Episode of Eater 01
彼女が目を覚ましたとき、そこは見知らぬ部屋だった。
どこか分からない部屋のベッドに横になっている状態で、毛布がかかっていた。
すぐに飛び起きて周囲の様子をうかがう。
見たところ、誰かが生活しているようである。家具一式は揃っていて、コンセントは刺さったままだった。締め切られていない蛇口からは、ぽたぽたと水が垂れている。
デジタル時計は、『11月6日13時42分』を表示していた。
半開したカーテンからは、確かに秋晴れの青空が見えている。
ついでに、干されている洗濯物から部屋の主が男性だということが分かった。ボクサーパンツが、数枚ぶら下がっている。
もしかして、これって自分の部屋?
彼女が一瞬、そう思ったのも無理はなかった。
というのも、今の彼女にはほとんどの記憶がなかったからだ。
ほとんどというのは、全てではない。無意識ではあるが、家具を家具だとは認識できたし、漢字交じりの時刻表示を読み取ることはできた。
しかし、今に至るまで自分が何をしていたかということに関しては一切思い出せない状況下にあった。
そして、そのことに気が付くまで、さほど時間はかからなかった。
どうして自分がここにいるのか。思い出そうとしてみるが叶わず、それどころか何も覚えていない。
彼女は近くに全身鏡を見つける。そこに写った自分の姿を見て、初めて自身が女性であることを知ったのだ。
石膏のように白く整った顔。切れ長の目元が涼しげな、美女と言っても差し支えない女性がそこにはいた。
しかし、見覚えはない。まるで鏡の向こう側に別の世界があるかのような、そんな感覚を覚えた。
彼女は、急に息が苦しくなるのを感じた。動悸が早くなり、段々と意識が遠のいていった。
そのまま、ベッドから少し離れたところに倒れこんでしまった。ガチガチと、金属音が聞こえたのを最後にまた彼女は眠りについてしまった。
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