五つの神具
・・・蒼の世界となっている・・・
広間の奥の一段高い所には、勉強机位の大きさの祠(鳥居の無い神社を小さくしたような)が祭られており青白く光り輝くコケに覆われていた。
広間の中央部分の岩底にも30~40cm位の高さのコケが張り付いた、こちらも青白く光り輝く石棺のような物が置かれてた。
宙に浮くオウジは、青白い光が暗闇のように迫ってくる閉塞感に襲われどうもここは好きになれない所だった落ち着かなかった。
オウジ達一向がツル~ンとした岩底の滑りに気をつけながらおそるおそるやってきた。デンスケを先頭に青白く光り輝く広間に足を踏み入れた。
「オー、スゲエ!、何だこれ!」
「オー、オー、青の空間だ!」
「青い霧だね!」
「緑色もあるよ!」
「すごいきれいだね、見たことないよこんなとこ、すごいすごい!」
後ろに隠れてついてきたスエヒロなんか青の広間に足を踏み入れるや皆の前に踊りだしはしゃぎだす始末だ。
一向が広間に足を踏み入れたので岩底に溜まった水溜まりの水がハネ、ピシャ、ピシャと揺れた。反射していた天井の青白い光や金緑色の光が広間内をオーロラのように揺れ流れる。
壁の上部から天井にかけてのオーロラの揺れは特に幻想的だった。
一向は、ボーゼンとその場に立ちすくみ左右の壁に目を移しまた上を見たり岩底を見たりしてそして最後にまた天井のオーロラをしばらく見つめた。
「すごくきれいね、あれはエメラルド色ね!揺れているよ!」とサチ
「デンちゃん、蛍の洞窟だね!蛍の家もあるよ、ほらあそこに!」
「ああ!あれかあれは祠だな」
「スエヒロ、あれだなあの祠だな!あれは蛍の家だな、そうだよ蛍の家だよスエヒロの言うとうりだよ!」と頷き、デンスケはスエヒロの肩を叩いた。
スエヒロはえらい嬉しそうだった。
ハカセやサチ、オウジは奥の
3人は、石棺らしき物のそばまで来て廻りをまわりマジ、マジと見つめた、コケが張り付き青白く光輝いているがやはり石を組み合わせた長さが1、5mちょっとの石棺であった。
「何がはいっているの?」
ハカセの後ろから首だけ出したサチ、
「う~ん、この大きさだろ、祭事に使う農具かな?祠もあるしそれともーー」
ハカセは言いよどんだ。
サチは、もともと頭も良いが中学1年生ながら常に兄達グループといる機会や話す機会が多いのでデンスケなんかより機転も利くし彼らの意図を見抜くもの早い。
「まさか!棺桶!ミイラとかそんなこと言わないでよね!」
苦笑するハカセを見てサチは2~3歩後退した。
デンスケとスエヒロが話を聞いていたのかおそるおそるこちらに来る。
デンスケはもともと大変な臆病者である。不良グループの一員の為、常に見栄を張り威風堂々としていなければならずデンスケとしては大変やっかいな事であるが仕方ないことでもあった。
「あ! あれ3年の番格のデンスケさんだ!」、「カッコいいな~」
下級生達の憧れのマトがデンスケの理想だった多少の我慢は必要だった。
「なんだ!ハカセ、棺桶、ミイラ嘘だろう」
「こんな所にミイラはないだろう!」
デンスケは気味悪いことはなるべく早く打ち消そうとする。
「まあ~こんなに湿気の多い所だからミイラはないよ、ミイラは乾燥したとこじゃないと無理だから、だけど人骨が入っている可能性はあるよ」
ハカセは申し訳なさそうにに言った。
石棺の大きさや形状、石の腐食度、コケの付き方から見て、けっこうな年代を過ぎた
冗談じゃない、気味悪い、早く出よう、デンスケ、サチ、スエヒロは口には出さないがさらに1~2歩後ずさりをした。
「いや、小判が入っているかわかんねえよ!ほら石の蓋の隙間見てみ!青白く光っている。小判の光だな小判ザクザクだな大金もちだよ」
オウジはニヤニヤしながら言っている。これはオウちゃん開ける気だなとハカセは苦笑した。
「ちょつとデン、開けて見るか、そっちの端持って奥へ押すから!」
「う~ん、ちょっと待って」
デンスケは
人骨なんか出てきたら、見たくもない、
先ほどから怖くて怖くて仕方なかったのである。
だけどオウジグループ内では、デンスケはハカセより格上である序列が上である。ましてここにはサチやスエヒロもいる。
さすがに「ハカセお前が開けろよ」なんて言えなかった。
デンスケはしぶしぶ石棺に近づきオウジの持つ反対側の石棺の端を持った湿った手を刺すような光コケのザワ、ザワも気持ち悪かった。
二人は前かがみになり石棺の石の蓋を奥の方に押す、
「う~ん」、「ズゥーズ、ズゥー」、
ハカセ、サチ、スエヒロはちょっと後退し何が出るのか?期待と恐怖感を抱き、石棺を凝視していた。
何度目か!二人が
「う~ん、う~ん」
と踏ん張ったとき、石棺の蓋が少し大きく「ズゥー、ズゥー」っとずれた。
オウジとゼンサクが中を覗こうと顔を近づけたその時だ ,2個の物体が石棺の中央部から両端に向かい飛び出した。
それは、オウジ、デンスケの顔面をまさに掠めて飛び出した。
「うわー」、「おーおー」二人は大きな叫び声を上げ、
そのまま後ろに倒れピシャンと床の水滴をはじき!尻餅をついた。ハカセ、サチ、スエヒロも悲鳴を上げその場で固まり飛び下がった。
飛び出した物体は、ハカセ達の前をパシ、パシ、バシと駆け去り洞穴の壁のコケにへばり付いた。
壁のコケにへばり付いた物体は小さな二匹のヤモリであった。
ハカセが叫んだ。
「オウちゃん、ヤモリだよ、ヤモリああー驚いた」
「なんだ!ヤモリか、洞穴ヤモリか、びっくりしたなーもう」
オウジは照れ臭そうに立ち上がった尻餅をつくほど驚いて狼狽えたことが照れ臭かったのだろう。
それからは、オウジは今の狼狽えぶりをみんなの意識から消し去ろうとするかのように堂々とした手つきで石棺の蓋をずらしそして片側に押し出した。
石棺の中央には縫い目の濃い麻のような布が左右より折られ、ふんわりと掛けられていた紺とオレンジの縦縞の入った布である。その布をなんの躊躇もなくオウジは素早く剥がしていった。
(人骨が出ようが、なんだ!)
(河原に流れ着いて漂白された骨や骸骨となんら変わりない)
と自分に言い聞かせていたオウジの期待を裏切り、敷かれた布の下は人骨ではなかった。
一番ホッとしたのはデンスケであった。安堵の表情を浮かべハカセ達3人を手招いたハカセ達3人もホッとしたサチ、スエヒロは肩を上下させるほど大きホッとしていた。
布の下には、赤い色の柄の少し大きいコウモリ傘が1本、その上に手の
あっけない幕切れで一向は拍子が抜け唖然とした。
人骨ではなくて良いには良かったが、小判まではいかなくてもこれよりもっとマシな物が入っていてくれればと思ってしまう。
オウジ達はまだ気づいてないのだが、これよりもっとマシな物とバカにしているこの5つの物こそ神よりオウジ達に与えられた凄い威力を発揮する神具なのである。
今のオウジ達にとっては、この5つの物はただのガラクタ程度の物に過ぎないけれどいつか必ずその威力を目のあたりにし仰天するだろう。そしてこれから襲いかかるだろう幾多の危機をオウジ達は脱することになるのです。
しぶ、しぶデンスケが石棺に手を突っ込み、黄金のグりグり付き手袋ともう1対の手袋を出し左右見比べ黄金のぐりぐり付いた手袋を取り、もう一対の角型の細い突起のついた手袋をハカセに投げた。そして赤い傘をサチに手渡すと緑のベルトを持ち上げマジ、マジと眺め、
「スエヒロ、これパチンコだけっこう本物だ!」
「持つ所が金色だ!引く所もゴムじゃないぞ!大人が使うような本物だぞ!」
「どうだ、この俺の手袋と交換するか!」
ベルトをスエヒロに投げた。
「スエヒロ、これでイイ!これでイイ」
あわてて、スエヒロが腰にベルトを巻き付けていた。
オウジがゆっくりと石棺に手を入れ、残りの真鋳の筒カンを取り出した。
「オウちゃんそれは、なんなんだい!」
デンスケがオウジの取り出した筒カンを手に取りマジ、マジと眺め巻き付いていた細いシルバーの鎖をほどいていく。
「オウちゃん、なんか先に竜の画がついたペンダントが付いてるよ、これけっこう高い物じゃない!」
とオウジに手渡した。
手渡されたマッチ箱大の黒光する角型の物を裏に表にひっくり返したりして見ていたオウジは、そのペンダントを着ているシャツの袖で2~3回入念にこすり目前に掲げると、
「これは、紋章のデザインみたいだなヨーロッパの城の紋章をまねたやつだしかしけっこう良いものだよ」
「この竜の画は簡単に彫ったものじゃない」
「竜は盛り上がって出来ている。厚い金属板から凹凸をつけ削り出した物だよ、職人物だ、しかも竜は金色だ、いいんじゃないか」
ハカセ、サチ、スエヒロが集まって来ていた。みんなオウジの説明にもっともだ!と頷きながら少し分厚い黒光りする紋章を覗き見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます