「 蓮の台 - 黒い矢 」(八)
「 … ――― どうした?
急に
――― 時を同じくして、大通りの片隅が騒々しくなっていた。
「
「 やだよ!!
「 まだ矢は抜くな!!誰かっ!!
「 で…で…でも!先生 これ 何か変な煙出てるよ!? 」
「 おい!!誰か 馬を ――― !!! 」
黒煙を
「
「
――――――
(
大…丈夫 ――― この矢は きっと、先生が…何とかして…くださ…る…――― )
薄れゆく意識の中で、
自分のほうを見ている事に気が付く。
( また…私を……見ている ――― !? 皆さん……逃げて……――― !! )
氷の様な冷たい瞳で笑みを浮かべる
「 大丈夫!脈はあるよ!! ――― やっぱ、この矢 怖いし 変だよ!?
そんなに深くは無さそうだから、ここで抜いちまおうよ 先生!!
診療所に戻ってたら間に合わないかも ――― !? 」
「 ――― うむ、やってみるか……!
誰か! 布や綿を たくさん持って来てくれ!!できるだけ清潔な物じゃ!!
それと、
近くに居合わせた人々も、自分達の天幕や出店の中に止血に使えそうな物が無いか探して駆け回った ――― 。
―――――― 次第に、空に黒い雲が立ち込め
女王の姿を目にして満足した民や、雨に濡れたく無い民達も帰り始め ―――
活気に溢れていた先程までの大通りの雰囲気からガラリと変わり、辺りは静けさに包まれていた。
「
「 えっ…
「 ――― よしっ!俺が抜こう!! 任せておけ! 」
彼の
「 ちょっと、あんた 何やってんだい!? 良いよ!! あたしが……―――! 」
「 駄目だ!!奥さんっ!
「 !!? ――― あんた、その手……!? 」
矢を掴んだ
歯を食い縛って、必死に痛みを耐えてる様な
「 皆、矢に
音の無い雨が人々を包み覆う様に降り注いで行く ――― 。
「 でも、このままじゃ
そう言った
長年の経験から、
「 ――― 父さん!! 何があったんだ!? 」
心臓を何かに突き刺されたかの様な衝撃を受け 一瞬、言葉を失った ――― 。
「 なんで 誰も何もしていないんだ!? ――― 父さん!?
蒼白の表情で叫ぶ
「 抜いて良いのなら、俺が ――― ! 」
直ぐに地面に膝をついて座り込んだ彼が矢に手を伸ばすと、
「
「 " 普通じゃない " って……!? 」
「 その剣…――― お前も剣士だろ? やめとけ、俺みたいになるぞ…… 」
「!?」
そのような恐ろしい矢が
矢から立ち込める黒煙が、
降り続ける細かい霧の様な雨が、辺りを白く煙らせて行く ―――。
「 ―――…
「 !? 」
彼の事は信頼しているので無言で次の行動を待つ事 僅か 一、ニ秒 ―――
天幕は、先程から降っていた雨を 多少 吸い込んでおり、湿って 通常より重くなっていたが
「 日葵!
熱さを感じなければ、
意図も簡単に抜け、
「 っ…!! 」
矢を巻いていた布が 一瞬で 煙を上げて焼き焦げ、白かった天幕の布地が黒に染まった ――― 。
「 まだ息はあるよ!!血も少ないみたい!! 診療所に帰るよ!! 」
布を取った為、
非常事態とは言え、こんな大勢いる場所で
その際、矢が刺さっていた所に何か固い、平らな物がある事に彼女は気づく ――― 。
「
「 俺は軽い火傷だから最後で良いよ! 二人を先に!! 」
――― 間一髪の所で矢から手を離した
自分の両手を見ながら、
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