第21話クエスト選択。

「げ、なんで初級クエストがこんなに少ないんだよ。」


僕の声は冒険者ギルド内に響き渡った。



「申し訳ございません。最近魔王の幹部が近くの山に来たそうで、比較的弱いとされるモンスターは逃げてしまったそうです。初心者でもこなせるクエストが今のところなくて中級、上級のクエストしかないのです。」



近くにいた受付嬢が僕たちの言って来た。



「魔王幹部許すまじ。ぐぬぬ。」


そこに一緒にいた天使が悔しがっている。

僕も同じ気持ちだ。せっかく、エミリーの初クエストだと言うのに中級、上級では僕らの荷が重くなるばかりだ。



「じゃーないだろ。今回は中級で探すか。エミリーの初クエストが初級でなくて荷が重いと思うが。」



「違うわよ。初級クエストだったら、またあの蟹や美味の食材が楽に手に入れられるでしょ。私は美味しいご飯を食べたいの。早く私に美味しいもの食べさせて。早くー。」



こいつ自分の事しか考えてない。



「本当は何もせずに美味しいものが出てくるんだったら最高なんだけど。マサル。私は宿舎で待機してるから何か取って来て。」



僕はこの堕天使を引っ叩いて、クエストを探している。堕天使のミキエルが仕返しとばかりに僕の弁慶の泣き所を蹴ってくる。地味に痛い。やめてくれ。



「ここはどうかな。採取クエスト。洞窟の中に生えてある金剛草を5本取ってくるものだが。」



リリィが見つけて来た。採取クエストか。討伐よりも採取の方が良いかもな。命の危険がなさそうだし。


よく見ると下の方に何か書いてあった。ん?注意事項あり……?



『洞窟内にゴブリンの巣があり。数は不明。強力なモンスターな為、注意。』


ゴブリンに見つかればアウトか……。結構危険なクエストじゃないか。



「私の我が強さを見せつけるチャンスよ。うーんこの眼帯が黒龍眼の叫びで疼くわ。この魔法銃の活躍が今にも目に見えてワクワクするわ。」


銃にチュっとキスしている。中二病を患った変態かな。



「行くんだったら準備をちゃんとしてから行こうぜ。この装備で行ったら速攻でお陀仏な気しかしないからな。」


僕はリリィに告げると、コクリと縦に首を振った。



「あの〜マサルさん。少しばかりお願いがあるのですがー。」



エミリーがスッと僕の前にやって来た。

少しばかり上目遣いで僕を見ている。なんだよ。ドキドキするじゃないかよ。全く。

昨日の事を思い出して僕は顔全体を真っ赤にした。



「?。なんですかー。私に惚れましたかー。」



「惚れてない。」



「それは少しばかり寂しいですー。」


ん?これは。ドキドキ案件?これは恋なのか?童貞には非常に厳しー。



「マサルさん。ジロジロと何見てるんですか。気持ち悪いですー。」



うっ、会心の一撃が僕の胸に。



「それはそうと、お願いがあるのですー。私の装備を整えて欲しいのですー。」



『ピクッ。』



確かに、見た感じエミリーはローブを掛けただけだ。そして剣が肩にかかってあるだけだった。


そうだな。これは整えた方が良いかな。まだ予算的には余裕あるし、揃えるか。


「よし、良いぜ。防具屋にでも行くか……。」



その瞬間に、ミキエルが両手を握りながらやって来た。



「話は聞いたわよ。私に任せなさい。このミキエル様にね。」



「お前が選べるのか?結構心配なんだが……。」



「私を誰だと思ってるの。天使よ天使。エミリーの適正のいしょ……、ゴホン、装備ぐらいは選べるわよ。」



「なんか衣装って言わなかったか?」



「言ってない。」



ミキエルはごまかしながら口笛を吹いている。ふーふー、と。

余計心配になって来た。この堕天使に任せて良いのだろうか。

頭を抱えている僕に、ミキエルが床に横になって。



「任せてよー。任せて!!お願いよーーー。私は天使よ。」



駄々をこね出した。周囲の目が痛い。ミキエルはバタバタと暴れている。堕天使の上に、大きな子供かな?



「わかった。わかったよ。もう。変なもの買ってくるなよ。ちゃんとエミリーの意見を聞きつつ、良いものを選ぶんだぞ。」



「わかった。それじゃエミリー行くわよ。善は急げよ。」



パッとギルドを出たミキエルを追うように、エミリーはミキエルの後について行く。



「待ってくださいー。ミキエルさんーーーー。」



大丈夫だろうか?エミリーの姿を見て余計に心配になっていく。不安だ。余計なものを買ってこない事を祈るしかないな。

それはそうと僕はリリィを呼んだ。



「リリィ。クエストの受注は任せた。僕はクエスト前に寄るところあるから。」



「?。いいけど早く戻ってくるのよ。」



僕はリリィにクエスト受注を任せて、あるお店に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る