洞窟の中の碧い洞穴
下のオウジ達一向が、うまい、うまいと塩気の効いた真っ赤に染まった川エビを口にはこんでいる頃。
宙に浮いたもう一人のオウジは、腹ばいから上向きに姿勢を変えた。
太陽の光が直接目に入るが眩しくは無かった、光は瞳の奥をスウッーと抜けた、川岸より吹く風もスウーと足を腹や背を、頭を脳の中までも、一本一本の毛先までも・・・体全体をスウッーと抜けていった。
大気に包まれている、大気に同化しているようだ、フワ、フワと浮遊している。
ものスゴイ気持よさと安堵感である。
思った!「俺は意識の浮遊体」だと。
あまりの心地よさにウト、ウトしたオウジは、いきなり引っ張られた、頭頂部から手を入れられ脳ミソをワシつかみにされググーッとを引っ張られ、腰から上の部分が腹のあたりで細くなり伸びてしまった感じだ。オウジ達一向は今まさに洞窟に入って行こうとしていた。オウジは慌てて上え向きからまた腹ばいに姿勢を変えた。
「アアー、洞窟崩れちゃつた!」
「大変だ奥崩れちゃつってる」
一番先に洞窟に駆け込んだスエヒロはスットンキョウな叫び声をあげた。
デンスケがすぐ駆けつけた.
「あー、これはすげえ!ひどいな!スエヒロの秘密基地も終わりか!」
スエヒロは今にも泣きだしそうな顔だ。
洞窟は奥の清水の湧き出している辺りの左側が崩れていた。泣き出しそうなスエヒロのたたずむ前あたりには崩れ落ちたらしい大きな削岩がゴロンと転がり、左側の天井は半円径にえぐれていた。
その下には大小の崩れた岩や小石砂利が積み木を崩したように洞窟の半分あたりまで埋めている。
ハカセが
「オウちゃんあの天井の岩がくずれ、その勢いでこの洞窟の壁の岩が崩れだしたんだなー」
オウジ、
「あれだけの地震だからな~あそこの岩と岩の間にギッシリハマリ込んでいた岩が地震で隙間ができたんだな~そして壁にハマリ込んで突き出ていた岩にぶっかりながらド~ンと落ちたんだろう」
「お~い!デンスケ大丈夫か!まだ崩れんじゃないか!」
デンスケが崩れ落ちた小石や砂利山をよじ登り、えぐれた天井の横辺りの少しえぐれてしまった壁の穴に手をかけ立ち上がり天井付近に目をやっていた。
「ウ~ン、天井はもう崩れそうないな後は一枚岩ミテイダ。壁はワカンナイ!ここにも岩が突き出てる、ここなんか砂利か割れた岩かセメントか?」
「ちょとオウチャン見てや!川原の石ころミテイなものまで岩の間に皆んな埋まっているぞ」
「何んだ、これ岩と石をセメントで固めたのか」
崩れた壁の際まで登ったオウジは、足元の欠片を拾い上げマジマジと見つめた、確かにこれは岩の破片ではないコンクリートの欠片である。誰かが岩や石を積み上げコンクリートで固めたのか?
「サッちゃん、スエちゃん、ここに居てよ危ないから!」
ハカセも崩れ落ちた岩をよじ登りオウジ達に合流した。
オウジやデンスケは皆坊主頭であったがハカセは長髪である、長髪にメガネなので結構似合っていたこれが坊主なら「ジャガイモメガネ」になってしまう。
中学校には長髪は後二人いたみんなお金持ちの坊ちゃん育ちだ、ハカセも親父が社長だからお金持ちの坊ちゃんだ。
ハカセがゼンサクの横に立ち天井を見上げた、スゥーとした空気の流れを感じた。長髪のハカセの髪をパサパサと揺らしたのであった。
あれ!~と不思議に感じたハカセは、空気の流れに向かい手を当てた・・・空気は崩れ落ちた洞窟の壁の砂利の間より洞窟内に向かい流れ出ていた。
(まさか!)
一種の興奮を抑えながらハカセは砂利の隙間に顔を近づけ隙間に指を突っ込んだ指は意外と簡単に奥にズーズゥーッと入った。
まわりの小石、砂利がバラ、バラ崩れ親指大の穴が簡単に開いた。穴からは冷たく湿った空気がいきなりフウーと流れ出てハカセの顔をなでた。
それからが大変だった。
興奮したデンちゃんが穴のまわりに埋め込まれた岩の欠片を次次とはずした。
「ハカセ、でっけい棒きれもってこいや!」
河原に打ち寄せられていた1m位の太い棒きれを穴に差し入れ、壁穴と棒の間に岩の欠片をはさみテコの原理でグイ、グイと穴をこじ開ける。
たちまち積み上げられた岩や石ころが崩れ砂利が散乱する、崩せる物は全て崩した、穴はけっこうな大きさで開いていた人ひとりがかがんで通り抜けられる大きさの穴であった。
奥は薄暗く湿った空気が漂っていた。穴が開いたので湿った空気が洞窟の内に向かいブワーっと吹き出たした。
「奥見えるか!」
「コウモリでもいるんじゃナイか!」
「鍾乳洞か!」
「入れるか!」、「危なくないか?」
「穴の廻りは一枚岩だ!穴を岩や石で塞いでいたんだ!」
「入っても大丈夫だな!」
「スエヒロも見たい!」
「アンちゃん、行っても大丈夫!」
「こりゃー、洞穴(ホラアナ)だ、洞窟の横に洞穴があったんだよ!」
「今まで全然わかんなかったよな・・・こんな洞穴あるなんて、大発見か」
みんな興奮していた、怖いもの見たさに皆顔だけは洞穴に突っ込み騒いでいたが足を踏み入れようとは誰もしなかった。
そのスキに、宙に浮いていたもう一人のオウジがスゥーと洞穴内に入ってしまった。
洞穴は人ひとりがかがんで通り抜けられる、穴をぬけると意外と広かった。幅は2m位人二人が並んで通れそうだ、高さは何とか屈まず歩けそうだ。
天井、岩底もツル、ツルした岩石だ壁には人口的に削り込んだ跡、深い縦溝が所どころにあった。
天井からは清水が所々染み出している、岩底を濡らしていた典型的な洞穴だとオウジは思った。
天井から染み出す水滴がポタ~ンと宙に浮いたオウジの体を抜けた。
火つけ用に持ってきたであろうか新聞紙を、グルグル巻いて固めその先に火をつけて下のオウジ達一向がようやく洞穴に入り込んできた。
「大丈夫だ!ガスは無いみたいだ!」
火のついた新聞紙を前に差し出しながら一向は恐る恐ると洞穴内を進んでいる。サチとスエヒロは左右の壁の凹凸に体が触れそうになると
「キャー」、「ワァー」
と騒いでふらつきデンスケやハカセに支えられた。
サチもスエヒロも壁の割れ目には、真っ赤な腹のムカデや巨大なコオロギが潜んでいると思ったからだ。
岩の割れ目からつ~んと出た巨大コオロギの触覚が動き、二人の肌をソワ、ソワと撫でそうで気持ち悪くて気持ち悪くて仕方がなかったのである。
一向がしばらく進むと奥の方がボォーっと青白く光り輝いてた。
「オウちゃんなんだあれ!光ってるな」
とデンスケ
「アレ!夜光虫か、光コケじゃないか、」
とハカセ、
「何だよ、虫やコケって光るのか!」
デンスケは、どうも気持ち悪い、コケや虫が光る、蛍の光じゃあんなにボォーと光るかとイライラする?
「あれと同じだ、ほれ!日暮れの雑木林から沼に向かって夕方よく人魂が飛ぶって言うだろう!」
「ああ~ムロイなんかが言ってるやつだろう」
「俺は見たこと無いよ・・・見たこと無い」デンスケは渋い顔をする。
「アレは本当なんだ、人魂は飛ぶんだ!」
「え!アンちゃん本当なの」
人魂と聞き、サチが気味悪そうにオウジを見てデンスケとハカセの間に入り込んでしまった。スエヒロはしっかりとデンスケの袖にすがりついていた。
「だからさあ~あの人魂は違うんだ!あれは山鳥が林から沼に向かって夜飛ぶとき体についている夜光虫をバタ、バタと振り落としながら飛ぶんだ。遠くから見ると青白い光飛んでるようにしか見えない、人魂が飛んでいるよう見えるんだ」
「人魂なんか本当は無い!」
みんな大人の脅し話だとオウジは笑っていた、その通りだとハカセは思った。
そのころ、宙に浮いていたオウジは一足先に青白く光り輝く奥へと浮遊して行った。
奥は、急にポッカリと円形の穴が大きく広がり洞穴の行き止まりとなっていた。大人7~8人が自由に動き回れる広さで、高さもここまでの洞穴の通路よりも頭三つ分は高くなっていた。
天井や壁にはいたる所で人口的に削り込んだ跡があった、人二人位しか通れないこの洞穴の行き止まり部分を削り広間をつくり上げたようだ。
天井、壁にはコケが密着し青白く、所々は
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