やればできる
自分はやればできる人間であると思っていた。
子供の頃までは自分の頑張りが結果に反映されてきたから疑いもしなかった。しかし、自分がどんなに頑張っても追いつけない人たちがいることを知った。彼ら彼女らは私には到底不可能なことでも軽々とやってのける。
もちろん、才能や与えられた環境が全てというつもりもない。私からすると手の届かない場所にいる人だって、その場所にたどり着くまでにはきっと頑張ってきたのだ。
ただ、それでも、と思う。
頑張っているのは私や他の大勢の名もない人々も同じなのだ。
怠けていると思われる人間に対して自業自得や自己責任と言った言葉が投げかけられるが、この世界でそのような誹りを受け手当然の人間は決して多くないのではないか。
ある程度の頑張りがなければこの世界を生きていくことさえできないのではないだろうか。
彼ら彼女からすると私はまだ頑張りが足りないのかも知れない。こんな備忘録を残す暇があれば自己研鑽に励めと叱咤されるかもしれない。
でも、私にはこれが限界なのだ。
すでに気力は尽きている。
今はこうして「やればできる」人間として振る舞うだけで精一杯なのだ。こんな私が結果を残せるはずがない。
残念ながら私は『やればできる』人間ではなかった。
より良い世界を創っていける人材ではなかった。
0を1にすることなど到底出来ず、1を10や100にすることもできない。
せいぜい現状を維持する能力しかない。
もともとは自分をやればできる人間だと勘違いしたのが全ての誤りだった。より良い世界を創っていける人間になるなど、完全に分不相応な願いだったのだ。
しかし、いくら頭では分かっていても私はこの願いを捨て去るこができないでいる。
なぜか。
答えはシンプルだ。
彼ら彼女らはかっこいいのだ。
自らの力で自らの人生を切り開き、そして世界をも切り開いていく。そんな姿を側で見ていて憧れない方がおかしいのだ。
ああ、どうして私は彼ら彼女ら一緒に過ごすことを選択してしまったのだろうか。あんな人間たちがいることなど知らなくても生きていけるのに。その方が自分の存在を貶めずに生きていけるのに。
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