第四話

 獣道を通って城の裏山を登っていくと、見晴らしのいい場所に出る。秋が深まってきた山の空気は、きりりと澄んで心地好い。小さな胸いっぱいに吸いこむと、心の中のもやが晴れていくような気がした。


 城下で起こしたひと悶着は、当然父母の耳にも入った。あのあとすぐに、城から飛んできた迎えに連れ戻されて以降、リーリュアは街への外出を禁じられている。

 城内では常にだれかの目がついて回り、息苦しいことこの上ない。馴染みの門衛にどれほどお願いしても通してはもらえない。

 下がダメなら上がある。リーリュアは見張りの目を盗み、山肌に造られた城の裏手にひろがる森に繰り出したのだ。 


 青空に向かい思いきり伸びをしていると、人の声と枯れ葉を踏む音が聞こえてくる。

 もう誰かが探しに来たのかもしれない。リーリュアはあと少しの間解放感を満喫したくて、隠れる場所を探す。

 目に付いた枝ぶりのいい木によじ登り、常緑の葉陰に身を潜めて息を殺した。


『本当だ! ここから王都全体が見渡せるんですね。明後日には出発でしたっけ?』

『ああ。一度宮処みやこに戻り、父上にご報告申し上げなくては』


 やってきたのは、葆の皇太子苑輝えんきと通訳の少年剛燕ごうえんだ。リーリュアは、出してもいない声を飲み込むように口を手で塞ぐ。

 ちらりと剛燕がこちらに視線を向けたように感じたが、またあるじへと戻した。

 先日のような戦衣ではなく、苑輝は全体的にゆったりとした服装をしている。広く開いた袖口も胸を包むように重ねるえりも、この国の装束とはまったく異なるものだ。

 剛燕が手にしていた香炉を地に置き、香を焚きはじめた。細い煙とともに、山の空気とはまた違う清涼な香りが昇っていく。

 その行方を追って空を見あげていた苑輝の手には、紙の束がある。彼の手のひらよりも大きなそれらも一枚一枚、銀の皿の上で燃やす。淡々とべられてゆく墨文字のある紙は、あっという間に橙の炎に包まれ真っ白な灰と化し、そこから立つ煙もまた、天へと向かっていった。

 最後の一筋が蒼天に吸い込まれていくのを見送りながら、苑輝は静かに目を閉じる。

 永い永い沈黙は、鳥の羽音で終わりを告げた。

 待ちかねたように、剛燕が口を開く。


『いくら西からたんまり身代金をふんだくるつもりだとはいえ、あんな生ぬるい条件でいいんですか?』

『この国最大にして唯一ともいえる価値は、立地そのもの。西への道さえ確保すれば十分だろう』

『まあ、ほかにはぐらいしか採れるものもなさそうですからね』


 剛燕が周囲を見回す。平地の少ないアザロフでは、農作物の生産量などたかがしれている。無理な取り立てが反発を呼び、西側の国と手を結ぼうとする可能性がないという保証はなかった。


『けど姫君の件は、陛下がお怒りになられるのでは?』

『私がまたお叱りを受ければ済むこと。どんなに愚鈍と罵られたところで、本当のことだ。痛くも痒くもない』

『苑輝さま……』

『もし気に入らないなら、廃太子でも死罪でも好きになさればいい。後任が直系ではなくなるだけだ』


 リーリュアには話している内容がまったくもってわからない。だが、あの皇太子の浮かべた笑みは、とても辛く寂しそうだ。広場でも、あの瞳に同じ色を浮かべていた気がする。

 会話が理解できないなりに、なにかを見て取ることはできないか。枝から身を乗り出す。葉が揺れ、合間から桃色の衣が見え隠れしていることに、リーリュアは気づかない。


『ところで、あそこの仔リスはどうしましょう』


 ふいに二組の双眸が、リーリュアの隠れる木に向けられた。

 どくんと胸が跳ね、その大きさに驚いて片足が滑った。


「あっ!」


 数枚の木の葉とともに靴が片方脱げ落ち、声が漏れる。口を塞ぎたくても、両腕は必死で幹にしがみついているので無理だ。

 木の真下までやってきて見上げる苑輝の目と、瞬きを忘れたリーリュアの瞳が合う。


『この国の姫君はずいぶんと自由らしい。――さあ、おいで』


 受け止めようとしているのか、リーリュアに向け両腕を大きく広げている。

 彼女が精一杯がんばって登った枝も、彼にとっては高く手を伸ばせば届くような位置だ。それでもリーリュアにとっては十分に高い。ふるふると頭を振った。

 剛燕が、ニヤニヤしながらアザロフの言葉で呼びかける。


「この城の姫さんたちはみんな、単身で出歩いたり木登りするおてんばなんですか?」

「そんなことない! アリーシャ姉さまは、とっても優しくっておしとやかよ!」


 自分の失態で、これから嫁ぐ姉に難癖をつけられてはいけない。必死に弁解したというのに、なぜか剛燕はつまらなそうな顔をした。


「それは残念。オレは姫さんみたいに、元気がいい跳ねっ返りのほうが好みなんだけど」

「なによ、それっ!」


 木の上と下で己の理解できぬ言葉を使って口論を始めた年少者たちに、苑輝がしびれを切らす。


『姫に、早く降りるように言ってくれ。なにか起きてからでは事だ』


 剛燕は間延びした返事をすると、口に手を添えリーリュアに向けて叫ぶ。


「姫さん! 苑輝さまが受け止めてくれますから、怖がらずに思い切って飛び降りてください。それとも、上までお迎えにうかがったほうがよろしいですか?」


 からかい混じりの声音が、手足の震えるリーリュアを奮い立たせる。


「怖くなんかないわ! 行くわよ?」


 両手を離し、靴を履いた片足で枝を蹴って宙に飛んだ。裾がふわりと風をはらみ、金色の髪が広がる。気分は鳥にでもなったつもりでいたが、リーリュアの軽い身体はすぐに広い胸に抱きとめられていた。

 嗅いだことのない神秘的な香りと滑らかな絹地に包まれ、騒がしかった胸の音が落ち着きを取り戻していく。

 苑輝はそっとリーリュアを地面に降ろし、拾った靴の埃を払って小さな足の前に置いた。


『どうぞ』

「ありがとう、ございます」


 たとえ言葉がわからなくても、不思議なことにこの程度なら通じるものだ。わずかな意思の疎通が、一時わだかまりを忘れさせる。互いに自然と顔がほころんでいた。


「あっ、あれ! あれはなにをしていたの?」


 気まずさと多大な好奇心から、リーリュアは燃えかすの残る銀皿を指す。それで意図は理解できたらしい。苑輝が剛燕に説明を促した。


「弔いですよ。死者があちらの世界で生活に困らないよう、燃やして届けるんです。銭だったり、食物くいもんだったり」

「死んだあともお金がいるの?」

「さあ? 逝ったことがないのでオレは知りませんねえ」

「アザロフのお金は燃えないから届けられないわ」

「葆だって本物を燃やすわけじゃありませんよ。みんな、文字にしてやるんです」


 剛燕が空中に指で文字を書く仕草をする。その肩を苑輝が叩いた。

  

『この国の民の好物を訊いてくれ』


 懐から紙を、腰からは携帯用の筆を取り出す。

 リーリュアは珍らかな筆記用具に興味を注ぐ。絵筆とも少し違うそれからは、さきほど苑輝の腕の中でかいだものに似た香りがした。


「苑輝さまが、アザロフの名物を教えてほしいそうです」

「名物……」


 リーリュアは人差し指を頬にあてて考える。地理学の教師はなんと言っていただろう。


「水! きれいでおいしい水が、この国の自慢よ」

「ただの……水?」

「豊かな水は、人も国も健やかに育てるって」


 人の暮らしや作物の栽培に、水は不可欠だ。周辺の険しい山々が育む真夏でも冷たい水が、国の至る所で湧いている。


『なるほどね。だそうですよ』


 答えを聞いた苑輝も一瞬訝しげな顔をしたが、すぐに得心したように筆を動かした。


「これで水って読むの?」


 リーリュアは、たった三本の線が並んでいるだけの紙を見せらて首を傾げる。


「葆の文字には、そのもののかたちを写したものが多いんです。だから、このも小川の流れを……って。見えないよなあ。いや、見えなくもないか?」


 まだ墨の乾ききっていない紙に、剛燕が火を点けた。初め、文字を避けるようにじわじわと広がっていった炎は、やがて紙全体を舐め尽くす。細く昇る煙は、不思議なことに清涼な水の匂いがした。

 街では聖堂の鐘の音が鳴り響く。

 リーリュアはたわわに実る麦穂のように髪をそよがせ、芽吹く山脈やまなみを映す瞳で煙が消えた空を眺めていた。


『清らかな水が、自然の恵みそのもののような姫を育てたのだろうな』


 穏やかな笑みを見せた苑輝が、その目を転じた。 


『良い国だ』


 この高台からは、城越しに城下が一望できる。徐々に王都の人々の日常は戻りつつあるが、東西から攻められたことで被害は国全体に及んでいた。アザロフが戦前の姿を取り戻すには、これからが正念場だ。


「なんて言ったの?」


 剛燕の短衣の袖口を引っ張って訊く。


「良い国だ、って。水がいいせいか、飯や酒も旨い。それから、姫君は美人揃いだ」

「うそ!」


 リーリュアは疑いの眼差しで苑輝を見上げた。


『おい、剛燕。また適当なことを伝えたのではないだろうな』


 苑輝が声を潜めて問い質す。


『心外ですね。一度もそんなことはしてませんよ』

『どうだか。先日も、孩子こども相手に勝手なまねをしたばかりではないか』

『だって苑輝さまは、謝りたくても謝るわけにいかないでしょう?』

『それが……』

『よけいなことでしたか?』

「ねえ、なにを話しているの?」


 ちらちらとこちらを気にしながら、ひそひそと会話されるのは不愉快だ。リーリュアの頬が膨らむ。

 それに焦った苑輝に責めるような目を向けられ、今度は剛燕がへそを曲げた。


『だいたい、苑輝さまがこの国の言葉を覚えないのがいけないんです』


 通訳を一手に引き受けている不平不満をぶつけられ、苑輝は気まずげに逸らした目で今一度眼下を見晴るかす。


『……そうだな。では、これはどう言えばよい?』


『長いですね』と苦笑する剛燕から耳打で教えを受けた苑輝は、長身を屈めてリーリュアと目線を合わせる。


「この国が、一日も早く元の姿に戻ることを心から願う」


 一語一語を確かめるように、噛みしめるように言い終えた。

 リーリュアが目を丸くしてみつめると、苑輝は口の両端を小さく持ち上げた。

 じわりとリーリュアの目が潤む。それはみるみるうちに嵩を増し、涙の粒になって白く滑らかな頬から零れ落ちた。


『おい! 剛燕。おまえ、またしても妙なことを……』

『まさか! ちゃんと通じているはずですよ』

『では、なぜ姫が泣く』

『そんなこと言われても知りませんってば。本人に訊いてください』


 男ふたりが幼い女の子を囲んであたふたとする。その間にもリーリュアの眦からは、大粒の涙が次から次へと落ち続ける。

 膝をついた苑輝の手のひらがリーリュアの赤くなった頬を挟んで、涙の膜が張る緑の瞳を覗き込んだ。


『もし私の言葉が気に障ったのなら申し訳ない。この通りだ』


 ジルには下げなかった頭が下を向く。苑輝は謝っているのだと理解した瞳が大きく揺れた。


『だが偽りではない。復興に向け、私に可能な限りの支援はするつもりだ』


 横目で、早く正確に訳せと剛燕をせっつく。


『殿下。もうちょっとやわらかく……と、はいはい』


 言葉の途中で苑輝に目を眇めて凄まれ、剛燕も腰を屈めた。


「苑輝さまは、うそは言ってないよ。姫さんも、街で働く葆の兵士たちを見ただろう?」


 リーリュアの視線は、真偽を確かめるように苑輝と剛燕の間で往復を繰り返す。それが苑輝に戻ったとき、彼は大きくうなずき剛燕の言葉を肯定した。


「……でも、壊したのも葆だわ」


 じわりとまた、リーリュアの目に涙がにじむ。

 首を横に振った剛燕は、大仰にため息をついて腕を組んだ。


「アザロフを狙っていたのは、西の国だけじゃない。協定を結んでいたはずの東側もこの国の乗っ取りを企んでいたんだ。だけど、先に葆軍への対応が必要になったから、西に出遅れた。もしどちらかの国がアザロフを併合していたら、姫さんたち王家の人間はひとり残らず――」


 リーリュアに見せつけるようにして、剛燕は手刀で自分の首に横線を引く。苑輝が非難の目を向けるが、かまわず話は続けられる。


「苑輝さまが送った条約をのんで、もう少し早くアザロフ王が東の関を開けていたら、王都への進軍は防げていたかもしれない」 


 広場での剛燕の言葉が、リーリュアの内でまた重く主張をはじめた。

 限界まで堪えていた涙が大きな粒となり頬を伝う。それは地面に落ちる前に、苑輝の親指によって拭われた。


「あのね。町に黒い煙がたくさん見えたとき、とっても怖かったの。兄さまが怪我をしたって聞いて、死んでしまったらどうしようと思ったわ」


 通じぬと知りつつ言い募るリーリュアの言葉にも、苑輝は黙って耳を傾ける。


「あんな思いをするのはもういや。戦なんか止めて、仲良く暮らせるようになればいいと思う。だって、みんなおんなじなんだもの」   


 リーリュアは小さな手を握りしめ、涙が消えた眼で苑輝を見据える。


「あなたは……苑輝さまは、次の皇帝になるのでしょう? そうしたら、そんな世の中にしてくれる?」

『……無駄な争いなどせず、民の穏やかな生活を守ることが上に立つ者の務め。私は常にそう肝に銘じている』


 幼さゆえの理想と高潔すぎる志を、剛燕が手にできた固いたこの存在を確かめながら、一字一句相違なく訳して両者に伝えた。



「姫さま! リーリュア姫さま!」


 ガサガサと草を踏み分けてキールが木立の中から現れる。

 リーリュアの傍らに、この国にとって本来は招かれざる客である人物がいることに気づき、いったん足を止めた。怪訝そうに軽く会釈をして駆け寄ってくる。


「どうしたんですっ!? こいつらに変なことをされたんですか?」


 赤い目をした顔に涙の跡をみつけたキールは両腕を真横に広げ、リーリュアを背中で隠すように割り込む。


「これはこれは。小さな騎士殿のお出ましだ」


 広場での一件を思い出し、キールは一瞬たじろいだ。しかしいまさら敵愾心を収める気にはならなかったらしい。


「なんだよ。あんただって、ちっちゃいじゃないか」


 もちろんキールよりは背が高いが、隣にいる苑輝と比べれば、剛燕も十分小柄だ。

 ともに劣等感を刺激され睨み合うふたりを、それぞれの主人が引き離す。


「違うの、キール。木から降りられなくなって助けてもらったのよ」

『こんな孩子に喧嘩を売るつもりか。みっともない』


 苑輝の言葉は通じていないはずなのに、雰囲気から子ども扱いされたことがわかったのか、キールが苑輝にまで牙を剥く。


「うちの姫がお世話になりましたっ! 行きましょう、リーリュアさま」

「待って! 待ってよ、キール」


 手を引いて帰ろうとするキールを振り解き、リーリュアは苑輝の前に戻る。


「あの! あたし、葆の言葉を勉強します。そして、あなたがどんな国を創るのか確かめに行きます! だから……」

「姫さまっ!」


 早口でまくし立てたリーリュアの腕を今度こそしっかり握ったキールに、そのまま城まで連れ戻されてしまった。



 その二日後。葆の皇太子琥苑輝は、少数の手勢を連れ自国へ引き揚げていった。

 城の物見台からその様子を眺めていたリーリュアは、馬上の姿が見えなくなると勢いよく裾をひるがえす。父母とともに城門まで見送りに出ていたアリーシャのもとへ駆け寄った。


「姉さま! 姉さまはいつお嫁に行くの?」

「十八歳になるまで待ってくださるそうよ。だから、来年の春まではリーリュアといられるわ」


 てっきり自分も皇太子に同行するものと考えていたアリーシャは、思わぬ猶予にほっとしたような笑顔を向ける。

 これからアリーシャは、国の代表として嫁ぐための準備に取りかからなければならない。嫁ぎ先での自分の言動がアザロフの未来を左右しかねないという不安と、花嫁になるという期待が入り交じる複雑な想いが、彼女の顔に表れていた。


「じゃあ、葆の言葉も習うのよね? あたしも一緒に教わりたい!」

「どうして、あなたまで」


 遠い東国の言葉など覚える必要があるのかと、王妃が不思議そうに尋ねる。


「えっと、それは……。そうよ! だってこれからは葆の商人がこの国にたくさん来るっていうし。それに大きくなったら姉さまを訪ねてみたいの。ねえ、いいでしょう?」

「そうね。いつかリーリュアが訪ねて来てくれると思えば、あちらでも寂しくないかも。いっしょにがんばりましょう」


 遠国に送り出さなければならなくなった娘の心細さを慮れば、両親はむげに反対することもできない。さっそく姉妹は未知の言語を習得すべく、城に残った葆の者から教えを請うことになった。


 ところが翌春を迎える前に、葆の皇帝琥宗達が急逝し、苑輝が新帝として立ったとの報せが届く。その中にはアリーシャの輿入れの件も白紙に戻すとあったのだ。

 王女の語学力にはまだまだ不安が残っていたものの、婚礼衣装の支度や随行者の選定などが着々と進んでいたアザロフの城は、一時困惑に包まれる。花嫁となるはずだったアリーシャなどは、自分になにか落ち度があったのではと思い悩み、寝込んでしまったほどだ。

 しかしその一方で、文化も風習もまったく異なる国へ嫁ぐ必要がなくなったことに安心もしたのだろう。体調が回復するにつれ、元の明るさを取り戻していった。


 琥苑輝が帝位についてからの葆は、西方への侵出をぴたりと止める。それどころか、戦によって手に入れた国々との間で新たな条約を交わし、事実上、支配下から解放した。

 東の脅威が去り、西側の諸国も落ち着きを取り戻す。

 ほかの国同様にアザロフも葆との同盟を結び直し、必要のなくなった葆の軍は国元へ呼び戻された。

 以前のような穏やかな日常が、アザロフ王国に戻ってきたのだ。

 むしろ、引き続き交易の拠点を置く葆の商人によりもたらされる益で、戦の前以上に活気のある国へと発展していく。

 平穏な日々が過ぎていく中で、兄たちが結婚し、二人の姉はそれぞれ隣国に嫁いでいった。年頃になったリーリュアにもちらほらと縁組の打診があったが、国王はこの安寧の世で末娘を性急に手放す気にはならなかったらしい。

 祖国のうつしい自然と空気に囲まれて、リーリュアは伸びやかに健やかに育てられた。

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