第5話 遂に異世界へ。

ヒューと暖かい風が流れる。太陽の暖かい光が射し込んでくる。日本の気候で言うと春に近い感覚だ。

僕はいつの間にか街の公園らしきところのベンチで座っていた。隣にはさっきの天使ぽい、青色の髪をした女の子が横に座っている。


「本当に異世界に来てしまったのか?」


僕は黄昏ながらこの街を見渡した。見渡せばより一層、異世界だと感じる。

歩いている住人だが、頭の上に猫耳が普通についている。ここは猫耳の街なのか?

それに家の風景が日本とは違い、レンガで洋風ぽい家の形をしている。ここは自然豊かなところなのかな。

僕は女神様の言いつけ通り、ここで勇者として魔王を倒せるのだろうか。


「んっん。ここどこ?」

横に座っていたミキエルは目が覚めたらしい。


「ようやくお目覚めか。ここはどこなんだ?」


「え、もしかして……。マジで異世界じゃん。姉ちゃんマジ許すまじ。」

拳を握りしめながらミキエルは言った。

「あ、ここは始まりの街、リゼールよ。」


見渡すと洋風のブーツや革の装備など、RPGで出てくる初期装備をしている人が多数いた。

杖を持った魔法使いも何人か見かけた。


僕はいつの間にかテンションも右腕の拳も上に上げていた。

「本当に異世界に来たんだな!!よーしやるぞ!!」


「めんどくせー。帰ってネトゲやりたい……。」

パタパタ。天使が羽と輪っかを出した。


うーん。こうやってみると、天使ぽいな。

それでもなおこの雰囲気をぶち壊す、ただのジャージきた天使だな。


突然、周りが急にざわつき始めた。

「あれって天使?」「いや違うだろ?」「天使様だ!!」「わしのお迎えか」


「ヤバい。おい!!止めろ!!!隠れるぞ!!!!」


危機を察知した僕は、民家の陰に2人は急いで隠れた。

背後や人の気配が無いことを確認し、僕は一呼吸入れた。


「おい。この世界では羽根と輪っかはやばいんじゃないか?」


「ああ、そうだった。てへぺろ」

ミキエルは悪気がなかった感じでベロをペロリと見せた。


おい、こいつは……。異世界に来て早々に問題を起こしそうになった。

僕はミキエルに、今後同じような混乱が起きないようになるべく天使の格好はしないように言った。

受諾はしてくれたが、ブーっと顔を膨らませて不満顔だった。


「人の居ないところで天使になるよ。(棒)」


棒読みくさいが信じよう。早々に堕天使のニオイがする天使だ。全く。


「ところでよー。ここからはどこに行くと良いんだ?」

僕は早々にミキエルに聞いた。


「ここは異世界だよ。ネトゲのど定番だとギルドに行けば良いんじゃない。場所は知らないけど。」


おいおい。この天使は……、場所を知ってるんじゃないのか。


「知ってるわけないじゃん。天使だからってなんでも分かるわけないよ。まして、ネトゲしかやってなかったこの私に。」

ニコッとドヤ顔をみせて、親指をたてて言って来た。


こいつはダメだ。堕天使だ。僕の直感が言っている。今となっては女神(アンジュ)に押し付けられた感が半端ない。全く……。


僕たちはここの住人たちに聞き込みをし、ようやくギルドに着いた。

途中、ジャージ姿の2人に珍しい格好だねとなどとほぼほぼ言われてた。やっぱり雰囲気ぶち壊しだよな、この格好は……。


「ここが冒険者ギルドか。心踊ってくるぜ。」

木で出来た2階建てだ。日本のイメージで言うと、とある島にある別荘や雪山のペンションぽい感じの建物だ。


聞いたところによると、初心者冒険者が集う酒場兼クエスト受付場とのことだ。


ここで冒険者の登録が出来るらしい。


「魔王を倒すスタート地点にようやく立てるな。」


「そだねー。楽だったらなんでも良いよ。」

ジャージのポケットに手を入れて、ミキエルは僕と同じくギルドを見つめていた。


ギルドに入ると右側が酒場、中央側がクエスト受付場、左側に新規冒険者受付と看板に書いてあった。

いつの間にかこの世界の文字が読めるようになっていたらしい。

ミキエル曰く、読み書き能力は引き継いでいるから日本語と同じ風に書いたり読んだり喋ったりと出来るらしい。

一部失敗して出来ない奴もいるらしいが……。

僕は幸い会話や読めたり出来ているから大丈夫だ。

失敗してたら早々に詰んでたな……。


早々に左側に行くと受付嬢が何人かいる。受付嬢はぱっと見10代〜20代の方だ。

しかし、一番気になったのは1人だけ存在感があったエルフだ。エルフの特徴である耳が長く、背が高い。パッとみスタイルはモデル級だ。しかも美人でおっぱいも特盛。これは思春期の僕には刺激が強すぎる。だが妙に気になる。


「エルフの方の受付に行っても良いか?」


「は?なんで?空いている方行きましょうよ。早く終わらせて休みたい。」

早速、ミキエルは駄々をこね出した。


「ちょっと気になるんだよ。良いだろ。」

僕は照れながら言うとミキエルは察したらしい。


「それじゃ特別に許可するわ。行って来なさい。クスクス。」


ミキエルがニヤつきながら僕を見た。覚えてろよー。


僕はエルフ側の受付嬢に並ぶ。隣の受付嬢が隣どうぞと言われても無視したら、不思議そうな顔で僕を見た。


遂に順番が来た。エルフの受付嬢がどうぞと答える。


「あ、はじ、め……まして……」

噛んだーーーーーーーーー。横に居たミキエルは笑いを堪えるのに必死だ。エルフの受付嬢も苦笑いだ。


いや。まだだ。まだチャンスは……。その瞬間、エルフの受付嬢はギルド幹部に呼ばれ、ベテラン風のおばさん受付嬢と交代した。


チキショウーーーーーーーーーー。


ミキエルは横で笑いを我慢することなく、大笑いしていた。

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