第13話「剣と魔術、鍛錬の1週間」
パーティを組んだ翌日から1週間、俺とテオは毎日のように
朝から街の外へと出かけ、午前中は他の冒険者達が寄り付かず、かつ魔物がほとんど出現しない辺りに陣取り、各自で魔術を練習する。
俺は【光魔術】を、テオは【
テオは、初めて魔術を合成した際の暴発&
元々テオは魔術の威力調整が抜群に上手だったこともあってか、既にある程度使いこなせるようになったようだ。
俺はというと、「焦らず落ちついて詠唱さえできれば」という条件付きではあるものの、安定して
だけど【光魔術】を使えるというのは、それ自体が勇者だという証明になってしまう。正体を隠したい現状、俺の魔術はできる限り使わずに旅をするつもりだ。
昼頃になると、事前に街で買っておいたランチボックスを食べてから、森の中の魔物がそこそこ多いエリアへと出かける。
ここで俺は主に魔物との実戦形式で、剣を使った戦い方をテオから教わる。
だけどテオに言わせると、それはあくまで敵が激弱であり、明らかな戦力差があって初めて実現していたに過ぎない。今後格上の敵と戦うとなると、そのままの立ち回りではいつか限界が来てしまうだろう、と。
そこでテオが提案したのは、敵の攻撃を回避したり、盾や剣で受け流したりしながら隙を見て攻撃するという、スピードを活かした回避主体の立ち回り。
俺が装備している『手作りの片手剣』も『ミスリルバックラー』も重量としては軽めの装備であり、装備していても身軽に動くことが可能だ。ただしそのぶん防御力には期待できない。
装備だけじゃなく本人のLVや、HPや防御力等の基本能力値が軒並み低いので、生き残るためには基本「敵にダメージを受けないようにする」という立ち回りが求められることになる。
最初はやや
数日も経つと、森を住処にする体長1m程の緑色の大トカゲ型の魔物・フォレストリザードや、狂暴な野生の狼型の魔物・ワイルドウルフ等、森の浅い部分に生息する魔物達を俺1人で討伐できるまでになった。
テオの剣術指導は、とても丁寧で分かりやすかった。
意外に思った俺が、どこで教え方を覚えたのか聞いてみると、テオは「俺だって元々、触ったことすらない状態から剣術を覚えたから。教える時は、その頃の気持ちを思い出すようにしてるんだよね!」と笑顔で答えた。
夕方頃にはエイバスの街へと帰還。
魔物を倒して手に入れたドロップ品を冒険者ギルドにて売却し、どこかの酒場で夕飯を食べては、2人分の部屋を押さえてある宿屋・エイバス野兎亭に戻り休む。
それが俺達のこの1週間のサイクルだった。
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鍛錬を始めてからちょうど7日目の夜。
野兎亭の俺とテオが泊まる一室。
火の魔導具が照らす温かい色の光の中、俺は攻略サイトを開いて調べ物をしながらメモをとり、テオはボーっとベッドに座っている。
お互い静かに過ごす中。
「飽きたっ!!」
テオが急に大きな声を出し、ベッドへと仰向けに寝転がった。
大声に一瞬ビクッとした俺はメモを取る手を止め、テオへと話しかける。
「……なんだよテオ。急に大声出して」
「だって飽きたもんは飽きたんだっ! ここ1週間、毎日毎日、同じことの繰り返しばっかじゃん!」
「確かにそうだけどさ……俺は毎日新たな発見があるっていうか、結構楽しくやってるけどな」
「タクトはタクト、俺は俺。とにかく俺は飽きたのっ!」
テオはそう言うと、ゴロンとうつ伏せになって黙り込む。
元の世界にいた時から『剣と魔法の
それに様々なRPGをプレイする際、ある程度レベル上げしてから先に進むほうが、結果的に危なげなく敵を倒せるというのは鉄則中の鉄則。
しかもゲームと違い、死んだらどうなるか分からないのが
下手に冒険して取り返しがつかなくなってしまわないよう、できる限り序盤でレベルを上げたり、
安全かつ確実に実力をつけることができたこの1週間の環境は、そういった意味でまさに理想と言えるだろう。
だけどテオが教えてくれたのは、何も剣での戦い方だけじゃない。
長年各地を旅し続けているだけあって、日々の剣の手入れ・魔物の生態・人々の文化についてなど様々なことに詳しいテオは、いつも俺をフォローしつつ色々教えてくれていた。
いくら
想像以上に頼ってしまっている現状に気づいてからは特に、口にはあまり出さないものの俺は割とテオに感謝している。
そのため、パーティを組み一緒に行動する上で、できる範囲で彼の希望に沿っていきたいとも思っていたのだ。
「なぁテオ」
「何?」
「他に何かやりたいことってあるか?」
「やりたいこと? えっと……」
うつ伏せのまま何やら考え始めるテオ。
ややあって「そうだ!」と思いついたようにクルッと回って飛び起きたテオは、明るく提案してきた。
「ダンジョンに行こうっ♪」
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