第3話 20歳、はじめての街歩き
王宮の裏門から表通りに繋がる細い路地を少し歩くと、王宮の正門前の道に出てきた。
イルドが即位してからは、近隣諸国と和平政策を取っていたこともあり、貿易が活発になり国全体に活気が取り戻されている。
この王宮の城下町スプリンもその恩恵を受け、朝から活気に溢れている。
王宮を出る時に貰った地図を頼りに、まずは街の中心地へと足を進める。
まずは、街にどんな店があるのか興味があったからだ。
時に地図とにらめっこしながら街歩きを続ける――。
スプリンの街は広い表通りに狭い路地が入り組んでおり、一歩路地に足を踏み入れればたちまち迷子になりそうな街だった。
迷子にならぬように大通りだけを通り、街の中心部へと到着した。
街の中心部は、噴水を取り囲むように広場が広がっており、朝市が開かれていた。
街の商店や近隣諸国からも物売りがやってきて、洋服や、野菜、肉などが売られており、まさにこの街の経済の中心であることがわかる。
朝市の見学は程々にして、お腹が空いたので料理屋を探すことにした。
朝市に店を出している店主に近くの料理屋を聞くと、ここから10分ほど歩いた料理屋のご飯が美味しいと教えてくれたので、その店に行くことに決めた。
表通りを少し歩き、教えられた目印の交差点を曲がり路地に入る。
路地に入ると、朝市の帰りだろうか、沢山の荷物を抱えた女性が歩いている。
右手には野菜の入ったバッグを提げ、左手は胸の前で大きな紙袋を抱えている。
何かのお店を営んでいる人なのだろうか――。
そんな事を思っていると、前から数人の子供が走ってくる。
追いかけっこでもしているのか、時折後ろを向き、捕まらないために懸命に走っている。
子供たちが女性の横を通り過ぎようとしたとき……後ろを向きながら走っている子供が女性の足に当たる。
子供は足を引っかけてそのまま転び、女性は突然の衝撃にお尻から地面に落ちた。
女性のバッグや紙袋からは野菜が零れ落ちた。
目の前で起こった事態に、私は、子供と女性の元に駆け寄った。
「ごめんなさい! おばちゃん大丈夫?」
ぶつかった子供は心配そうに尋ねる。
「あぁ、私は大丈夫だよ。そっちもケガはないかい?」
女性は逆に子供に尋ねる。
「うん。僕は大丈夫」
「それなら良かった。私は大丈夫だからもう行きな。次からは気を付けるんだよ」
「はい。本当にごめんなさい」
そういうと子供は申し訳なさそうに友達を共に走り去っていく。
「あの……大丈夫でしたか?」
一部始終を見ていた私は尋ねる、。
「あぁ、大丈夫さ。ありがとう――イタタッ!」
立とうとした女性が痛みに声を上げる。
「腰を打って立てないみたいですね……そのまま動かないで下さい」
私はそういうと、道に零れ落ちた野菜をバッグにしまう。
「ここから家は近いですか?」
「あぁ、この道の先だよ」
「わかりました。送っていきます。肩を貸すので立てますか?」
「ありがとう。助かるよ。」
そういうと女性は私の肩をしっかりと掴み立ち上がる。
一歩、また一歩と歩みを進め、女性がそこだよと指を差した。
女性が指差した建物は、なんと、朝市で美味しいと聞いた料理屋だった――。
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