「 睡る花のような少女 」(四)
目覚めた直後よりも、少女の頭の中は ハッキリとしてはいたが
時間が経過しても、少女が自分自身について思い出すことは無く、
――― 彼は現在、大量の書物や書類と格闘中である。
現在、人肌程度の熱さのお湯を部屋に持ちこみ、少女の身体を丁寧に
「 もう少し 回復したら風呂に
「 あの…いろいろ ありがとう。 」
「 いいって!これがあたしの仕事だし!
あんた 暴れたりしないから
会ったばかりの人間に肌を見せている事に少し抵抗があったが、体を拭かれている事自体には 少女はあまり抵抗が無かった。
――― むしろ、さっぱりして気持ちが良い。
「 ここに来る患者はさ、先生とあたしが診てるんだけど
たまに
でも、あんたの体を拭いたり 着替えさせたのは私だけだから安心しな! 」
「 うん、ありがとう。 」
「 あ…でも… 」
―――
「 … ” でも ”? 」
「 いいや!ほらっ、先生はさ!傷や
ちゃんと大事な所は隠してたからさ、気にすんじゃないよ!」
「 う…うん。お医者様だもの わかっています…… 」
リエン国で未婚の若い女性が男性に
例外は、
一般的な女性は、婚姻の義を交わした相手の前でしか衣を脱ぐ事は許されないという考えが根付いている。
そんな事はお構いなしの男女も存在することは存在するが
別の相手と肌を見せるような関係にあった事を伴侶に知られた者は 大概、修羅場になる。
「 この場合、どうなるんだろうねぇ…? 」
「 … 何がでしょうか? 」
「 まあ、もしもの時は あんたに恋人や旦那がいない事を願うよ! 」
「 ? 」
――― そんな相手はいるのだろうかと、少女は遠くを見つめるような瞳で考えた。
自分自身の事もそうだが、家族、親戚、友人、恋人、
ただ、時の流れの中に身を任せているかのような虚ろな状態に近かった。
医療の知識は まだまだ
少女の痣は人間によって付けられた物である事には気づいていた。
「 まあ、乱暴された
「 ? 」
「 はい!綺麗になったよ!鏡でも見るかい? 」
「 ありがとう…… 」
――― 渡された手鏡を覗いてみると、
鏡に映った顔は、間違い無く自分の顔である。
目覚めてから、
まるで、家族と再会できたかのように 少女は心の底から安心し、瞳からは涙が溢れ出そうになっていた。
ふと、鏡に映った自分の首筋に目が行く ――― 。
少女は自分の肌に滲んだように付いている その黒ずんだ痣に異常さを感じずにはいられなかったが
その様子に気づいた
「 大丈夫!何日かすれば消えるからね!! 」
「 ……う…うん。 」
一体、自分の身に何が起こったのかと問い
少女は鏡に映っている自分の顔を再び見つめなおした。
―――――― 子の上刻(二十三時)
少女が熱に
王宮で 前国王・
何名かの若者達を
まだ見習いみたいなものではあるが、
二日後の
今日も本当は、もっと早く帰れる
王宮に仕える事は非常に名誉な事であり、それも 光栄に思えてはいたが
リエン国のためになら命まで懸けようと
そして・・・・・
目の前で眠る この少女にも、何か手助けができたらと ぼんやり考える。
少女を助ける事に必死だった
そこまで深刻に受け止めてはおらず、
リエン国の古い考え方など、無効にする気でさえ居るのだが
記憶を無くしたと云う少女の事を見過ごす事はできないと考えていた。
(
良く見ると、少女の手元に鏡があったので 落として割れるといけないと思い
( なんで、鏡を持ったまま寝ているんだ ……? )
――― 考えながら、瞳が閉じかかる。
慣れない宮中と、連日の即位式の準備で さすがの
( 明日の朝は、帰りに何か綺麗な花でも摘んで来るか…… )
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