「 花の行方 」
―――――― 目覚めた瞬間、
( 何か夢を見た様な気がする…――― )
どんな内容の夢だったかは忘れてしまっていたが、恐怖で一杯になっていた心の中は落ち着きを取り戻していた。
( ここは、
自分が診療所の寝台に寝ていると気付いた
途中、体を起こそうとした際に 矢の傷の痛みに襲われて
「 あ…あれ…? でも、無い……!?」
彼女が胸の辺りを見ると、寝間着の中で真っ白な包帯がぐるぐる巻きになってはいたが
あの黒い矢が姿を消していたので、体に矢が無いのは
( あの
証明できる物は無く、何となくでしか無いのだが
あの黒い矢は
部屋に独りで居たくなくて、誰か探しに行こうと痛む体を我慢して寝台から
以前、目覚めた時と違って外から明るい光が差し込んでいるので
少なくとも、
胸の傷に激痛が走り、彼女が
「 傷が痛むのか!? 」
「 す…少し……。 」
痛みに耐えて下りた筈なのに、再び寝台の上に戻ってしまった事について
( い…いま、下りたのに…――― ! )
「 待ってて、父さんを呼んで来るから ――― ! 」
「 あ…待って――― !! 」
「 ―――
「 あ……ご…ごめんなさい! ――― あの…でも、
確かに、
彼の何がここまで
「 ……
寝台の上に横たわったような姿勢で
彼女を静かに見つめていた自分の息子の姿を目にし、
「 すまん! 出直す…… 」
「 違うから!! 何でも無いから!! ――― ほら、
―――――― 室内に
結局、女性である
食事に行っていた
―――
「 え… 王宮の近くに住むのですか? 」
家移りについて聞かされた
「 うむ、
――― と、
「 最初は、お主は
診察の度にあの階段を上らせるのは、治るもんも治らんと思ってのう。」
「
「 どうかのう?
まだ返事は貰っとらんが、
「 はい……! 一緒に行くのは構わないのですが…――― 」
自ら
今の自分の身体では あの階段を 何度も上り下りする自信も無く ―――
思い詰めた様な彼女の様子に気付き、
「 大丈夫じゃ! まだ
「
片手とは言え、力持ちの
「 そうそう!
「 え…? そうなのですか……? 」
矢を抜こうとした
また
( ? ――― 何かしら…? 胸に怪我してるからかな……? )
「 のう、
――― 痛かったとは思うが、熱さは無かったかの?
矢からあんなに黒煙が出ていて、
お主とお主の持っていた鏡は、大した傷にはなっていなかったんじゃ。それが どうしても 不可解でのう…… 」
―――
「 あの……先生、痛みと熱さの違いは よく判らないのですけど
私、あの矢は あの
――― 言いながら、
「 ええっ!? ――― でも、どうやってだい!? 」
「 あやつか…―――
いくら何でも、あの大勢の中で矢を放てば誰かが目撃しておるぞ!? 」
「 はい…。でも、私 あの
その時に あの方と目が合って、気が付いたら矢が胸に…――― 」
二人共、彼女が嘘を言っているとは考えてはいなかったが
仮に
どうやって 矢を放ったのと言うのか・・・・・・。
彼女に聞こえてしまわないように、小声で今後の
「 先生…もし、もしもだよ? 本当に矢が " 何とか様 " の仕業なら……
やっぱり
家移りの文書も直接 届いたんだろ!? なんか、怖いよ! 」
「
それに、お主達夫婦は共働きで 四六時中
万一の時、今のお主 ひとりでは適切な応急処置が行えるとも思えぬ。」
―――
そんな状況で、自分は落ち着いた処置ができるのだろうかと、
「 その点、儂は一日中 家の中にもおれるし ――― 医者じゃ。
まあ、
あの娘が居てくれたほうが、
――― それに、宮廷に居るほうが 何かあれば
「 うん…… あたしも 人目が多いほうが良いとは思うね! 」
――― 本当は、葬儀式や即位式やらが落ち着いたら身元不明者を保護した事を宮廷に報告する予定でいたのだが、
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