「 蓮の国の姫君 」( 三 )
息絶えた父王の姿を見た瞬間から、
言葉では言い表せないような 様々な感情が渦巻いていた。
父の代わりを務め、父をきちんと見送るという使命感から
泣く事もできず、
考えなければ成らない事が 山積みなのは
”もう二度と 母にも父にも会えない ”
彼女の頭の中にあるのは、その事だけだった。
できる事ならば、
この宮殿は高台にあり、真下には海もあるため、どこからか飛び降りれば
だが、そのような方法では父と母に会える
そんな事をする
自分にはリエン国の
部屋の外から音がした ―――― 。
泣きながらも、気にならずには居られなかった。
全ての リエン王家の人間の部屋に共通する造りなのだが、
その見張りが許可した者しか先に進むことはできない。
基本的に通過できるのは、部屋の持ち主と 持ち主の一親等と従者であり
あとは、全ての部屋に入室できる国王くらいだ。
一つ目の扉は
外から扉を開けられる鍵を持つのは、
親である王と王妃、身の回りの世話をする女官長の四名だけである。
―――― その部屋の中にある右側の扉が、今
以上の理由から、寝室の横の部屋まで誰か来られるとするなら
それは 父、母、 世話係である女官の
現実的に考えれば、
彼女が こんな夜更けに入って来るのは珍しい事だった。
国や宮中で何かあったのだろうか・・・?
自分に上手く対処できるだろうかと緊張も走る。
違和感を感じ始めた
「 ……
――― 返事は無い。
音は間違いなく隣の部屋からだったので、
寝台から立ち上がり、恐る恐る 自分が今いる寝室の扉を開いた。
昔、死者が幽体になって会いに来るという伝承を聞いた事があったので
もしかしたら、父か母ではないかと
――――― 扉を開けると、そこには 顔を隠すように黒い布を
月明かりだけで暗く、
二人組は花蓮姫を見るなり、ニヤリと妖しい笑みを浮かべた。
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