は目を見開いた。
現れた
すぐに俺が鑑定結果を伝える。
「ミディスライム、LVは32!」
「おっ! レアもんじゃん!」
「じゃあしばらくは、スライムの
「はいよー!」
先程までと打って変わり、2人揃って嬉々としてスライムに飛び掛かった。
スライムから入手可能な素材アイテム『スライムの
ただしタイニィスライムやスモールスライムの
そのためスライムの出現頻度が高いスラニ湿原では、これらの小型スライムが出た場合はわざわざ
だが中型スライムであるミディスライムから入手できる『ミディスライムの
魔力伝導率が高く、質の良いアイテムが作れると人気の素材のため、状況によっては透明魔石よりも高く売れることもあるのだ。
俺とテオで挟み撃ちするようにミディスライムを囲み、まずはテオが鞭でフェイントをかける。
すかさず俺が剣でスライムの体の一部を切り離し、切り離した体を【
スライムはそこそこ素早さが高く普通に武器で攻撃しても避けられがちなため、このような形をメインに攻撃パターンを使い分け、俺達は『ミディスライムの
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15分ほど経ったところで、鞭をふるいながらテオが言う。
「ん~……そろそろ倒しちゃっていいかな?」
俺は「ああ」とうなずいた。
ミディスライムの体は当初の半分以下の大きさになっていた。
スライムの素早さは、その肉体が小さくなればなるほど早くなる。
2人の攻撃も段々当たりづらくなっていたため、とどめを刺してもいい頃合いだと俺も思っていたのだ。
テオは鞭を
「そんじゃいくよっ! ……
素早く【土魔術】を発動し、具現化した砂球をミディスライムへとぶつける。
――パンッ!
当たった砂球は綺麗に
仕方ない。
「やっぱ全然効かないかー。つぎっ!」
テオは気にする様子もなく、すぐに次の魔術を準備する。
「……
気合いを入れるように指先に魔術を発動したところ、今度は両手で何とか掴めるサイズの岩石が現れた。
先程の魔術と同じ要領で「GO!」とテオが合図を出すと、岩石は一直線にミディスライムの元へ飛び込んでいく。
――ドカンッ!
スライムに当たった途端、激しく岩石が爆発。
辺りはもうもうと砂煙に包まれた。
「……やったか?!」
「たぶんっ!」
息をのんで見守る俺とテオ。
『
テオが扱える術式の中では、攻撃力が高いほうなのだが…………砂煙が消えた後に現れたスライムは、まだまだ元気そうにしていた。
「うっ!」
ほんの少しだけテオがくじけそうになった瞬間。
「ギャハハハハッ!」
「だっせー!」
「兄ちゃんには無理なんじゃねぇーの!」
「何ならアタイが代わりに倒してやろうか?」
外野から聞こえてきたのは、悪意に満ちた笑い声や
バッと声のほうを振り返る俺達。
すると見知らぬ5人のガラが悪い冒険者達が、少し離れた所に立って意地悪そうに笑っているのが見えた。
冒険者達にも色々とルールがある。
そのうちの1つは「魔物は、第一発見者が所属するパーティの獲物となる。そのパーティから許可をもらう、もしくはそのパーティが戦闘から離脱するか魔物にやられるかしない限り、他のパーティは手出ししてはいけない」というもの。
おそらく笑っている彼らは、あわよくば獲物を横取りしようとミディスライム――倒せば高価な戦利品が得られるレア魔物――を狙っているものの、このルールを守っているため手出しができないのだろう。
「あのな――」
ムカついた俺が言い返そうとした途端、テオが無言でサッと止める。
そして能面のような顔をしたまま、小さく強めにつぶやいた。
「
「……分かった」
正直なところ、納得はできない。
だがテオの静かに怒るような空気を察し、大人しくスルーしておくことにした。
嫌味な野次が続く中。
集中するように瞳を閉じたテオは、丁寧に魔術を組み上げ始める。
「……
左手にベースとなる
注意深く威力調整してから合成すると、合成前とは比べ物にならないサイズの巨大な
テオは完成した岩石を、左手から利き手の右手に持ち替え、渾身の力をこめるように「GO!!」とミディスライムへぶつける!
――ドガァーーーンッ!!!
辺りに響き渡る轟音。
膨大な量の砂煙。
それが全て消え去った後、残っていたのは魔物の残骸である僅かな粒子と、大きめの透明魔石だけ。
気が付けばいつの間にか、ヤジを飛ばす冒険者達は黙り込んでいた。
俺とテオはニヤッと笑う。
そして、どちらからともなく拳をぶつけ合うのだった。
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