第9話 義勇団、イルガード2

「よし。みんな集まってくれ」

 団員達の剣の素振りを指導して回っていたフェヴィルが言った。

「「「はい!」」」

 団員達はすかさずフェヴィルの元へ走っていく。

 私も素振りをしていたので、それに倣ってフェヴィルの元へ駆け寄る。

 

「これから、来月に行われる、イルガード班別対抗武道大会のために、1対1の実践練習をするから、2人1組になってくれ」

 フェヴィルがそう告げると、団員達は近くの団員同士でペアを作った。

 最後に私が残ったが、ペアになっていない団員はいない。

「メイル。お前は俺とだ」

 フェヴィルが私の方を向きそう告げた。

「よし。じゃあまずは乱打ちからだ。準備が出来たペアから始めてくれ」

「「「はい!」」」

 団員達は一斉に広がり、各ペアごとに乱打ちを始めた。

 

「フェヴィル。さっき言ってた班別対抗武道大会って?」

 私はフェヴィルが先ほど言っていた武道大会について尋ねた。

「そういやメイルは知らなかったな。イルガードはハルシュ国のスプリンの街を守る最大の義勇団だってことは知ってるな?」

「はい」

 それについては、王宮に居る時にロータスから教えてもらっていた。

「スプリンの街って言っても、東西南北結構な広さがある。そこで、イルガードではスプリンの街の中にいくつか支部を作っていてな。支部の中では必ず2つ以上の班を構成するきまりになっているんだ。そして、1年に1回、全ての班が集まって剣技を競う武道大会を行うんだが、その武道大会が来月に開かれることになっているんだ」

 フェヴィルが分かりやすく説明してくれた。

「なるほど。それで、フェヴィルはどこの班に所属しているの?」

「俺はギース班に所属している。今ここで稽古している奴もみんなギース班だ。班の名前は現在の班長の名前から取ることになっている。今は班長がギースっていう奴だからギース班だ」

「なるほど。また詳しく聞かせてよ」

 イルガードは大きな組織であるとは知っていたが、まだまだ知らないことも多そうだ。

「ああ、いいぜ」

 フェヴィルは二カッと笑った。。


「よし。話はここら辺にして、乱打ちをするぞ」

 フェヴィルはそういうと、腰に差していた模擬剣を抜いて構えた。

「はい。やりましょう」

 私も手に持っていた模造剣を構える。

「まずは俺が受けるから、かかってきてくれ」

 フェヴィルが言った。

「では。いきます」

 乱打ちは、剣技を鍛えるために王宮の中でロータスとやっていた。

 その頃の感覚を思い出しながら剣を構える。

 

 フェヴィルと目が合ったのを合図に、構えた模造剣をフェヴィルに向かって振り下ろす。

 パシッ!

 フェヴィルが持っている模造剣を私の模造剣にぶつけてガードをする。

 弾き返された模造剣を今度は右側から振り下ろす。

 パカンッ!

 今度はフェヴィルも模造剣を振り上げ、私の模造剣を振り払った。

 

 ガシッ! パンッ! ビシッ!

 その後も何度も模造剣をフェヴィルに打ち込む。

 フェヴィルも、さすがハルシュ軍の剣の名手と言われていただけあって完璧に防いでくる。

「よし。そこまで。メイル、お前どこかで剣を習っていたのか?」

 フェヴィルは少し驚いた顔をして私を見ている。

「いえいえ。習ってないです。独学です」

 さすがに軍の大将ロータスに習っていましたとは言えないので独学だと嘘をついておく。

「そうか。ハルシュ軍で教える剣技に似ていたからな。思わず軍人時代を思い出したぜ」

 私はハルシュ軍の大将ロータスから直々に剣技を教わっていたので、ハルシュ軍流の剣技を習得していたのだろう。

 フェヴィルは私の剣技に感心しているようだった。


「この後、本番を想定した模擬試合をするから、それにも参加してみてくれ」

 フェヴィルは言った。

「はい。もちろん」

 ロータスと模擬試合をして負け続けていた時を思い出す。軍の大将相手に勝てるわけないとわかっていたが、自分自身の実力を試せる試合が楽しくて仕方なかった。

 

 模擬とは言え、久々に試合ができることに私の胸は躍っていた――。

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