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【ラスト・チャイルド】

ジョン・ハートの小説。不遇な状況にある少年が消えてしまった妹を探しだそうと奮闘する。警察顔負けの行動力により、彼の身に起きている事態の一部を解明する。そして、友人への道標を残した。今のところ、私はグランジというものに分類されるバンドは『ニルヴァーナ』しか知らない。

―――――


 学校に向かって歩いていたら、鴉が傍に降りてきて言った。


「しっかり見てるからな」


 ああ、わかってるよ。


 そう。ベルフェゴールはあれからいつも私に語り掛けて来た。『しっかり見張っているからな』というメッセージを、犬や猫や鳥や看板や落書きから送って来た。私は逃げられないんだ。大人っていうんだから、20歳になるまでにやれってことなんだろう。今、私は15歳。だから猶予はあと五年くらい。どこまで出来るかな。いや、やり遂げて見せるさ。


 なお、私はあいつの名前をベルフェゴールから少し変えた。

 "Daemon Belphegor"でDBにした。


 そうそう、『涼宮ハルヒ』シリーズは全部読んだよ。アニメも観たんだ。順番は『憂鬱』を読んでから劇場アニメ『涼宮ハルヒの消失』を観て、原作を読みつつアニメを見ていったんだ。正直言って夏休み終盤の日々は観ていて辛かったね。全部観たんだよ。早送りしないで。


 『消失』は絵が綺麗だったね。展開もサスペンスとミステリーが合わさった感じで面白かったよ。先をアニメでも観たいけど、どうなるんだろうね。この先。それに、確かに『何か』を感じた気がした。きっと、本屋さんとかで感じる『何か』なのかもしれない。でも、まだまだわからない。


 つまり、ヒントはほとんど見つけられなかったんだよ。宇宙人や未来人や超能力者や異世界人は見つけられなかった。でも、悪魔は来た。どういうことなんだろう、これ?


 わかったことと言えば、涼宮ハルヒは自らの望みをかなえる力を持ち、世界がそれに答えていること。そして、自身は非常識に見えても極めて常識的な人間である。それによって世界は安定を保っている。こんなところかな。


 もしかして、私にも涼宮ハルヒと同じ力があったりするんだろうか? でも、私は悪魔が来ることなんて望んでなかった。そのはずなんだ。


 でも、あれからの日々は結構充実していたんだ。余命が僅かと宣告された主人公ってこんな感じなんだろうね。


『どうしてもっと早くこんな気持ちにならなかったのか』


 そう思うのも無理ない。私にはまだ助かる道は残ってそうだけど。


 さて、学校への道は真っ平らでもなく急な坂でもない、なだらかなでこぼこ道。愚痴をこぼす友人も居ない。サンタクロースとはしばらく会ってない。サンタ姿の悪魔とは何度も会ってるけどね。


 歩いていると視界の端に気になるものが映った気がした。何だろう? とあたりを見回したけど何も無かった。だが、人の流れの中に見覚えのある光景が目に入ってしまった。うなだれる一人の少女。それを取り囲む何人かの人々。逃げ道はあると示しながら逃げ道を塞ぐ。新しい日々の始まりから苦痛を与え続ける。私はそっちに向かって歩き出した。


 歩きながら考える。先手必勝。不意を突く。そして一気に逃げて、その後は知らん顔。人違いです、で押し通し、実力行使でのぶつかり合いの際は罠を仕掛ける。よし、行ける。


 取り囲んでいた奴らは四人。すみません、と声をかけ、一人が振り向きそうになったらそいつに向かって体当たり。謝りながら腕を踏みつける。周りが近づくと同時に、そいつの頭を踏みつけ、わざと滑る。相手が肩透かしを喰らったら起き上がって頭突き。地面に引き倒す。後の二人が戸惑っている間に少女の手を取り『逃げるよ』とささやき走り出した。二人は一瞬後に私達に向かって走り出す。私はその少し前に少女の手を放し反転していた。二人に向かってラリアットを繰り出し、喉を打って昏倒させた。


 倒れた四人を見ながら言う。


「ペイナシー。苦しめ」


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