百年の恋、咲く

西の国アザロフから葆へと輿入れしたリーリュア。
しかし、恋い焦がれた苑輝から、結婚を拒まれてしまいます。
何度拒まれても、冷たい仕打ちに遭っても、一心に恋を貫くとってもとってもとってもかわいいお話です!

ファンタジーというと、さまざまな能力を持つ人たちが、その能力を生かして活躍する物語が多いと思います。
しかし、この物語の主人公リーリュアは、王族に生まれたという以外、これと言った能力はありません。
治安も安定した世界で、政略結婚の意味さえない葆にやってきたのは、ただ苑輝が好きという気持ちだけ。
それがいい!

ファンタジーでは感情もファンタジーになりがちですが、リーリュアにしても苑輝にしても、その周囲を取り巻く人々にしても、感情が非常に身近で、丁寧に描かれています。

苑輝は三十代半ば、その治世も十年を越え、自分の背負うものの重さも、自身の老いや死も見えてくる年齢です。
真っ直ぐに向けられた好意も、かんたんに受け入れることはできません。
「絶対に幸せにする」「誰にも渡さない」そんな言葉を言えないことこそが、大きな愛情です。

そこに立ち向かうリーリュアの武器は、ひたすらな恋心だけ。
命を狙うほど異国の姫を毛嫌いする声があっても、自分ではふさわしくないと落ち込むことがあっても、「身を引く」ことだけはしません。
それでいい!
恋に謙虚さなんていらない!
いろいろあっても「だって好きなんだもん」という姿勢を決して崩さないリーリュアが、私は大好きです!!

恋に落ちて、少しずつ少しずつ理解を深めて、心を通わせていく。
利害も特殊能力も何もない。
恋愛小説の醍醐味って、これでしょう?

何でも手に入る大国の皇帝が、妻に最初に贈ったもののロマンチックさに目眩がします……