第13話 模擬試合、準決勝

 2回戦を終えて各々に休憩を取る。

 私も中庭に腰を下ろし、中庭から空を見上げる。

 周りを本部に囲まれた中庭にも、昼に近づくにつれて、太陽が徐々に昇り光が差し込もうとしている。

「そろそろ始めるぞー。準備してくれ」

 本部の建物からフェヴィルがそう言いながら中庭に戻ってくる。

 

 2回戦を終えて、上位4人が残っているため次の試合は準決勝になる。

 フェヴィルとガラン、私とディルシーが当たる。


「それでは、はじめっ!」

 準決勝に先立ち、フェヴィルとガランの試合が始まる。

 ガランは30代でがっちりとした体形で、威勢よく攻め込んでいたが、フェヴィルの完璧な守りの前に攻めあぐね、最後は一瞬の隙を突かれ、脇腹への寸止めをくらい負けてしまった。

 

 やはりフェヴィルは強い。

 ここにいる誰もがそう思えるような試合だった。

 

 いよいよ次は私の番だ。

「準決勝最後は、ディルシー対メイル!」

 審判のフェヴィルがそう告げると、団員から歓声が起きる。

 

 私の相手のディルシーは、1回戦、2回戦と見ていたが、冷静に相手の手を読み、派手さは無いが堅実に勝ち上がっている印象だった。

 ディルシーは20代半ばで細身であるが身長が高く、リーチが長い。

 戦う上で間合いを意識することも必要になるだろう。

 

 私とディルシーがお互いに開始線で模造剣を腰から抜く。

「それでは、はじめっ!」

 審判のフェヴィルから試合開始を告げられる。

 

 ディルシーのリーチが長いため、私は、試合開始と同時に一歩下がり、いつもより間合いを取る。

 ディルシーはその場で動かず、私の出方を探っている。

 

 小刻みに体を揺らしながらディルシーは私の動きを誘っている。

 試しにディルシーの左肩へ突きを繰り出してみる。

 

 ディルシーは冷静に私の模造剣を弾く。

 逆に、ディルシーが私の左足を狙い斬撃を繰り出してくる。

 今度は私がディルシーの模造剣を弾き返す。

 

 私とディルシーが交互に攻撃と防御を繰り返すやり取りが続く。

 団員達は緊迫した試合に固唾を飲んで見守っている。

 

 私もディルシーもカウンターアタックを狙っているため、お互いが攻撃の後の隙を待っている状態だ。しかし、このままでは埒が明かない。

 

 私は、思い切って戦法を変えてみることにした。

 

 離していた間合いを少しずつ詰め、間合いを詰めるごとに1手を繰り出す。

 手数が増えたことで、さっきまでとは打って変わり、私が攻撃で押す形になる。

 突然の攻勢にディルシーは驚き、さっきより防御が雑になる。

 

 間合いが無くなり、防御が雑になった所を、さらに突きと斬撃を何度も繰り出す。

 完全にディルシーのペースは乱れ、余裕が無くなっていた。

 

 連続攻撃の中で、私がディルシーの左脇腹へ斬撃を繰り出そうとすると、ディルシーは慌てて剣を振り上げた。

 その動きには無駄があり、防御には大きすぎた――。

 

 隙ありっ!――。

 すかさず左脇腹への斬撃をやめ、ディルシーの首元へ突きの寸止めを繰り出す。

 

「そこまで! 勝者メイル!」

 フェヴィルが叫ぶ。


「途中で攻め方を変えてくるなんて思いもしなかったよ。完敗だ。俺ももっと練習して君に勝てるように頑張るよ」

 そういうとディルシーが握手を求めてくる。

「ありがとうございます。武道大会は一緒に頑張りましょう」

 ディルシーの手を握り言葉を返す。

 

 さて、次はいよいよ決勝……フェヴィルとの対決だ。

 中庭に差し込み始めていた太陽の光は、完全に中庭を照らしていた――。

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