第8話 義勇団、イルガード1

 窓辺から眩しい朝日が差し込み、目覚めた。

 窓の外は青空が広がっている。

 時計は7時を少し過ぎたぐらいだろうか。

 

 服を着替え、下の料理屋のフロアへと向かう。

 フェヴィルが厨房で朝ご飯を作っていた。

 今日は昼の営業が無いため、クレアはゆっくりと休むと言っていた。

 

「メイル。おはよう」

 厨房で料理をしながらフェヴィルは言う。

「おはようございます」

「もうすぐ朝ご飯ができるんだ。座って待っててくれ」

 そういうと手に持った鍋からお皿へと料理を移し、私が座ったテーブルへと運んできてくれた。

 フェヴィルも席に着くと一緒に食べ始める。

 

「メイルは義勇団を見るのは初めてか?」

 席に着くやいなやフェヴィルが言った。

「はい。見るのは初めてですね」

「そうか。今日は剣の稽古だからメイルも参加するといい」

「私も参加していいんですか?」

「ああ。構わない。後で模擬剣を持ってくるからそれを使ってくれ」

「ありがとうございます」


 ご飯を食べた後は、片付けをして、フェヴィルが夜の営業の仕込みをするというので手伝った。

 仕込みが全て終わる頃には、出発時間の9時になっていた。

 

 フェヴィルはフロア奥の自室へ荷物を取りに行き、私は2階の部屋に荷物を取りに行く。 荷物を取って下りてくると、すでにフェヴィルが待っていた。

「よし。行こうか」

「はい」

「メイル。これを使ってくれ」

 そういうと手に持った模造剣を手渡してくれた。

「ありがとうございます」

 渡された模造剣を腰に差す。

 

 店の戸締りをして2人で店前の路地を大通りに向かって歩く。

 中央広場では朝市が開かれているので大通りに近づくごとに活気ある声が聞こえる。

 

 大通りを歩き、街の中心部から少し外れた場所まで来た。

「メイル。あれがイルガードの本部だ」

 フェヴィルが指さした先に大きな屋根の建物が見えた。


 本部の建物は大きな扉が付いていて、扉の横にはイルガード本部と掛かれた看板が掲げられている。

「んじゃ、入るぞ」

 建物の立派さに驚いていたらフェヴィルから声を掛けられた。

「は、はい」

 フェヴィルに続いてイルガード本部へと入る。

 

 中にはいるとすぐ、受付の女性が居て声を掛けられる。

「フェヴィルさん。おはようございます。こちらの男性は?」

 受付に居た、若い女性が私の顔を見てフェヴィルに尋ねる。

「ああ。メイルって言ってな、俺の店で住み込みで働いてくれてんだ」

「おはようございます。メイルと言います」

 フェヴィルの紹介の後に軽く自己紹介をする。

「そうなんですね。私はここの受付のアマリアといいます。よろしくお願いします」

 そういうと、アマリアはペコリと頭を下げた。

「こちらこそよろしくお願いします」

 私も頭を下げる。

 

「フェヴィルさん。今日は剣の稽古ですよね。もう皆さん待たれていますよ」

 アマリアがそう告げた。

「わかった。すぐに行くよ。メイル。行くぞ」

「はい」

 フェヴィルは受付場所から奥へと進んでいく。

「いってらっしゃい」

 アマリアが笑顔で見送ってくれる。

「いってきます!」

 私も笑顔で返事をした。

 

 本部の建物の先に進むと、通路の先に周りを建物に囲まれた広い中庭が見えてきた。

 フェヴィルと共にその中庭へ入っていくと、模擬剣を持った10数人がすでに集まっていた。

「「「おはようございます!」」」

 フェヴィルが中庭に入ってきたことに気付いた数人が大きな声で挨拶をしてきた。

 その声につられて、全員が挨拶をする。

「みんなおはよう。少し集まってくれ」

 そうフェヴィルが言うと、一斉に集まってくる。

 

「今日は、俺の店で住み込みで働いているメイルを連れてきた。みんな仲良くしてやってくれ」

「メイルといいます。よろしくお願いします」

 先ほどのアマリアの時と同じく、フェヴィルの紹介の後に、自己紹介をして頭を下げる。

「「「お願いします」」」

 今度は、団員がそろって頭を下げる。

 

 集まった団員を見渡すと、同い年くらいから年上まで様々な年代の男性が集まっていた。


「よし、それじゃあ稽古を始めるぞ。まずは素振りから」

 早速フェヴィルは団員に指示を出す。

「「「はい!」」」

 団員たちは一斉に広がり、各々の場所で素振りを始めた。

 

「メイル。お前も一緒にやってみろ」

「はい」

 腰に差した模造剣を抜き、私も素振りを始める。

 王宮でロータスから剣の稽古をつけてもらっていたので、剣の扱いには慣れている。

 フェヴィルは、団員達の素振りを見て色々と指導をしている。

 

 こうして、イルガードでの剣の稽古が始まった。

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