久しぶりに夢を見た。


中学時代の友人とたまたま街で出会って会話をする、ただそれだけの夢だ。


出会う場所は東京なのに、背格好は中学時代のままだった。


私は大人になるまで東京には来たことがなかったのに、場所だけアップデートされているのは何だか可笑しかった。


最近はこういう夢が増えている。


風景や私の思考はアップデートされているのに、相手や自分の背格好は幼いまま。


無意識に今関係する人が夢に出てくるのを拒否しているのだろうか。あるいは、楽しかった子供の頃を懐かしんでいるのだろうか。


どちらにせよ、今の人生を拒否しているようで笑えない話だ。


今が充実している人たちは、やはり夢も完全に現在にアップデートされているのだろうか。私にしては珍しく、この点に関しては他人はどうなのか興味が出た。


一時期、明晰夢が見れないかと色々とトレーニングしたことがあった。


明晰夢とは夢の中でこれが夢だと自覚できる夢である。これがマスターできれば夢の中で何でも好きなことができる。まさに夢のような話だ。


しかも、明晰夢をマスターすればタイムリープもできるようになるらしい。完全にオカルトだと頭では分かっているものの、もし学生時代に戻れたらという思いがある以上、無視することはできなかった。


私は強く願った、過去に戻ることを。


結果は言わずもがなで、タイムリープすることはもちろんのこと、明晰夢をマスターすることさえできなかった。やっている途中でだんだんとバカバカしくなってくるのだ。こんなことに時間をかけているなら素直に寝てしまったほ方が良い、休息に当てた方が良いと考えてしまう。


自分の願いを叶えるための余裕さえ当時の私には残されていなかった。いや、余裕がないのは今もか。


明晰夢やタイムリープは実現性や動機を考えるとバカバカしいが、それでも自ら選択した行動だったのだ。その点では自分で何も新しい行動を起こせない現状よりも幾分良かったのかもしれない。


今の私は願うだけで行動にすら移せないのだから。


行動に移せない人間は何も叶えることはできない。


何もかも嫌になって、私は布団に潜り込んだ。きっと今日もこのまま何もできずに終わることだろう。そして、明日になれば、きちんと休みにリフレッシュできました!という表情で会社に行かなければ行けない。


考えただけで憂鬱になる。

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