第4話 天使?堕天使の間違いだろ。

「仲間ってのはどうです?こればっかりは異世界の住人に限りますが……。」

アンジュが両手を組み僕を見てくる。


んー。仲間か。確かにどんなに強スキルを持っていたとしても異世界。知らない世界だ。通用しないかもしれない。異世界の仲間がいれば状況や実情も知ってるだろうし、確かに何かしら便利かもしれないな。


「それじゃ仲間くれよ。1人じゃ不安だよ。」


それを聞くや否は、アンジュは持っていた杖を振り、バーチャルキーボードを出して何かを打ち込んでいる。


「うーん。今該当する人材はいませんね。」

少し考え込みながら、人材を探してくれている際にアンジュが閃いた様な顔をし、僕に言った。


「そうです。妹のミキエルを貸してあげます。それが良いわ。」

アンジュは手と手と合わせて、にこやかな顔で僕を見てきた。


「ミキエルってどんな感じの人なんだ?」

まずはどんな人材なのか。気になるところ。


「天使ですよ。私の妹なので、女神の血筋は引いてます。」


良いなそれ。天使ってだけでもレアなのに、女神の血筋を持った天使が仲間に加わるとかなかなか無いよな。もうそれ一択だろ。


「それじゃその子で頼むよ。女神の血筋なら期待できる。」


僕の期待は上昇中だ。しかし、この時僕はこんな良い話が都合よく転がっていること自体に疑問を抱くべきだった……。


アンジュが指をパチンと鳴らすと、天井から光が差し込んできた。


う……。眩しい。僕は手を目に当て直視出来ない。

目が痛い。目が開かない。けど微かには見える。


背中に天使特有の羽が見える。頭には輪っかがあり、肌白の綺麗な肌。アンジュと同じ金色のロングヘアーで見た感じスタイルも良く、見てくれもアンジュと同じ美人だ。胸は無いが服装はジャージ姿で、手にはポテトチップスを持って……、え、ジャージ??ポテチ??


光が消え鮮明に見えるようになり、現れた天使は僕のイメージとはかけ離れている事に気付いた。


「なんだよ。姉さん、いきなり呼び出して。今ネトゲで忙しいんだよ。」


アンジュは今までの優しい表情を変え、厳しい姉の表情になった。

「ミキエル。あなたはいつもいつもネットゲームばかりして。」


その言葉を聞いて妹天使も反論する。

「ネトゲは遊びじゃないよ。アンヴァル国王緊急救出クエストの途中で王国の危機だよ。早く行かないと3日費やしたのにクリア出来なくなるよ。戻してよー。」


アンジュはため息を吐き、腰に手を当ててミキエルの目を見て言う。

「あなたは今までダラけすぎなのです。この者と異世界に行って精神的に鍛えてきなさい!!」


「えーーーーー。やだよ。動きたくない。」


駄々をこねているミキエルを見て、アンジュは続ける。

「あなたは回復魔法のヒールぐらいなら使えるでしょ。少しは天界の役に立ちなさい。」


「いーーーーーやーーーーーだ。」


僕は夢でも見ているのだろうか。性格的にどう見ても女神様(アンジュ)とは似ても似つかない。

羽根と輪っかがあるから天使っぽいけど……。


「ところで、この人誰よ。姉ちゃん。」

僕に指をさしながら聞いている。


「彼は田中マサル。私が厳選してこの異世界に送り出そうとする勇者です。ミキエルと一緒に魔王を倒す者です。」


「だからーーー。行かないよ。」

床に寝そべって、駄々を捏ね始めているミキエルに嫌気をさしているアンジュ。


もう天使のイメージがないな。ジャージ着た天使って初めて見たし。この様子だともうすでに堕天しているんじゃないか……。


ごほんと咳き込み、気持ちを落ち着かせてアンジュはマサルに言った。

「それではマサルさん、異世界での魔王退治頑張ってください!!それじゃミキエルも頑張って!!」


詠唱が終わったのか、半端強制的に異世界の門が天井に開かれる。


「「え、ちょっと」」

僕とジャージ姿の天使ミキエルは天井の光に吸い込まれる。


「「ああああああああーーーーーー。」」


「それでは勇者田中マサル様。大変な旅になると思いますが、ミキエルをお願いいたします。魔王を倒したあかつきには、あなたが望む願いを1つ叶えます。ぜひ魔王を倒していただけるように神の変わって女神、アンジュがあなた様を祈ります。頑張ってください。」


そう女神様(アンジュ)の声が聞こえると、僕は目の前が真っ白になり、気を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る