(第2部)大地震と童子達
ここはまだ惑星マーズである。神の国の最後の住民イスレアがその従者モルぺスに最後の仕事を頼んでいる頃、神の国を囲む峰々の内でも最も高い頂を持つ「イスレア山」が突然噴火した。
山頂の噴火口よりは、赤銅色の光線が幾筋も束になり天に向かい高く高く伸びた。その赤銅色の光線の束は、成層圏を突き抜けるや碧い光の一点に変貌を遂げ星雲輝く宇宙の彼方へと消え去ったのである。
・・・その碧い光の一点は惑星マーズからでは数百光年も離れた銀河系、その太陽系の惑星(地球)へと向かっていた・・・
それから数十年の時が流れた・・・
地球の東半球の片田舎が100年に一度起きるか起きないかくらいの大地震に見舞われるのであった。
これは運命の始まりでもあり、この物語の序章でもあった。
この物語の中心的な存在となる、神に選ばれし運命にある童子達が住む小寒村がこの大地震の巻き添えを受けたのである。
この大地震を境にして、この小寒村にすむ童子達5人の運命が人知では計り知れない程大きく大きく変わってゆくのであった。
その頃は、漸くテレビが各家庭に復旧しだした頃であるもちろん白黒テレビであるカラーテレビではない。
当然パソコンや
0000年9月11日・・・昼過ぎ・・・
北関東の一県を大地震が襲った地震は突然にきた。最初に大きな揺れが2~3分続きさらに数分を経て2次、3次、4次と揺れは続いた。
家の門や塀は外に内に崩れ散乱し、墓は墓石が積み木ように倒れ、裏山は赤いベロを出し崩落した、無残にも全半壊し土砂に埋もれた家屋。
地面、道路にも亀裂が走った。家では食器棚が一瞬浮き上がり扉は全開し、茶器、グラスが飛び出す。テーブル、椅子が飛びテレビ、冷蔵庫、箪笥が倒れかかる。グラ、グラと激しい横揺れが続き、最後に下からドーンと突き上げるような縦揺れが起きていた。
一瞬何が起こったかわからない者達は、2次3次と続く大揺れに「外に出ろ!」の叫び声で、我に返り皆家々を飛び出した。
「すげ~・・・地面が割れている!」
「ながい、ながい、すげえながい地震だ!」
いたる所でまわりの風景が一変し、電気、ガス、水道も止まった。
震度8、地震は運命の童子オウジ達の住む四方を山に囲まれた盆地の山戸村にも甚大な被害を及ぼしていた。特に裏山の崖の崩れは甚大であった。唯一の長距離交通手段である山田線もトンネルが崩壊し崖の傍の家屋を飲み込んだ、死者2名を出し、運行停止となる。交通手段を奪われた者達はガソリンスタンドに我先にと補給の列をつくっていた。
・・・オウジ・・・
オウジとは、中学3年生15歳、山戸村周辺の6つの村が集まって出来た六合村中学校「六合中」の悪ガキども5~6人の中心的存在であり、いわゆる不良グループの中心である。
いわゆる中学の悪ガキ共である。「世の中は自分達を中心にまわっている」位にしか捉えてないのだ、学園生活においては何でも自分達の思いどうりだ。言いたい放題言い合いやりたい放題やり、先生を00ヤンと呼び気兼ねもせず接し学生達からは00ちゃん00ちゃんと一目おかれ気をつかわれている、この世の春である。
その悪ガキ共が、考えも及ばぬ見知らぬ異次元に勝手に飛ばされてしまうのである。想像もつかぬ怪物達に遭遇させられ、剣を持って戦え、怪物達を殲滅しろ、そして死んだら元の世界に戻れない死ななくても怪物達を殲滅しなくては元の世界に戻れないなんて言われるハメになってしまう。
オウジは「怪物達を殲滅したら、本当に元の世界に戻れるのか」、「なにが神の意思だ」、「やつの言うことなんか何の保証もない」、「信じられない」、「信用したくもない」、しかし元の世界には必ずみんなを連れて無事に絶対戻ってやる。
オウジはそんな決死の決意を、夢か現実かもわからないこの世界でこれからずっと胸にしまい込むことになるのである。
そして運命の日、大地震の9月11日、オウジ達は山栗、山に自生する親指の先位粒大の甘い栗だがそれを取りに日暮れ山に来ていたのである。
そのとき、日暮れ山の山頂は山肌が左右に5mも振られるように揺れた地面が割れだすような恐怖に襲われると同時にドスンと地は落ちた、陥没した。
1m四方ではあるがその穴はオウジ達のすぐ近くにぽっこり開いた。この揺れの中次々に穴は開き、オウジ達に襲い掛かる恐怖にかられ,オウジの弟スエヒロ9歳はオウジの同級生デンスケにすがりつき泣き出した。オウジの妹13歳サチはブナの根元にしっかりとすがりついた。
ハカセ、オウジの同級生はオウジと相撲を取るかのように組合い同時に窪みに転げ落ちた。土埃の中皆一瞬光を失い薄暗闇に投げ出された。
揺れは2次、3次と続いていた揺れの収まりを見極めるようにオウジ達はこの山からの脱出をはかった。
スエヒロを背負ったオウジが最後のシンガリをつとめデンスケを先頭に、ハカセ、サチの順で尾根沿いの小道を岩肌の迫った岩道を時には大股で飛ぶように跳ね、時にはパタパタと足をばたつかせスピードと滑りを止めながら駆け下りていった。山頂からは小石がパタ、パタと崩れ落ちていた。ガラ、ガラ、ドシン、地が割れ岩が崩れ落ちる。
地面の揺れる音、地震の咆哮「ゴ-、シャ-ゴ-」・・・木々のぶつかる音、葉のざわめき、飛び跳ねる靴音「パ~ン、パタパタ」
駆け降りる皆の背にその音はへばりつき追いかける。
ガシャン、ゴロゴロひときわ大きい音が皆の背を押した。
「止まれ、危ねえ!」・・・「こっち、こっちだ」
オウジはスエヒロを横抱きにかかえ大木の根元に転がり込む、振り向きざまにデンスケ、ハカセ、サチも転がり込んだ。
その4~5メートル先を一抱えもありそうな大岩がツタが絡む小木をなぎ倒しながら下方に転がり落ちていった。
目前を背丈程のある大岩がゴロン、ゴロンと回転する、映画のワンシーンようであった。5人は暫く大木の根元を動くことが出来なかった。
まだ大岩の撒き散らした土埃がモウ、モウ吹き荒れている。オウジは辺りを見回した、デンスケがじっとこちらを見つめていた「オウちゃんどうする」と言うかのようだ!
「あそこにでっけい根元があるだろ!その先にもでっけい木がある、いいか、根元から根元づたいに行くからな、途中でゴロっとしたら近くの根元にすぐに転がり込むんだ、いいな!」
「いつまでもここにいられないからな!」
「デンスケ、行くぞ!」
オウジはさけんだ!
4人は「ウン、ウン」と頷いたが、その瞳はこれ以上は開かないほど大きく見開かれていた。
山頂からのガラ、ゴロを遠い音か近い音か聞き分けながら大木の根元の間をうねるように這い伝いまたは駆け5人は山腹を降りていく。
日暮れ山の岩滝と呼ばれる所、丁度山の中間あたりまで這い降りてくると岩滝の左側斜面から焦げ臭がただよいスス煙も山頂に向かい漂っていた。
山肌の木々の間を5~6本の赤い筋がなめるようにが燃え上がってきていた。そこではセイジとシロウがチリチリと焼けた頭に煙を残し、鼻穴にススを詰め呆然と立ち尽くしていた。オウジの一学年下のオチョコチョィのバカ共だ!
「お前ら、なんでこんなところにいるんだ!」
「何してんだ、火つけたな、このバカ!早く来い、ほらバカ来い!」
「駆け下りろ!」
オウジは腕を大きく振った。
デンスケ、ハカセ、サチ達も、
「バカ早く来い!」「危ないぞ、早く」「気をつけて、」
口ぐちに叫んだ。
セイジはススと涙に縁どられた顔をグシャ、グシャにこすりながらそれでも安堵した表情をうかべ、ハァ~、ハァ~と小刻みに肩を上下させ、
「くっ、くっ栗を焼いていたら、ド~ンと揺れて下まで転げちゃつてシロウも転げちゃつて慌てて起こしに行ったらもう火が、横に燃え上がってーーー」
ハァ、ハァ!--
「消そうとしたんだけど、消そうとしたんだ」
火は山肌の下草のほとんどを食いつくしたのか、処どころでチョロ、チョロと帯になり燃えてはいるが下火になっていた。もうこれ以上燃えさかることはない、まして立ち木にまで燃え移るようなことはないと思われた。
翌日から中学は休校になった.。
日暮れ山の麓には町に通じる道路が1本走っていたがその道路には5~6mはあるかの大岩が転がり出、道路の中央を塞いだらしい。
また何個かの小さい岩はその道路をゴロン、ゴロンと通りすぎその下の崖した10m位も下方の河原に転がり落ちていった。
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