第2話 宮殿。

どれぐらいの時が経ったのだろうか。僕は気がついた時にはどこかの宮殿の床に横たわっていた。周辺は光が漂い眩しい。ここは……。


「ようやくお目覚めですね。田中マサル様。」

そこには髪が金髪の優しそうな女性がいた。椅子に座り足を組んで僕に言ってきた。


「私の名前はアンジュ。この世界の女神をやっている者です。」


え、女神様?本物?てかもしかしてさっきのローブの人?


「そうです。私があなたをこの世界に呼びました。あなたの熱意と希望を感じ取り、連れてきた次第です。」


「ちょっと待て。僕はいつ異世界に行くって言った?」

正直なところ、何がなんだか混乱している。なぜラノベ本を買いに行っただけなのに異世界に連れてこられないと行けないのか。


「?。あなた先ほど以前居た世界で言いましたよね。行きたいって。」


『「行ってみたいに決まってるよ。そうじゃなきゃ興味は持たないし、今後の展開が気になるところだね。僕なら今以上にハラハラドキドキする展開が心待ちだね。」』


あ、言ってた。普通に口走ってたわ。予想以上に。


「待ってくれ。これは誤解だ。元いた場所に返してくれ。」

僕は女神様(アンジュ)に頼んでみる。しかし、アンジュは苦い顔をしている。


「それは出来ません。あなたの肉体は異世界にすでにあります。それにこれは私の目的の為でもありますので。」


「目的?なんだよ。それは、」


僕の言葉を華麗にスルーして、アンジュは話を続けた。


「とにかく、田中マサル様には魔王討伐をしていただきます。しかしこのままでは心許ないので、この異世界に現実世界のものを1つだけ持っていける権利をあなたに与えましょう。」


金髪の長い髪が揺れる中、僕に手を差し伸べながら言ってきた。そしてアンジュの話は続く。

「それは物なのか、才能なのか、性別なのか、力なのか、能力なのか、名誉、金か、全てにおいてこの世に得られるものを選択できます。」


アンジュが指をパチンとすると杖が出てきた。それを手に取り僕に向けてきた。


「さぁ冒険者田中マサル。あなたはこの異世界に何を持っていきますか?」


そう言った瞬間は、アンジュに光が集まり窓の外からは鳩が舞っていた。


何これ凄い。本当に僕は冒険者になったみたいだ。異世界ってかっこいい。

けど僕はその問いに対しての答えはもうすでに決まっていた。


「……。それじゃ1つ欲しいものがある。神源東洋伝の最新刊と最後までの本が欲しい。」

僕はそう口走っていた。後悔はない。それが僕の答えだった。

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