第28話絶対絶命。
『ドカーン』
隣のエリアから大きな音がした。その音と同時にポッコリと穴が開いた。
見るからに今までのゴブリンの大きさとは違う。住宅2階ほどの高さぐらいあった。横幅も細身のゴブリンぽくなく、筋肉質で見るからに親玉ぽかった。
「ぎょぎょぎょぎょぎょ。(お前らやったのか?制裁だ)」
こっちに向かってくる。絶体絶命だ。僕はその瞬間大きな声を上げた。
「逃げろ!!!」
僕らは一斉に逃げ出した。
「マサル、なにやってくれてんのよ。貴方がフラグなんて立てたからこんなことになったじゃない」
ミキエルは羽根を動かしながら、僕に向かってグチグチと言ってくる。
「知らねーよ。お前ら3人も思いっきりフラグ立ててたじゃないか。お互い様だろ。それにこんなにでかいのは想定外だ」
「は~?私は立たたないぞ。たてて……、そう、余裕ぶっこいでただけだわ。それより何とかしなさい。わかった」
リリィも全速力で逃げている。それもそのはず親玉ゴブリンは身体はでかいためリーチが長い。もう近くまで来ていた。
くそ、ここまでか。ここは僕だけでも……。あ。
走っていたエミリーがこけてしまった。その瞬間、親玉ゴブリンがエミリーの真横に立ち止まった。
「想定外だ。エミリー大丈夫か」
僕たちは次のエリアの移動できるように入口付近まで行き、エミリーと親玉ゴブリンとかなり離れたところで見ている。
「ひどいですぅー。えーん。涙が出そうですぅー」
親玉ゴブリンと周辺に子分らしいゴブリンが10匹ほど足元にいる。
「ぎょぎょぎょ(覚悟はいいか。お前を始末してから次はあいつらだ)」
くそ、これまでか。僕は歯を食いしばった。
「ぎょぎょぎょ(これでお前の最後だ)」
「きゃーーーー。リフレクション」
エミリーは頭を腕で隠すポーズをした。その瞬間ボロン。と周辺が煙に包まれた。
そして親玉ゴブリンと比較にならないぐらい大きいドラゴンが現れた。
それは銀色輝く美しいドラゴン姿のエミリーだった。
親玉ゴブリンおよび、ゴブリン達はあぜんとし口をポツンと開けている。
「ぎょぎょ?(へ?なんで伝説のドラゴンがここに?)」
「ぎょぎょぎょぎょぎょ(すいませんでした。まさかドラゴン様だったとは。た、食べないでください)」
突然、親玉ゴブリン達は背中を向け、山の奥へと逃げ出した。
とっさのエミリーは無意識のうちに魔法を使っていた。以前ミキエルから教えてもらっていた回復系の技だ。
何とか助かったらしい。
僕らはドラゴン姿のエミリーに近づいた。
「助かってよかったよ。僕はエミリーを信じていたよ」
「そうね。私はあなたがやる時はやると思っていたわ。褒めてあげる。喜びなさい」
「あなたに天の祝福を与えましょ」
エミリーは人間の姿に戻ると、巫女衣装は破れていた。代わりに、最初出会った時に着ていたフードぽいコートを着ている。中は裸みたいだ。
その当の本人は、がっくりした表情を浮かべている。
「……、人間不信になりそうですぅー。先に逃げようとしてませんでしたかー」
「「「エミリーなら大丈夫って思って(気のせい気のせい)」」」
「心の声と建前が逆になってますぅー。もう全くぅー」
僕たちは4人は安堵な表情を浮かべ、ギルドがある街に戻った。その戻る途中に古びたお城みたいなところがあった。
「へー。こんなところに中世ぽいお城があるとはな。結構古びれているけど誰かいるのかな?」
「中世?何のことだ?まぁなんか変なことを言っているのはいつものことだろう」
僕の独り言を聞いたリリィが僕をディスって来た。
「こらまて、いつも変なことを言っているとはだれのことかな。詳しく聞かせてもらおうか。」
リリィは僕の言葉を華麗にスルーして、さっきの独り言の質問に答えた。
「ここは人気がないところだ。だれもいないんじゃないかしら」
まぁそうだよな。こんな山奥にだれもいるわけがない。いるのはさっきいたゴブリンぐらいだ。探索する機会があればやってみたいところだが。
「おーい。早くいくわよ。マサル。帰ったら冒険者ギルドに向かうんでしょ」
「今行く。ちょっと待ってくれ。」
僕は山奥に見える中世感がビシビシと伝わる、古びれたお城を後にした。なにかの気配を感じつつ。
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