第7話 発見と、驚きの毎日
フェヴィルが営む料理屋で仕事を始めて3か月、少しは仕事に慣れてきた。
朝の買い出しや開店準備、最近では料理も少しづつ教えてもらっている。
街での暮らしは、発見の毎日だ。
仕事終わりに、フェヴィルに連れられて行った居酒屋。フェヴィルが仕事の後の一杯は最高だと言っていたが、その通り、疲れた体に酒が染み渡り最高だった。
フェヴィルが居酒屋に行く日は、クレアは他の店で近所の女性何人かと食事をしているらしく、クレアもそれが楽しみだと言っていた。
他にも、クレアの朝の買い出しの手伝いの際に連れられた、広場の時計台の上。時計台は普段は登る事が出来ないが、時計台の管理人とクレアが古い知り合いらしく、特別に登らせてもらった。時計台の上には、四方が柱だけで支えられ、壁面がくりぬかれた360度眺められるスペースがあり、ここは、普段は時計の修理に使われるスペースなのだそうだ。
そこからの眺めは本当に絶景だった。レンガ造りの屋根が立ち並ぶ先には、少し前まで私が暮らしていた王宮。反対側を見ると、遠くに緑豊かなリッシュの風景が広がる。
少し前には王宮の部屋から街を見ていたが、まさか、街から王宮を見る日がくるとは思わなかった。住んでいた時にも感じていたが、改めて見ると王宮はやはり大きい。
小さな発見を重ねるごとに、自身の存在がこの街に馴染んでいくように感じる。
初めて感じる感覚。今は、そんな自分が少し嬉しかった。
その日の夜の営業も終わり、店の片付けをしている時だった。
「メイル。明日は昼の営業は休みにする。俺はちょっと出かけるんだが、メイルも付いてくるか?」
厨房で皿を洗いながらフェヴィルはそう言った。
「どこに行くんですか?」
突然のことで驚いたが聞き返す。
「この前、俺が義勇団に剣を教えに行っているって話したろ。明日は団員たちに剣を教えに行くんだ。興味あるか?」
「それは面白そうですね。ご一緒します」
「よし、決まりだ。それじゃ明日の朝9時に出るから。準備しといてくれ」
「わかりました」
その後、片付けが終わり部屋に戻る。
「義勇団か……」
私は以前、ロータスから街の義勇団について話を聞いたことを思い出していた。
スプリンやリッシュ。ハルシュ国を構成するこの2つの街は、ハルシュ軍が監視や管理を行っている。
ただ、軍が監視しているのは犯罪行為などの法に触れる行為だけで、街で起こる些細な問題は見て見ぬふりをしているのが実情だ。
そこで、街に住む民によって組織され、街の秩序を守るために作られているのが義勇団である。
義勇団はスプリン、リッシュの街ごとにいくつか組織されているらしい。
そして、このスプリン最大の義勇団はイルガードという義勇団だ。
フェヴィルもイルガードに入っていると言っていた。
明日行く義勇団もきっとイルガードだろう。
話しには聞いていた義勇団。どんなものか楽しみだ。
「明日は寝過ごさないようにしないとな」
私はそう呟き、眠りについた。
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