ヒノヒカリ

ひのひかり。

とわのひかり。


「だいたいそもそもこの世に永遠なんてものは存在しないわけでだな」

嘲るように呟く彼の言い分は尤もだと私は思う。もし永遠なるものが存在するならば、とうの昔に死という概念はこの世から消え失せているだろう。いやむしろ、そもそも存在すらしなかっただろう。


命あるモノはいずれ必ず死に絶え、

形あるモノはやがて必ず朽ち果てる。


「それだったらどうして人は永遠を望むのかしら」

永久の命。永久の愛。そういうものを、人はあまねく望んでいる。叶わぬ夢であるにも関わらず、いつの世も人はそれを望み続ける。

不老不死の妙薬。賢者の石。再生医療。テロメア。

時代を超えても、手を変え品を変え、永遠を望み続けるのだ。人というものは。


陽の光。

消えることのない光。


「得られないからこそ、欲しがるんだろう」

また、模範解答が届いた。彼の言葉はあまりにも正論だった。

簡単に得られるのならば、こんなに熱心に求めることもないだろう。手が届かないからこそ、人は熱望する。不可能を可能にすることを夢見る。

“余の辞書に不可能の文字はない”と語った皇帝でさえ、すべてを可能にすることはまかりならなかった。不滅の生命を持つと噂された伯爵でさえ、どこかで息絶えている。


決して得られぬものなのだ、永遠というものは。

そして、だからこそ、渇望してやまぬものなのだ。


「そうして無駄に足掻くというわけね。決して得られぬ幻を求めて」

ありもしない幻想が瞼に浮かぶ。人はそれぞれの永遠を望んで、必死に手を伸ばす。届きもしない、届くはずのないモノに向かって。

存在しえない、だが表現されるが故に存在するとみなされている概念に向かって。

「いや、無駄とは限らないさ」

「どうしてそう思うの?」

唐突に彼がそんな風に言うから、私は不思議に思って問い返す。幻を追い求めることが、無駄ではないというのは。

「少なくとも、俺たちの生きている範囲では永遠と呼べるものがあるだろう。例えば」

今ここに降り注ぐ、眩い陽光のように。


ヒノヒカリ。

セツナノトモシビ。

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