デンスケの値踏み大会
大きな削岩の廻りに戻ってきたデンスケは、すぐあの青白い洞穴から持ち帰った戦利品の値踏みを始めた。あの青白い洞穴では薄暗くじっくり見ることも出来なかったし、身に迫る危険を察知しなくなり急に元気にもなったし雄弁にもなりリーダシップも発揮しだした。
自分の持って来た手の甲に金のグリグリのついた手袋をはめてみた。
手袋は手の第一関節までしかない手の指先の出る手袋だった。ハカセの手袋も手の指先の出る手袋だったそして手の平部分には金の渦巻き状の突起が何重にも付いていたハカセの手袋も同様だった。
デンスケは、ハカセの持っている手袋も取りださせ両方を並べて大きな削岩の上に置いた。
「これ、何んなんだ!俺のはメリケンサックみていだしな・・・どうだい!」
(メリケンサックとは、拳をカバーする為にこぶしの所に金属制のイボイボ金具の付いた手にはめる武器である)
手袋をはめパンチを2~3回繰り出した。
「だけど、手の平のこの金の渦巻きがわかないよな~これ金属みたいだけど曲げると柔らかいんだ」
「ほれ、ほれ」とデンスケが何回も手の平を曲げ伸ばしした。
「ハカセのもそうか!」ハカセも手袋をはめ何回か手の平を曲げ伸ばししたが,本当に柔らかく曲がった。
しかし手の平を伸ばして、金の渦巻き状の突起に触れるとそれは金属のように硬かった、本当に不思議であった。
デンスケは、今度はスエヒロのパチンコの値踏みを始めた。
これは本物のパチンコだと言っていたスエヒロのパチンコである。村の駄菓子屋で売っているパチンコは、丸パイプのY字の土台に細い丸ゴムを取り付けた簡単な物だった小学生の高学年用だ中学生になると自分で作った。
手頃のY字の木の枝を切り出し、持ち手グリップの所にカラーのセロテープを何重にも巻き付け太い丸ゴムを取り付ける。飛距離も駄菓子屋パチンコより数段に飛んだ、グリップの所のカラーの色合とY字の枝の所がパチンコを引いた時、手前への曲がり具合がパチンコ作成のコツだ。
デンスケはこのパチンコづくりには人一倍うるさかった。 そのデンスケがスエヒロのパチンコを見て先から「う~ん」と唸りぱなしだ。
「これすげえ、グリップは黄金色の金具だよ、あれじゃないよ、真鋳、銅じゃない!」
スエヒロは真剣にデンスケの手元を見つめている。
デンスケの言うことが嬉しくて嬉しくて仕方ないようだ。
「Y字も先がまっすぐ手元に5cmは曲がっているなあ~これは狙いをつけやすいぞ」
「命中率いいぞ」
2~3度パチンコを引いてみて
「これ、ゴムじゃないな?」
「なんだかわかんねえがすごく引きやすいし強そうだ」
しきりに感心する。
スエヒロは取られるのではないかと思い、
「返して、返してデンちゃん」とデンスケにすがりついた。
「待て、ちょと待てスエヒロそこの小石取ってみろ」
スエヒロの渡した小石をパチンコに挟むとデンスケはピョイとパチンコを飛ばした。パチンコから飛び出た小石は軽く洞窟を出て前に広がる河原を飛び越え波立つ急流に飛び込んだ、その飛距離は楽に20mは超えた。
「これ!すごえ飛ぶな!スゲエよ」デンスケは感嘆した。
その手からスエヒロがパチンコを素早く奪い取った。
サチは、手袋やパチンコには興味がなかった持ち返った赤いコウモリ傘を開こうとしていた。
どの傘にもついている、傘の柄の先の開き止めの三角の突起を何度も何度も押し込んだが傘は開かない、おかしい、おかしいと三角の突起を押しながら傘の骨の集約部分を押し上げようとするが傘は開かない。
「うわー!、開いた!」
サチのスットンキョウな声にみんなが驚いてサチを見た。
サチは、開いた赤いコウモリ傘を頭上に掲げ今にも倒れそうなくらい後ろにのけぞっていた。
「何だよ!開いて何かおかしいのかよ」
デンスケが傍まで行きサチの赤いコウモリ傘をすばやくもぎ取った。
「デンちゃん、その傘の柄の所に突き出ている緑のボタン押してみ」
「早く、早く押してみ」
サチが柄の先に突き出た緑のボタンを指指す。
「それ、押したら傘がいきなりバァーっと開いたんだよ!」
「傘閉じて、緑のボタン押してみデンちゃん」
デンスケが傘を閉じようとしたが傘が閉じなかった。
「あれ!おかしい閉じないな・・・」
ゼンサクは何度か閉じようと試みたが少しは閉じかけるが、すごい抵抗がありまたバァーと開いてしまう、閉じない。
サチが
「じゃ、そのままその緑のボタン押してみたら・・・」
「おお・・・」
今度はデンスケが思わず唸り声を上げ、持っていた傘を投げ出し両手を突き上げ尻餅をつかんばかりにのけ反りピョコンと立ち上がる。
赤いコウモリ傘はしっかりと閉じられ一本の赤い棒傘になり宙を舞った。
「何やってんだよ!デンスケ」(笑)、(笑)
「もう!デンちゃんたら・・・」(笑)、(笑)
その滑稽な姿に思わずみんなはふき出してしまった。
柄の先の緑の突き出たボタンを押したらバターンと傘は閉じたのであった。
サチの赤いコウモリ傘は自動で開閉する傘だったのである。オウジ、ハカセ、スエヒロも何度かサチの赤いコウモリの開け閉じをした。
みんなは凄く感嘆していた・・・ハカセが誰に話すでなく話だした。
「これ、町にもないコウモリだよ、自動で開け閉じするんだもの」
「何かの発明品かも知れないよ」
「自動開け閉じのコウモリなら特許とれるよ。手袋なんかもグリグリ手の甲の突起は普通だけど、手の平の金の渦巻きは伸びた時は金属みたいで硬い、曲げるとゴムみたいに柔らかい凄いもので出来てるよ。スエちゃんのパチンコだって、伸び縮みの所なんかゴムでもないし繊維でもないし金属のような光沢もあるし・・・凄い素材だよ!」
「僕思うけど、これは一風変わった発明好きのおじさんみたいな人が作ってあそこに隠しておいた発明品じゃない!」
「前住んでいた町に居たんだ、髪をぼさぼさに伸ばした一人暮らしの変わったおじさんだけど、町のみんなから発明おじさんと呼ばれていた。みんなから変人扱いされていたけどあの塵取り、ほら置くと塵取りの蓋が開き、持ち上げると塵取りの蓋が自然に閉じるあの塵取りさ、あれなんか偏屈おじさんが発明したらしいんだ」
デンスケは、特許ということは理解出来なかったわからなかったけど後はなんとなくわかったその通りかなと思った。
「それじゃ、オウちゃんの真鋳筒カンもなんかの発明がされているのか?ハカセ」
興味津々にデンスケが身を乗り出した。オウジは腰の後に差し込んでいた1m位の真鋳筒を取りだし上げたり下げたりしてまた筒の穴の中を良く見るが何の変哲もない。
「何も変わったとこ無いな!」、「まさかこれじゃないよな!」
オウジは筒カンを左右に引っ張る、筒カンは中央部分より左右にズズーと伸び、1mの筒カンがオウジの背丈位まで伸びた。
「それは、普通だよね」とハカセ。
「じゃ、これか」
オウジが筒カンを削岩に向け2~3度打ち付けるそしてみんなの前へ差し出す、かすかにウィ~ンとウィ~ンと筒先から響く。
「これは、共鳴だ!音響だよ!、小学2~3年の頃これと似た筒カンを校庭で拾って、バン、バン打ち、破壊光線が出るぞ出るぞと遊んだ、いつのまにかその筒カン無くなったけどなぜだか覚えているんだよなあ、まあーこれじゃないよな!」
「うん、音響や共鳴はあることだしこれじゃないよ」
またハカセはわからない言葉使うと苛立つゼンサクであった。
「じゃ、このペンダント型紋章か!」
オウジは、筒カンの端の開いた穴に通っていたシルバーの鎖の継ぎ目を捩じった継ぎ目はオスメス型ねじで回すと簡単に鎖は外れた。
鎖を外した時オウジはオス型のネジ山が一瞬青白い光を発したような気がした、錯覚だった、普通の鉛色のネジ山だった。
紋章型ペンダントは丸いワッカでしっかりとシルバーの鎖に固定されていた、づっしりとした重さである。
ペンダントはマッチ箱大で裏面は黒檀のようにスベスベで黒かった金属であることは確かだがなんであるかはわからない、表面は黒檀色の上に竜の画ガラが彫り込んだというより盛り上がっていた。
竜は大きな口を開け正面を向いていた。左右に伸び上がった髭と真っ赤な目、下方に伸びた鍵爪の大きくついた両脚、竜は赤い目を除き全て金色の黄金色であった。
みんなは上に下に、裏に表にペンダントをひっくり返すオウジの手先を夢中で追っていたがしかしこれといった変わったことを探すことは出来なかった。
「これは、高価な物には違いないけどなんか特殊なものではないよね!」
このハカセの一言でオウジはペンダントから手を放したし、みんなもこの値踏み大会を終了させた。
「さあ~そろそろ帰るようか」
オウジは筒カンを腰の後ろに差し込み外したペンダント型紋章を見て、さて!どうするか迷ったが鎖を首にかけ繋ぎ目を首前にまわしそして継ぎ目のオスネジをしっかりとまわし込み最後に鎖につながれた紋章型ペンダントを胸の前にグイと引き下げた。
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