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【ロックス】
エアロスミスの初期のアルバム。エアロスミスの最大のヒット作。二曲目のタイトルはラスト・チャイルド。音は贅肉がそぎ落とされたような荒々しいもので、今の私はとても気に入っている。だが、歌詞は正直言って何を書いているのかよくわからない。そして、聞き取りづらい。叫び声とノリで感じろ、ということかもしれない。
―――――
そして私は出会った。大黒霊音(おおぐろ れいん)と。これは偶然じゃないだろう。だって私から向かって行ったんだから。
例の四人を倒した後、私達は走ってその場から離れた。校舎の中に入って息を切らしながら二人で休んでいた。息が整ってから話しかけようとして気付いた。彼女が受けている扱いの原因の一つ。右の頬に火傷の後がある。結構大きい。私はどう話しかけていいものか戸惑っていると、彼女の方から話しかけてくれた。
「ねえ、さっきのって何?」
「さっきのって?」
「あの四人に向かって、最後に何か言ったでしょ? 何なのあれ?」
「ああ、あれ。あれは魔法の呪文だよ。オリジナルのね」
「何言ってるの?」
「他と被らないのを作ろうと思ってたら、捻りは少しにして馬鹿馬鹿しさと単純さを混ぜた方がいいって結論になったんだ。私の場合はね。ハリー・ポッターに近付きたかったからさ。だから "Pain and Scream" (苦しんで叫べ) から文字を拾って "Painasea" ペイナシー。ハリーの世界でのクルーシオみたいのだよ」
「へえ。で、それ、効くの?」
「さあ?」
しばしの沈黙の後、二人で笑っていた。その後彼女は自己紹介してくれた。そして私は固まる。何かが解ってしまった。今この時わかったこととは、彼女が『黒い雨の女王』だという事だ。
名前で判断するのは軽率すぎる?
相手に対して失礼だろう?
でもね、私にとって名前は特別なんだよ。今はこの感覚を信じたいんだ。
私も自己紹介する。
「私、八生渡良瀬風佐海(やよいわたらせ ふさみ)って言います」
大黒さんはキョトンとしている。そうだよね。もう慣れてる。だって苗字が五文字もある人なんて他に見たこと無いもん。今のところ。文字を並べると戒名みたいで縁起悪そうだし。
でも、お互いにキラキラネームっぽいし、その点はわかり合えたかもしれない。私達はその日から友達になった。
火傷の事は嫌でも目に付く。だから聞いてみた。彼女は火傷だと答えてくれた。なので、私はそれだけにした。だって、もう充分だもん。さて、救うとは、どういうことになるんだろう?
「ヒントを思い出してみろ」
廊下に貼ってあるポスターから声がした。ヒントってあれ? 『涼宮ハルヒの憂鬱』、そしてシリーズか。オーケー。やってみよう。
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