第14話

過酷な学園生活も漸く一年が過ぎ、厳かな雰囲気の中、三回生の卒業式が執り行われた。

卒業式では、入学時に比べ、一回りも二回りも大きくなった学園生が、自信に満ちた顔付で、学園を後にした。

結局、鮫島寮長は、プロ志望届こそ出さなかったものの、甲子園での活躍が認められ、強豪大学野球部に引き抜かれた。

豪田は、最後の別れの挨拶を交わすため、野球部部室に鮫島を呼び出すと、手土産とともに感謝の意を伝えた。

「豪田、今日でワシも引退や」

「これ、実は先輩の為に作ったのですが、良かったらどうぞ」

そこには夜なべをして豪田が編んだマフラーがあった。

マフラーは年が明けた一月から作り始めたが、完成したのは三月。

春先にマフラーなど季節錯誤であるが、そんなおっちょこちょいなミスをする豪田も、鮫島にしてみれば可愛らしく感じた。

「ありがとう、大切にするよ」

鮫島は豪田の毬栗頭を優しく撫でた。

豪田と鮫島は、三年間の思い出の詰まった部室で、昔日を思い返すように語り合った。

目前には甲子園大会の準優勝旗が掲げられている。

来年は必ず、岐阜に優勝旗を持って帰ってくれ。そしてその中心に豪田がいてくれと、鮫島は強く願った。

鮫島は、ふと語調を変えると、まるで昔語りをするように、次のように問いかけた。

「豪田、お前がまだ入学したばかりの頃、風呂で勃起させた逸物を俺に見せつけたことがあったな」

入学して一月が経ったばかりの五月晴れの日、豪田は風呂場で鮫島の隣に座ると、徐に勃起した逸物を見せつけたのだった。

豪田が鮫島に対し恋心を抱いていたのは言うまでもないが、出逢って一月の関係で、突如、勃起した逸物を見せるなど、かなり大胆な行動であると思われた。

「も、申し訳ありません――」

豪田は、自ら起こした恥行を思い出し、赤面した。

「あのとき、ワシはお前を憎んだ。禁欲している最中にあんなものを見せつけられ、穏やかでいられるわけがないであろう」

「本当に申し訳ございません、何と弁解してよいものか…」

豪田は、暴挙ともとられ兼ねない過去の過ちに対し、謝罪の言葉を並べた。

すると鮫島は、俯く豪田の顔を覗き込むと、真剣な顔付で次のように言った。

「本当に悪いと思っているのか」

「当然です」

「ならば、ワシの命令を聞いてくれるな」

「命令、ですか?」

豪田は素っ頓狂な声を上げると、鮫島の言葉を待った。

「貴様、尻の穴に男の逸物を入れられた経験はあるか?」

「ま、まさか、ございません!」

何を言いただすかと思いきや、尻穴に逸物を挿入するなど、思春期の生徒にはあるまじき行為である。

純粋無垢な豪田は、顔を漆に染めながら、必死に否定してみせた。

「ならば、ワシが貴様の初めての存在となる」

「しかし、付き合っていない男同士が、そのような下衆な交合をするなど…」

抵抗する豪田に対し、鮫島は豪田の身体を無理に抱き寄せると、こう叱責した。

「貴様、あの夜、ワシに屈強な逸物を見せつけておいて、いざとなったら弱腰か、あまりにも勝手ではないのか。それでも貴様、男か!」

「そんな、違います」

「口応えする口はこうだ!」

鮫島は、強引に豪田の唇を奪うと、反論する口を封じてみせたのだ。

豪田は抵抗してみせたが、あまりの腕力に、すぐに押し倒されてしまった。

そして互いの股間には、熱い棒状のものが、いきり立っているのが感じられた。

鮫島は豪田の前袋を鷲掴みにすると、

「そして貴様は貴様で、ワシの尻穴に、この屈強な逸物を入れてくれ」

と囁いた。

豪田は、意思とは裏腹に、自らの幹もまた太くなるのを自覚していた。

「いいんですか? 私が初めての相手で」

「ああ、ワシへの卒業祝いだと思ってくれ」

鮫島は、豪田を後ろから羽交い絞めにするように強く抱くと、ズボンをずり下げ、隆々とした逸物を豪田の尻穴に擦り付けた。

豪田の身体は緊張から硬直し、肝心な肛門も、固く閉ざされてしまった。

鮫島はそんな豪田の尻穴を優しく指で解すと、目前に置いてあったグラブオイルを塗りたぐり、思い切りに腰を振った。

「豪田、今宵、子種を植え付けるぞ」

「こ、子種など。初めてなのに、妊娠したらどうするんです? 責任はとれるんですか」

「責任? 大丈夫、どうせワシらは男同士、子供などできんよ」

小刻みに揺れる若い男の腰が、肌を叩く乾いた音を奏でると、二人の表情はみるみる逆上せ上がった。

春の訪れを感じさせるが、未だ名残雪の垣間見える三月の飛騨山脈には、一晩中、遠吠えのような雄叫びが響いた。

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