自己紹介させてもらおうか

3-1

【吸血鬼ドラキュラ】

ブラム・ストーカーによる小説。トランシルヴァニアに居を構えるドラキュラ伯爵がイギリスに上陸し、侵略を企む様が描かれる。超人的な能力を持つが、自身が生存するための制約が大きい。それ故の頭脳戦でもあった。

―――――


 私は不安で震えていた。かつてずっと襲われていたもの。そこから脱したと思っていた。どうやら、ぶり返してしまったらしい。やはり何時でも起こり得ることなのかもしれない。麻薬中毒患者のフラッシュバックと似たものなのかも。


 私の仲間達、友達は心配してくれた。特にレイン。あの四人は彼女の中学からの知り合いで、中学でずっと酷い扱いをされてきたと話してくれた。そして、四人とも外傷が原因ではないということまで調べてくれた。それでも、私は震えている。


 もしも、私に『涼宮ハルヒ』と同じ力があったとする。

 私は『魔法』を使いたいとずっと願ってきた。

 あの時放った呪文。あれが力を持ってしまったとしたら?

 この手のオカルトめいた疑惑はずっと私に付きまとってきた。怪しいものにもいくつか手を出してしまった。だが、もしも……


 話しているうちにレインは怒って離れて行ってしまった。やっぱり、私には……


 放課後、うなだれながら靴を履き替えて帰ろうとしていた。すると、


「ねえ!」


 私を呼ぶ声がした。きっと私だろう。私しかいないし。振り返ると知っている顔があった。


「おおむらさきさん……?」


 私のクラスの副委員長をやっている大邑崎香代螺(おおむらさき かよら)さんだった。キラキラネームの同志と勝手に決めていた。だから覚えていたんだ。


「あなた、自分のせいだと思ってるんでしょ? あの四人の事」

「え……?」


「あなたの魔術があの四人を眠らせてしまったと思ってるんでしょ?」

「え……!?」


「結論から言うと、あなたの責任は50%を超えることは無いわ。だから、それほど気に病むことは無いわよ。責任を取るつもりなら、あなたがこの先を生きるしかない。そこからあの四人を目覚めさせる術を見つけるしかないから」

「ちょ、ちょっと待って」


 私は話を遮って彼女に詰め寄った。


「何なの!? 何でそんなこと知ってるの!? 一体どういうつもりなの!?」


 彼女はじっと私を睨みつけて、黙っている。


「……やっぱり。私の事なんか覚えてないのね」

「な、なんのこと?」

「私、あなたと中学で三年間同じクラスだったのよ。そして、この高校を選んだのは、あなたが進学する所だから。そして私は、今もずっとあなたを追いかけてる」

「追いかけてるって……?」

「……私ね。中学では散々な目にあってきたわ。でも、そこから脱することができた。それは、あなたを追いかけたからよ。あなたは、ある時から急激に変わった。周りの人は気付いてなかったけど、私にはわかった。その秘密を知りたくてここまで来た。そして身に着けたのよ。あなたと同じ力をね」

「同じ力って……」

「『涼宮ハルヒ』に関わる何か。強い力を持つものが、その力の扱い方を知らない。それって、何かに似てない?」


 私は考えを巡らす。やはり、そうなのか? 涼宮ハルヒの力。自らの望みを叶えることが出来る力。私にわからないことを彼女は知っていると? まるでSOS団のように?


「でもね。あなたの方が正しいってこともある。だから、しっかりと対決したい」

「た、対決?」

「例の四人のこと。私の知る限りを話すわ。だから、あなたの同好会に入れて頂戴。そして、私があなたの地位を奪って見せる」

「は、はあ?」

「他人の住居に入り込むには、しっかりと手順を踏んで契約を結ばなくてはならない。その制約こそが力の源であるとしたら?」


 そんなこと言われてもどうすればいいのやら……


 だが、不安定な心は彼女に引っ張られてしまう。結局彼女を『秘密の部屋』に案内してしまった。

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