ダーク帝国将軍デォール

  さて再び話は変わりますが、ここは惑星マーズです。

 イスレアやモルぺスもいるアジア台地である。その台地の北西部の奥の奥である1000m級の高い峰々に囲まれた渓谷地でもある。

 イスレア達の住む南の島からでは台地の南側端と北側端の位置となる。台地の端と端、相当に離れた所だ。そこにおぞましい姿をした獣人達が幾世代もかけて増殖していた。そして周辺地域の部族達を侵略し獣人の一大王国が出来上がっていた。今や獣人達が統治する地域は拡大の一歩をたどっていた。


 大型の獣人デォールの背で縦横10mはあろうかと思われる大きな鉄扉は閉じかけていた「ギィー、ズズーッ」、「ガシャン」最後の閉音を聞いてデォールは安堵の表情を浮かべた。

 鉄扉は小山ほどの大きな岩が左右より迫っている左右の岩の間を塞いでいたその鉄扉の奥は円形に広がり広大な岩石広場となっていた。

 その広場を進むと突き当りに半円形の岩石台座が7~8段の階段を彫りこんで鎮座していた台座はちょっとした野球場位の広さである。

 ダーク帝国の城、岩石の「ダーク城」である。


 ダーク城は一山が全て凹凸のついた強大な岩石の集合体よりでできていた、高さ数百m、四方数キロの岩山群はいたるところで大小の割れ、深い窪みをつけており所どころから巨大な岩石を洗うかのように染み出した湧水が白濁の水しぶきを撒き散らし落下していた。。

 岩山の前方は、鉄扉の奥の大広間とその上にあるベランダのように突き出た岩の塊を持つ階層でその階層が2層、3層、4層と続いていた。

 その岩の塊の階層の奥は全て小さな洞窟の広間となっている。2階から4階の全ての階層には5~6m間隔でオオトカゲの身体にコウモリの翼を持った凶暴な面相をしたドラゴン像がいまにも飛びかからんとするような別個な姿態で各々が立ち並び、奇怪な岩石城の様相を呈していた。

 岩山の後方は、ゴキブリを逆さにして寝せた時のバタつくゴキブリの足のようにとがった岩が何本も何本も天に向かい伸びていた。その上部には薄暗ヤミの霧が一面を覆っていて最上部を見極めることは出来ない。

 ただ時折、薄暗ヤミの霧の合間を稲妻の閃光がはしり時としてその稲妻は霧一面をスクリーンにし両目を吊り上げ、口は両耳元に向い大きく裂けあがり、数対の牙を持つ、悪魔の顔を浮かび上がらせていた。目も裂けあがった口も牙もピカリとひかり輝く稲妻の閃光である。


 「グー、ゴゴー・・・スゥー・・・スゥー」・・・「スゥー、スゥーー」

 ダーク帝王のいびきがダーク城より聞こえ始めた、数100m四方にまで響きそうな大きなイビキだ。

 デォールは再び安堵した。ダーク帝王が深い眠りに陥ったのだ、ダーク城に仕える全ての者達も皆安堵した。

 ダーク帝王の真の姿を見た者は誰もいない。

 ダーク帝王は、空一面に稲妻が作り上げているあの悪魔の顔そのものである。

 大広間の奥の薄暗い洞窟の奥より、黒い霧と化した悪魔の顔は流れいで広間に 

 鎮座するデォール達をなめるように頬に、耳元に、瞼にそして全身へ舐め這い 

 ずり廻り広場に鎮座する者達の間をゴーっと通り過ぎる。

 同時に怒号がゆっくりと響く、恐ろしいダーク帝王の指示の咆哮である。

 黒い霧が通りすぎる間、ビリ、ビリとした電気が鎮座する全ての者達に叩きつけ

 られ、ある時は強くある時は弱く弱小の者はそのまま意識をなくしふたたび起き

 上がることはなかった。

 ダーク城大広間にて行われた恐怖の帝国会議はほぼ一日を費やしアジア台地全体における各地の戦況をダーク帝王に報告終了した。

 ダーク帝国軍の戦果はすばらしいものであり、今やアジア台地のほぼ過半を占領し統治権の及ぶ範囲を拡大しつつあった。ダーク帝王は、すこぶる機嫌が良く鎮座する全ての者がなんの咎めも受けることはなかった。



 デォールは威厳を正し、背筋をピシンと伸ばし馬の背腹を蹴った。

馬はゆっくりと歩みはじめダーク城を後にする。ギリギリ、ギシ、地面には多くの削岩が敷き詰めらてている。

 馬が一歩踏み出すごとにギリギリ、ギシとなっている。馬は大きい、華奢きゃしゃなな細目の馬じぁない、肩の肉が盛り上がった熊のような荷運び駄馬の大きい馬である。鼻先と額にかけて装飾された銀面を覆った将軍の馬であった。

 その馬に跨るのはダーク帝国将軍である。「デォール」と呼ぶ。


 背丈は2m近く顔は、左目端の上部から右の口元にかけ大きな盛り上がったギザ、ギザの肉塊が1本斜めに走っている。その肉塊を境に左右では顔色が違う右は赤黒くどす黒い、左側は緑だ、どす黒い黒色がかった緑である。

 そして目の上の眉毛部分は異様に盛り上がっているその下にはつりあがった大きな目が真っ赤な瞳を備え見据えている。

 鼻は野獣の鼻ように突き出しており両目に向かい無数のしわが這っている。

口は両耳に向かい大きく裂けており大きな牙が2本突き出していた。

 悪魔の顔というより野獣の顔をした鬼の形相である。

胸板の異様な厚みや盛り上がりをさらに引き立たせるような黒の甲冑つけ、その腰元には両刃の大きな平刀を携えている。


 将軍デォールの歩先の前方には、10騎程の馬と騎士達が左右に分かれ不動の姿勢で将軍を待ち受けていた。いずれも黒の甲冑に身を固め腰には大きな平刀を携え背には弓を掛けている。

 風貌は奇天烈である、人体の上にオオトカゲの頭が乗った半獣半人である。

皆全身は黒褐色であるが頭部は黒色がかった赤色、緑色、青色とまちまちの獣人の騎士達であった。

 獣人達は、不動の姿勢で将軍デォールを待ち受け将軍が通りすぎると順次馬上の騎士となり左右5騎の隊列を維持し後追いの歩を進めた。


 「アニキ!」、将軍の右の耳もとで小さな獣人が伸びあがりカン高い声を張りあげた小獣レッドである。

 手の平大の大きさの赤黒い顔は、まるで将軍の顔の縮小版である腰から下は将軍の右肩の後方に入り込み同化している。

 肩から上半身だけが生えだしているのである。

将軍の左肩には、どす黒い緑色の獣体がやけにか細く関節だけが異様に大きい腕を盛んに動かし、干からびたミミズのような物を口に運んでいる。小獣グリーンである。

 ダーク将軍デォールは見るにおぞましい3つの頭をもつ3頭身の獣人であった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る