第3話 九十九の受難
「爆弾!? それ他も巻き添え食うだろ! 店だって下手したら……」
怒り心頭と言わんばかりの身体に浮き出ている彼女の血管。まるでゴリラの怪人だ。
九十九はキレている彼女がヤケを起こさないように諌めるが、この状況を打破する力がない以上、九十九も強くは出れなかった。
「安心おし、最小限にとどまるはずよ! アタシを信じなさい!」
背に腹はかえられないとはいえ、自分の店を壊すことになるかもしれない。歯を食いしばり、声を震わせるジュリアに九十九はもう何も言わなかった。
「そっか……んじゃ、俺は俺で時間稼ぎでもするかな」
「──は!?」
突拍子もないことを言う九十九に開いた口が塞がらないジュリア。人工生命体に対して、一丁の拳銃で対抗できると睨んでいるのか。ほとほと九十九の楽観視に呆れ果てる。
彼女が頭を悩ませていると、策があることを遠回しにほのめかす九十九。
「あんにゃろうのせいで店を壊す羽目になるんだし、からかってやろうぜ」
「馬鹿なの?! 戦闘タイプのアンドロイドに銃なんか効くと思う?!」
「失った誇りは自分でしか取り戻せない。漫画で見た」
「あーたねぇ! 漫画好きもたいがいに……」
ジュリアが話している間に、慣れた手つきで弾丸1発1発に怨念をこめて補充していく。重力爆弾という頼もしい言葉の響きに感覚が麻痺したのか、はたまた別の想いか。面を緩ませ勝利を確信する九十九。
「44マグナム弾、ダーティハリー愛用の最強マグナムと同じモデルだぜ。こいつを──」
弾倉をセットし撃鉄を起こすと両肩に力をこめ、意を決して立ち上がる。
「──おい! 御高い面を汚したくないなら、決闘を受けろ!」
カウンター越しに大男に照準を合わせ、キザっぽく告げて片眉を上げる。
てっきり近くにまで迫ってきていると九十九は踏んでいたが、大男はいまだソファの近くでじっとしており、こちらを警戒して観察を続けていた。
「……致命傷のはずだ」
器用にも不可解げな声調に変えて尋ねてくる大男に、九十九が不敵な笑みを返す。
「残念だったなぁ、トリックだよ。カタをつけたいなら抜き撃ちしようぜ……ルールはカウント3。ん? やるよな? やるだろ? こっちはただの人間だぞ」
敵を目前に堂々と銃を下げて煽る九十九に対して、大男はニヤリと口角を斜めに上げた。
「オッケぃ!」
「よおし、いくぞ。い……」
数えつつ銃を構え、引き金にかけた指を引こうとする。その瞬間に鼓動がどくん、と一気に跳ねて九十九に警鐘を鳴らしてくる。
鏡写しのように、あの大男も右手を向けてきていたからだ。集光させた指先のレールガンを、威嚇するように点滅させている。
九十九は身をもって学んだ。機械とはいえ敵の決めたルールを馬鹿正直に守るものはいないのだと。創造主に課せられた任務だけを全うするのが機械なりの本分。不用意に反撃の隙をつくるなどもってのほか。九十九の考えていた騙し討ちを先行してやられてしまう。
「ちぃうぉおおおオオオっ!」
──死ぬぞ。伏せろ。
もはや走馬灯に近い思考が全身の筋肉に「ヤバい」と指令を送り出し、九十九は奇声を発しながら身体を仰け反らせる。
強烈なフラッシュと鼓膜を破るような稲光が直線上に走った。どうにか紙一重の差で避けて倒れこむが、レールガンを眼前にかすめた影響か、顔面に電熱が帯びたような痛みが襲う。
「あづぁああ! 顔が溶けてるァ!」
「だから言ったでしょう?! 見せなさい!」
顔を両手で覆い悶えている九十九に、高圧電流に触れた人間の末路を想像してジュリアは背筋を冷たくさせた。
九十九の不安げに震わせた手を退け、患部がどれほどの惨状なのか診てみる。
「……あーた」
思わず肩の力が抜けるジュリア。
九十九の顔は炭でも被ったかのように真っ黒に焦げているだけで、目立った外傷はなかった。
それだけで済むのが異常であることは重々承知しているつもりだが、心底九十九のタフさに感服する。あえて指摘するなら綺麗さっぱりと眉毛がなくっているが、それは伝えずに胸の内にしまっておいた。
「……正直に言ってくれジュリア。俺はもうダメだと」
死を覚悟したような瞳で率直な言葉を望む九十九に、頭をど突いて応えた。
「ええ、クソ駄目よ! 心配させんじゃないわ! かすり傷よっ」
「あ、そうなの」
「まったくもう、この子は……さぁ、ここからはハイテクノロジーで制するわよ」
ぐしぐしと顔を擦る九十九を尻目に、棍棒のごときその腕に力を漲らせる。
「キューティふらっしゅぁあ゛あ゛あ゛ッ」
野太い咆哮を上げて、力一杯箱にめがけて腕を振り下ろした。
「おまっ、ここで──」
てっきり投擲物<とうてきぶつ>かと思いきや、バンザイアタックをしかけるとは予想外だった九十九。咄嗟に亀のように身構え眼をつぶった。
暗闇の中でどぐしゃ、と中身のない果実を踏んづけたような音がする。
九十九はそっと目を開けると、フローリングの床ごとへこまされた重力爆弾が視界に入る。
不発かと勘ぐっている間に壊れた箱の中の気泡が内側から漏れ、それはみるみるうちに広がり店内を包み込むほどの大きさに膨らんでいった。
同時に紫の泡に呑まれた九十九の身体は、水中を彷彿<ほうふつ>とさせる浮遊感に支配され重心を感じなくなると、やがて自身だけでなくジュリアを含めて周りの散乱物がふわりと浮かび始めた。
「あ……アイツ」
九十九はカウンターの上にまで浮上すると、当然ながらあの大型アンドロイドも無重力の影響下にあるのを視認できた。
最新鋭の機械が狐につままれたように辺りを見回している、実に人間らしい滑稽な姿だった。
「イレギュラーに弱いのは人間と同じか……」
「感心してる暇ないわよ、10秒したら重力が破裂するんだから!」
「え゛、なんだって!?」
「言ったでしょうがトリ頭! 爆弾なのよコレは!」
“重力が破裂”。
25年生きてきて全く聞いたことのないワードに、逃げる時間がたったの10秒。「先に言えよ」と怒る暇もなく、安堵の表情が剥がれ落ちる。
「秘技、ヤンバルクロール!」
不安の残る九十九はさておき、技名を叫びカウンターテーブルを蹴って飛び立つジュリア。沢山の汗を空中に撒きながら、一目散に宙をかき足をバタつかせて泳いでいく。
「絵面が汚い!」
おぞましい肉体美の成すクロールに目を奪われた九十九は、すぐさま記憶から消すために首を振る。
「落ち着け。正確かつ迅速に……」
気合を入れなおすと身体を横に倒し、背後の棚に足をつけて、目指すべき場所に視線を上げる。
「パキラちゃん。さ、外にでましょうねぇ……てめえいい加減にしろ九十九ぉ! ムーヴムーヴムーヴッ!」
のんびりしている九十九を見ておられずに、ジュリアはパキラの植木鉢を抱えると面もちを険しくさせ怒号を浴びせる。
「(なんか血が騒いでるし……)」
「まだか豚野郎ぉ゛!」
退路を用意する一連の動作の後、伸ばした右腕を上部に振り曲げて退陣のハンドサインを送ってきていた。
「分かったから、お前は先逃げとけ! 俺はァ……よっ」
「ば……っ! そっちは──」
九十九、飛翔。
だが出口にではない。九十九流25歳独身は、衛星のように漂っている“彼女”の元へ。
両の手をピンと垂直に伸ばして身体を出来うる限り細くする。みっともない見映えだろうがなりふり構わずに少しでも速く、早く、疾く──。
「見捨てるかよぉッ!」
無心の雄叫びだった。瞬きすら許されぬ時間の中で、ただ彼女を救うことだけを脳みそに詰め込み余計な考えを捨てた。
3メートル……2メートル……あと一人分の距離にまで詰めた九十九は、身をひるがえして弧を描くと、真下に滑り込む。
「──よし!」
到達した九十九は金髪のアンドロイドを脇の下から抱えると、壁を踏み台にして両足の爪先に思い切り力を入れる。
「何でも屋さん……」
「離脱!」
ぽつんと呟いた彼女に声を被せると跳躍し、見事に大男を避けて脱出する完璧な“くの字”コースの軌跡を描くことが出来た。
汚点があるとすれば……。
「──時間切れだあ! 手を伸ばせ九十九ぉ!」
「ま……あと5秒くれぇええ!」
10秒が経過した。ジュリアはその事を告げると九十九に手を伸ばす。
「くそ──」
あとほんの20センチほどで手が届くというところで、莫大なGが九十九達を襲った。肉だけ残して背後に皮だけ引き剥がされるのではと錯覚を起こすほどの膨大な力がはたらく。
気泡に変化が起きていたのだ。チーズを絞る布のように空間の中心がくしゃくしゃに歪みだし、計り知れない強大なエネルギーが喫茶店の中心部に集中する。
そして限界までに圧縮された空間は、押さえてきた反動を吐きだすように全てを弾き飛ばした──。
◆
気がつくと、暗く淀んだ意識の海を漂っていた九十九。辺りは暗夜で、他に誰もいない。聞こえるのは静かな波の音だけだ。
穏やかな波間に優しく揺すられ、心地よい眠りを誘ってくる。こんなに安らかな最期ならば、自分を迎え入れてくれる“彼の地”まで──。
そう九十九は“行先”を決めると、段々と耳元にざわめく波音が耳障りになってきた。引いては押し寄せの単調な動きが激しくなり、そして……。
「──大丈夫ですか?!」
と、若い女性の声とともに冷たい水がぶち当たる。
「……げほっ、すばぁっ! ごほ……な、なんだあ!?」
「良かった。気絶で済んでたみたい」
驚き戸惑い反射的に上体を起こすと、囲んでいた有象無象のギャラリーが九十九の生還に視線を尖らせる。
気にせずに九十九は素知らぬ顔で空を見上げると、天を覆い尽くすような配線ケーブルにネオンの看板。流れる生暖かい風を感じて現実に戻って来たのだと確信する。
「(九死に一生か。あの娘とジュリアは……)」
人の壁が邪魔で状況がいまいち掴めずにいると、そばにしゃがんでいる、空のバケツを布手袋の指先でぶらぶら揺らして物思いにふける、妙な人間に目がいった。
「(なにやってんだコイツ……)」
“ドラァグ”にはそれこそ純粋な変わり者も奇抜なファッションの変態もいるし、むしろ集大成と言っても過言ではない場所だ。とはいえ、黒いフード付きのローブで身を包んで石膏で固めた笑顔の仮面と、徹底した装備なのだから、どうしたって視界に入る。
目立たないようにしたいのか注目を浴びる気なのか、意図の読めない格好に九十九は心の中で一線引いた。
「こんなに荒れてるなんて……でもココにしかアテが……こんな危険だと寝床の確保も……うぅん」
顔を覆ったマスクからくぐもった呪詛がぶつぶつと聞こえてくる。ここまで怪しいと、一周して親近感が湧いてきた。独り言に対しての同族嫌悪という邪な感情もあるにはあったが、なによりも……。
「(……声からして、紫乃くらいか)」
不気味な仮面の女に興味は尽きないが、いつまでもこうしてはいられない。二人の安否が気になり言いようのない焦りに駆られた九十九は、バケツを揺らし続けている黒いローブの女性の肩に手を置いて揺さぶる。
「すみません。あの、もしもし?」
「……あ、失礼しました。元気そうでなにより。私、ルゥナって言います。よろし……う゛っ! ちょっと、握手は……」
九十九の手を退けると彼女はしゃがみこんだまま半歩後ずさりし、ドブまみれの彼から距離を置いた。
「悪かったなっ! いや、そんなことより……ありがとう。助かったよ。俺は九十九流。助けてもらったついでと言っちゃ図々しいけど、この辺りがどうなったか、分かる範囲で教えてくれないか?」
「……もちろんよ。こう見えてジャーナリストなんですから、真実を語るのが私の使命よ」
彼女は少し背を反らし、誇らしげに胸を叩いて嬉しそうな素振りを見せる。
「そ、そう。どう見ても犯罪者にしか見えないもんだから……」
「失礼ねっ! ちょっと待ってて。そんな経ってないから……えーと」
ルゥナは袖に手を引っ込め、何やらゴソゴソとローブの中を漁っている。
かと思えば鉛筆と手帳を取り出し、あからさまにジャーナリストであることを九十九にアピールすると、ページを数枚めくって、事の顛末<てんまつ>を話してくれた。
金属同士を擦り合わせたような、頭につんざく奇妙な音と併せて、店の壁ごと吹っ飛んできたアフロの怪人と九十九のこと。大きな被害が出たのが“やろう”だけだったこと。一足先に起きたアフロの怪人が喫茶店だった跡地を見て、再び気絶したことを順々に語る。
「──待て。もう一人、俺が抱えてたアンドロイドがいたはずだ」
「え?」
「どこにいる?! 教えてくれ!」
「きゃっ! そんな顔で凄まないでください!」
睨んだ顔を近づけてくる九十九に、容赦無くリバーブローをお見舞いするルゥナ。しゃがんだ体勢とは思えないキレのある重い拳。ここにきての暴力に九十九は「はぐぉ」とうめき声を漏らし、脇腹を押さえた。
「君、結構ひどいね! 顔は自前なんだから仕方ないだろ……うぅ」
「え゛!? ご、ごめんなさい。つい。だって……」
そこまで言いかけると、ちらちらと人の顔を見ては怯えた振る舞いをする、仮面を付けた女。
大げさに拒絶するルゥナに当然ながら一人の男としては心が痛み、自信をなくす。
何も手荒な真似をしているわけでもないが、そこまで繊細な人なのだろうか。九十九は焦りを押さえ、とにかく下手に刺激しないよう接することを、破壊された肝臓に誓った。
「悪かった、そんなに怖がるなよ。“アレ”は借り物だから返さないといけないんだ。どこにあるのか分かるか?」
「……う、うん。かなり損傷が酷いけど無事だよ、あそこに──」
彼女は真横を向いて大衆に指を差し向けると、人の波を避けつつ中年の芸者オカマが金髪のアンドロイドを抱えて、九十九の隣に運んできてくれた。
「このアンドロイド、アンタに随分と会いたがってたみたいよ、このタフガイ!」
「ははは……ありがと、おっさん」
「気にしないで、スゴイもん見れたから。上映楽しみにしてるわ」
意気揚々とウインクして去っていく芸者オカマ。勘違いしているようだが、突っ込む気力も起きない。
横たわる金髪のアンドロイドに視線をずらすと、彼女は半目でじっと九十九を見つめていた。
「よ、命拾いしたなぁ。喋れるか?」
「……はい」
力なく返事する金髪のアンドロイド。そのまま何かを呟いているがノイズが混じっていてどうも聞き取りづらい。
そっと耳を傾けると、どうやら声量を上げているようで徐々に靄<もや>が晴れていくように言葉の輪郭がはっきりとしてくる。
「コアボックスに損傷はありません……ご迷惑をお掛けしました」
「……ああ。気にしなくていいよ。聞きたいこともあったからな」
「何を知りたいのですか」
「ん? いや……」
切り出しておいて、言葉にするのをためらっている九十九。
間も無く足先を貧乏ゆすりさせ始めると、迷っているのか苛立っているのか、半々くらいの表情でようやく口から発した。
「さっき、仁道寺って耳にしたんだけど……」
「はい……」
「その、生きてんのか?」
九十九の大雑把な問いに反応が困り、解答をためらう金髪のアンドロイド。
「……それは」
「いや、あのデカぶつのことだよ。もうジュリアも俺もクタクタでさ、銃もないし戦えないぞ」
「理解しました……安心してください……あの戦闘型の……コアボックスからの信号は途絶えています……」
「そっか……そっか」
九十九は深いため息をついてから、どこか不満げにうつむいた。
「……僭越<せんえつ>ながら、私も……よろしいですか」
視界の端で口を細々と動かしている金髪のアンドロイドを捉え、慌てて顔を上げる九十九。
「……なんだ?」
「渡したいものが……」
「渡したいもの? ああ、そういや……」
喫茶店で彼女が両脚を撃ち抜かれる場面をよぎらせる。
「創造主からの手紙を……貴方に」
「……手紙?」
九十九の表情に陰りが出てくる。
「──あっ、そうそう!」
遮るように叫んで手をぽん、と叩くルゥナ。袖に手を引っ込めると、またしてももぞもぞとさせている。探し物を終えると九十九の膝元に、あの白い本をそっと戻して申し訳なさそうに手を合わせた。
「話してたのにごめんね! これも大切なものでしょう? 傍に落ちてたんだけど、高そうだったし、盗まれないように隠してたの」
九十九は強張った笑みで、彼女に感謝をした。
「あ、ああ〜助かったよ。これを無くしちゃ大変だもんなぁ……まず手紙は任務の後だ……そうだろ?」
逃げるようにして金髪のアンドロイドに同調を迫って、九十九は本を胸元の隙間に挟む。
「分かりました……私のコアボックスを託します」
彼女はスーツをめくって、シルクのように艶やかな合成皮膜を露わにし、背中に手を回して何かを引っ張りだす動作をした。
すると片開き扉みたく小さな顔が開放され、内部の緩衝材に包まれた黒い正方形の箱が晒された。かなり純黒に近い色で、九十九にとって底のない穴を覗いているような気持ちになるものだった。
「まさにコアだな……よし」
最先端の結晶に手を伸ばして慎重に掴むと、ひねりを加えて接続部分を外した。彼女のボディも糸が切れた人形のように生気が失われる。
「もうひとふんばりだ」
コアボックスを腰のポケットにしまい、不確かな体幹でふらふらと立ち上がる。
その危なげな様子を見ていたルゥナは、あたふたしながらも彼の眼前に立ちはだかる。
「ちょ、ちょっと! 安静にしてなきゃ! 救急車呼ばないと……」
大人しくしているよう九十九に伝えると、小型の奇妙なアンテナを取り付けたボタン付きの“何か”を袖から滑らせて手に取った。
「んなもんここに来るかよ。ところで、そこの原付……ルゥナのか?」
九十九はルゥナの背後に停めてある、ブラウン装甲の原付スクーターに物欲しそうな眼差しを向けた。
「え、えぇ。そうだけど」
「いい原付に乗ってるな。すぐ返すから借してくれないか。待ってる間は潰れた喫茶店の裏手に俺の事務所があるから、そこでジュリアと待っててくれ。これ、鍵な」
ポケットから取り出した菱形の鍵をルゥナに見せる。
「そんなの駄目に決まってるじゃない! どこか近くの診療所か病院で診てもらわないと!」
「平気だって……ぐっ! 肝臓が今になって……これが無ければ、大した距離じゃないのに……どうしてこんな今頃っ! ぐぉ……おっ」
唐突に右の脇腹を押さえて苦しみだす九十九。
「うぅ……ちゃんと返してね……」
「オッケー」
ぱぁっと清々しい笑顔でグッドサインを送る九十九。
痛いところを突かれたルゥナは、やむなく袖の中からキーを取り出すと、涙目になりながら九十九と鍵を交換した。
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